このコラムはスティーヴ・アーモンドとシェリル・ストレイドの人気ポッドキャスト『Dear Sugars』に寄せられた相談と回答を構成したものです。
【相談】Sugarsさま 3年つきあっているパートナーがいます。僕は32才で彼女は37才です。いい時も悪い時もありましたが、時間とともに絆が強くなったと思います。お互いに優しくして支え合っています。
問題はセックスです。僕は性欲が強いのですが、彼女はそれほどでもありません。僕が誘っても、大抵彼女はしごく受け身です。セックスはだいたい月一で、すごくという訳ではないけどいいです。その気になるのはどんな時か、その気が萎えるのはどんな時かを話したり、性的な妄想を打ち明けたり、新しいことを試してみたりもしています。彼女は僕は自分を喜ばせるのが上手いと言うし、僕に魅力を感じるとも言います。なのにどうしてセックスがこんなに少ないのか理解に苦しみます。
このことは、何度も話し合いました。でも、口火をきるのはいつも僕です。なぜ僕にひかれているのに、僕を欲しいと思わないのかを知りたいんだと訊くと、彼女はセックスは僕たちの関係の“大きな部分”ではないと答えます。でも僕は彼女とセックスをしたいのです。 僕らは一緒に住んで、家庭を持つことを話し合っています。僕はそうしたい反面、子供ができたらセックスがもっと減るだろうことを思うと、気乗りがしません。二人で健康的で安定したセックスライフを築くことが可能だと信じたいけれど、そのために何をしたらいいか、さっぱりわかりません。 ――ラジオネーム「フラストレーションの塊」より
彼女は事の深刻さを知っているのか?
【回答】シェリル・ストレイド:あなたのパートナーの「セックスは自分たちの関係の“大きな部分”ではない」という言葉が引っかかりました。あなたがそう思っていないことは明らかですが、その深刻さを、彼女はわかっているのかしら? あなたがこのことについて真剣に悩んでいることを、彼女に理解してもらう必要があります。「もっとセックスしてくれないなら別れるしかない」と最後通牒を突きつけるということではありません。あなたにとってどれだけ大切なことなのか、自分の気持ちをありのままに話してみたらどうでしょう。
スティーヴ・アーモンド:現実的に考えましょう。今つきあっている段階で、大事なことを取り上げられているような気持ちなのであれば、一緒に暮らして子供ができたらどうなるのか。どこで線を引くかには、愛されていると感じられるかどうかが絡んできます。 あなたはそのために、自分の性的な欲求をパートナーに知ってほしいと思っている。彼女にはあなたほど欲求がない。この不均衡は誰のせいでもないけれど、紛れもないあなたの状況であり、あなたの幸せを脅かしている。そういうことを踏まえて、あなたは自分から話をしてみたけれど、目立った変化はない……。 僕としては、同居する前にカウンセラーと話すことを勧めますね。
魅力を感じていても必ずしも欲情しないのはよくあること
シェリル:話し合うことで、自分にとってどんなにセックスが大事かをパートナーにわかってもらうだけでなく、彼女のセクシュアリティを理解できるかもしれません。魅力を感じていることが常に性欲につながらないのは、私は矛盾だとは思いません。長期的関係ではよくあることです。でも性欲のエンジンがいったん止まってしまうと、それをまた始動させるのが難しくなるかもしれない。 ここまで来たら、何がその気にさせるかとか、そういう“ベッドルーム・トーク”を超えて、寝室の外で起きていることを話すべきです。あなたの彼女があなたと抱き合いたいという気持ちにさせるのは、どんなことでしょう? もっとそういう状態に持っていくには、二人でどんなことができるでしょう? それからセックス以外に、エロティックなつながりを深めて維持していく方法はありませんか?
スティーヴ:あなたがセックスに持っていこうとする時に、パートナーの反応はどんな風でしょうか。行為自体はしたくないとしても、何か他の形であなたの欲求を認めて満たしてくれますか? こう聞くのは、あなたは単にセックスに応じてくれるだけでなく、自分を求めてくれる恋人が欲しいのではないかと思うからです。妥協ももちろん必要だし、性欲の不均衡のバランスをとる方法を工夫するのもいいことです。でもそれは、あなたの欲求が本質的にどういうものなのか、過激なまでに正直にならないとできることではありません。
割り切って予約制にしたら?
映画『アニー・ホール』の有名な場面に、男がなぜ自分と彼女の性欲がこんなに違うのか考えるくだりがある。やっぱりセラピーを受けるべき?(Heidi Youngner/The New York Times)シェリル:スティーヴの言う通り。こういうことは不透明な領域だけど、よく考えてみる価値があります。とはいえ、すごく合理的なやり方もあるんですよ。もしかしたら単刀直入に「もっと僕らの関係に満足できるようになりたい。週一度セックスしたいんだけど、できる?」と聞いてみてもいいかもしれない。 セクシーとは言い難いけど、私はセックスの約束をするのが好きなの。やることのリストに載っているから、偶然やタイミングに頼らなくていい(だからと言って素敵なことが偶然起きないわけではないし)。セックスって執筆やエクササイズと同じで、いつもしたい訳ではない。でもやった後は、いつもしてよかったと思うの。「Just do it.」方式ね。結構うまくいくわよ。
スティーヴ:予約セックスか、いいね! いまシェリルが言ったやり方、絶対的に試してみる価値があると思う。でもそれがうまくいかなかったら、やっぱりカウンセラー、できるならセックスセラピストのところに行って、自分たちにとってエロティックな関係にどんな意味があるのかを探ってみることを勧めます。 長年のパートナーがいる人で、完全に性生活に満足している人を、僕は一人も知りません。でも片方が性的欠乏感を抱えたまま過ごさなければならないのも、そのパートナーがプレッシャーをかけられ責められるのもフェアじゃない。性欲やニーズ、エロティックなイマジネーションは人それぞれだけど、大切なのは、一緒にいる相手がこちらのセクシュアリティに向き合ってくれるかどうか。「フラストレーションの塊」さん、あなたと彼女が考える“健康的で安定したセックスライフ”の内容は、違っているかもしれません。でも少なくともそれを目指すべきという点では、協力するべきでしょう。彼女にそれができないなら、違うパートナーを探すことを考えてもいいかもしれません。
© 2017 Steve Almond and Cheryl Strayed[原文:The Love is There. The Sex is Not.(Well, Only Once a Month.)](翻訳:スマキ ミカ)