Pierre ALECHINSKY/ Mots - Choisir la couleur qui a le mot juste(その場にふさわしい言葉を持つ色を選ぶ)/ 2007, © ADAGP. Paris, 2016
Bunkamuraで12月8日まで開催中なのは、ベルギー人アーティストPierre Alechinsky(ピエール・アレシャンスキ)の回顧展。
アレシャンスキ氏は90歳と高齢ですが、今も力強く個性的な作品を作り続けている現役アーティストです。しかも、Bunkamuraの大規模な回顧展と並行して、オランダの「CoBrA美術館」(10/12~2017/01/08)と、フランスの「マティス美術館」(11/05~2017/03/12)でも、特別展を開催するタフさを持っています。
年齢を感じさせない冴えた言葉Pierre ALECHINSKY氏近影
同氏に直接インタビューする機会を得ましたが、見た目はもちろんのこと、声も、話す内容もしっかりしていて、しかもユーモアも忘れないあたり、とても90代とは思えない冴えの良さでした。
Pierre ALECHINSKY/ Le théâtre aux armées/ 1967
左利きであった氏は、幼少の頃右手で字を書くことを強制され、いやいや両利きになった経緯があります。そのせいで、レオナルド・ダ・ヴィンチのように、両手で自由に鏡合わせになったような字を書くことができるそうで、実際、鏡のような文字が書き込まれた作品も目にしました。ただ、そういう理由から、右利きだけに都合よくできている社会に反発を覚えていることが、言葉の端々からうかがえました。
「標識を見るのと同じように、人々は、絵も左から右へと流して見るんだよ。でも、そんなのおかしいじゃないか。社会は右利きの人間のためだけにあるんじゃないんだから」
(アレシャンスキ氏談)
はっきりとは口には出しませんでしたが、だからこそ氏の作品は、どんな方向からも鑑賞できるように描いているのだという気概が込もっているように思いました。
書道にうけた影響ところで、アレシャンスキ氏のスタイル確立に大きな影響を与えたのは、書道だったそうです。
「中国人アーティストWalasse Ting(フランス語読みワラス・ティン)とパリで出会ってね。書道を知ったんだ。(中略)床に直接紙を置いて、そこに自分自身を注ぐように描くんだ。イーゼルを使って描くのとは全く違うね」
(アレシャンスキ氏談)
そのワラス・ティンに薦められ、1955年訪日したアレシャンスキ氏は、日本の書道家と親しく交わりました。滞日中に制作したショートフィルム『Calligraphie Japonaise(日本の書)』の中では、前衛書道家による即興的な作風を、ジャズ音楽と比べています。この辺の精神は今も変わらないようで、インタビュー中、耳にした「筆がどちらに向かうかなんて、僕にだって分からないさ」いう言葉に、そのままつながっているように思えました。
ベルギーの味といえば......すくなからず日本の影響を受けたベルギーアートをBunkamuraで鑑賞したら、次は舌でベルギーを味わいたいもの。
ベルギーと言えば何といってもビールが有名です。ビールは日本では夏のイメージが強いようですが、ヨーロッパでは必ずしもそうではありません。とくにベルギービールは種類が豊富で味も香りも様々。
「ベルジアンブラッスリーコート」では、展覧会の半券提示で、ベルギードラフトビールが1杯無料となるそうです。これからの季節にぴったりなビール煮込み郷土料理も供されます。ほかにも「ル・パン・コティディアン」では、半券でベルギーワッフルが割引になるサービスを実施中だそうです。
展覧会鑑賞後、いずれかに立ち寄れば、心もからだも大満足な芸術と食欲の秋の一日を過ごせそうです。
[Bunkamura, CoBrA Museum,Musée Matisse ,ベルジアンブラッスリーコート,ル・パン・コティディアン]