生理はいらなくなった“子宮内膜”が排出されている!
image via shutterstock排卵したあと、卵巣の中では卵(原始卵胞)が次の排卵に向けた準備が続いています。排卵までのプロセスは、前回の「毎月起こる“排卵”って? 女性ホルモンのバランスが気になる人は知っておくべき!」を参照ください。
次の卵子が卵巣から、飛び出す(排卵する)準備をしているころ、子宮では、卵管で合体した精子と卵子が受精卵となってやってくるのを心待ちにしています。
その準備として、子宮内膜を少しずつ厚くして、受精卵を着床させ、育てるためにフカフカのベッドをつくっています。妊娠すれば、子宮内膜は受精卵のベッドとして使われるため、外に排出されることもありません。だから、妊娠すると生理(月経)が止まるのです。
子宮内膜は毎月リセットされ新しいものが作られています
けれども、妊娠しないと、せっかく用意したベッドも必要なくなってしまいます。いらなくなった子宮内膜は、キレイにお掃除されて、体外に排出されます。これが生理です。
生理でキレイにリセットされた子宮は、翌月また同じように、受精卵のベッドをつくり始めます。女性の体は、このような仕事を毎月くり返しているのです。ちなみに、子宮内膜症は、本来あるべき子宮以外のところに子宮内膜を作ってしまう病気。たとえば、卵巣や腸のダグラス窩というところに子宮内膜が飛び火して作られます。
これら子宮以外にある卵巣や腸周辺に飛び火した子宮内膜も、妊娠しないと、生理の時期に排出しようとして剥がれます。そのため、生理時につらい痛みが起こるのです。これが若い出産世代に多い子宮内膜症という病気。不妊症の原因にもなります。
妊娠すると女性ホルモンが約1000倍に!
では、妊娠すると私たち女性の体の機能や体調には、どのような変化が起こるのでしょうか?
まず、生理(月経)が止まります。そして、基礎体温が高いまま持続します。基礎体温は、妊娠していないときは、低温期と高温期が交互に訪れます。
生理期(生理開始1日目~7日目が目安)から卵胞期(生理開始8日目~14日目が目安)は、低温期にあたります。そして、排卵を境に、黄体期(生理開始15日目~21日目が目安)からPMS期(生理開始22日目~28日目が目安)は、高温期にあたります。排卵後、受精卵ができて着床すると妊娠ということになりますから、排卵後の高温期がずっと続くわけです。
基礎体温を測っていれば、低温期から高温期に入って、そのままずっと高温期が続いているようなら、妊娠したことがわかります。妊娠すると、基礎体温が高いままを維持するほかにも、つわり症状が現れたり、乳房が張る、食べ物の好みが変わる、だるい、眠いなどの体調も変化します。これらの変化は、妊娠したことで、子宮で大切に胎児を育てるために、女性ホルモンが普段の約1000倍、分泌されることから起こることなのです。
基礎体温は自分の体を知るビッグデータになる
このように、基礎体温を測っていると、自分の体のリズム(肌や心のリズム)をチェックできます。排卵日も、生理日も予測できます。
基礎体温とは、体が安静な状態で必要最低限のエネルギーしか使っていないときの体温こと。基礎体温を測るには、「婦人用体温計」で朝、目を覚まして動かずに測るのがベストです。毎日同じ時間に測るのが難しければ、測った時間をメモしておけば、時間が遅いから高いとか、早いから低いとか、あとで見当がつきます。忘れたら、忘れたという印をつけておけばいいのです。その日の体調もメモしておくと、生理周期(女性ホルモンのリズム)と体調の波を見て判断できるので、あとで役立ちます。
基礎体温は大きな流れで見るので、まず続けることが大事です。低温期と高温期があれば、排卵していることになり、卵巣機能が正常に働いていることや排卵日もわかります。
妊娠出産世代の女性はもちろん、更年期に入った女性にとっても、情報量の多い、優れた資料になりますので、健康意識の高い方は、ぜひ基礎体温をつけることをおすすめします。
増田美加・女性医療ジャーナリスト
2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/