5つの「歪みパターン」をチェック
足首の真ん中にあり、立つ、歩くといった人間の基本的な動きの土台となるのが「距骨」。珍しく筋肉が付着していないフリーの骨なので、日常習慣や動きのクセでさまざまな歪みが起こります。2足歩行のヒトで距骨が歪んでいないことはまずない、と志水さん。
「どんな歪みがあるにしろ、前編でご紹介したセルフケアを毎日続けると距骨は整ってきます。でも、もう1歩進んで自分の距骨の歪みパターンを知ると、さらに的確にケアすることができますよ」(志水さん)
距骨の歪みでもっとも典型的なのは、距骨の位置が本来よりも前、または後ろ側にズレているパターン。まずはここからチェックしていきましょう。
まずは前後のズレをチェック! フロントタイプ or バックタイプ
志水さんの距骨調整術では、距骨が前側にズレているタイプを「フロントタイプ」、後ろ側にズレているタイプを「バックタイプ」として大きく2つに分類しています。
「2足歩行をしている限り、必ずどちらかの傾向があるはず。動画も参考に、ご自分のタイプを診断してみてください」(志水さん)
判定テスト
Q.かかとをつけたまましゃがめる?
■YES(自然にできる)→バックタイプ
■NO(しゃがむとかかとが浮く)→フロントタイプ
Q.座ってものを書くときの姿勢は?
■一見姿勢はいいが、頭が前に落ち、腰が反っている→バックタイプ
■みぞおち部分が縮んで、背中が丸まっている→フロントタイプ
【参考動画】
フロントタイプの特徴
距骨が前傾し、つま先側に傾いている状態。重心がつま先側にあり、脚やカラダの後ろ側の緊張が強くなる。胸とおなかの境目にある横隔膜の動きが悪いため、胸式呼吸のほうがラク。ヒールをよく履く女性に多い。かかとや足の裏の痛みが出やすい。
よくある症状
緊張性頭痛、座骨神経痛、膝のズレ、かかとの痛み、アキレス腱炎、足底筋膜炎
ケア方法
足裏マッサージがおすすめ。片足の爪先を同じ側の手でつかみ、反対側の手をグーにして指の第一関節を当て、引き下げるようにしながら足裏をマッサージ。10回繰り返したら反対側も行う。
バックタイプの特徴
距骨が後傾し、かかと側に傾いている状態。重心がかかと側にあり、脚やカラダの前面の緊張が強くなる。首から肋骨上部の動きが悪いため、腹式呼吸のほうがラク。足の付け根やそけい部が懲りやすく、正座をするときは足を重ねないとうまく座れない。五十肩を引き起こしやすい。
よくある症状
五十肩、胃腸障害、呼吸が浅い、膝のお皿周辺の痛み、そけい部や恥骨周囲の痛み
ケア方法
足首の緊張を解くストレッチがおすすめ。片足の膝を曲げ、かかとの上にお尻をのせる。反対側の脚はまっすぐ前に伸ばす。手でお尻をのせたかかとを押さえながら上半身を後ろに傾けていき、10秒キープ。反対側も同様に行う。
内外のズレをチェック! インタイプ or バックタイプ
フロントタイプとバックタイプに加え、自覚しにくいのがインとアウトタイプ。
「距骨が内側に倒れているのがインタイプ、逆に外側に倒れているのがアウトタイプです。こちらはすべての人に当てはまるわけではありません。いわゆる“おねえさん座り”をしてみて、どちらかがとくにやりにくい場合は、インまたはアウトの可能性があります」(志水さん)
判定テスト
Q.鏡の前に立ち、膝のお皿の向きをチェック。
■左右どちらかのお皿が外側を向いていたら→アウトタイプ
■左右どちらかのお皿が内側を向いていたら→インタイプ
Q.椅子から立つとき、どっちがラク?
■太ももの付け根を内側に捻った方がラク→アウトタイプ
■太ももの付け根を外側に捻った方がラク→インタイプ
【参考動画】
インタイプの特徴
距骨が内側に傾いているため、膝から下が外側に傾く。脚の内側の緊張が強く、O脚の傾向あり。ランナー膝や外反母趾、骨盤の歪みが出やすい。
よくある症状
内転筋の痛み、O脚、すねの内側の疲労骨折(シンスプリント)、外反母趾、骨盤の痛み、中心性の腰痛
ケア方法
内もものストレッチがおすすめ。床に座ってあぐらをかく。左右の足裏をくっつけて両手で足の甲をつかみ、背筋を伸ばして30秒キープ。こまめに行うのがおすすめ。
アウトタイプの特徴
距骨が外側に傾いているため、膝から下が内側に傾く。脚の外側の緊張が強く、X脚の傾向あり。ランナーは股関節炎などに注意。ヘルニアなど腰痛のリスクが高い。
よくある症状
股関節炎、ランナー膝、X脚、ヘルニア、内反小趾
ケア方法
“お姉さん座り”で内ももを刺激してみて。床に座り、膝から下を外側に開く。アウトタイプはあぐらが得意なので、その逆の“女の子座り”で脚の内側の筋肉を刺激してあげましょう。
若い女性に増えているローリングタイプ
5つの「歪みパターン」のなかで、もっとも厄介なのがローリングタイプ。常にぐらぐら揺れているという不安定な歪みタイプで、足の裏のアーチが潰れており、扁平足の傾向があります。
「最近は若い女性に、体重をかけるとアーチが潰れる“かくれ扁平足”が増えています。足裏のアーチがないと衝撃吸収力が下がるので、歩くだけでも疲労を感じやすいはずです」(志水さん)
判定テスト
Q.足の内側を床から浮かせて直立できる?
■立てない→ローリングタイプ
Q.片脚立ちになったとき、両手はどうしてる?
■両手をカラダから離してバランスをとらないと立てない→ローリングタイプ
【参考動画】
ローリングタイプの特徴
扁平足の傾向があり、足首に力が入りにくい。下腹部から下半身の緊張が強い。むくみや冷えで下半身太りになりやすい。婦人科系のリスクが高い傾向がある。
よくある症状
歩行痛・運動痛、足の疲労感、婦人科系疾患、下半身太り、むくみ・冷え、外反母趾、XO脚
ケア方法
タオルを使った足裏アーチ再生ストレッチを。椅子に座り、タオルの上に片足をのせる。かかとをタオルにつけたまま、小指と薬指を使ってタオルを外側から内側に向かって引き寄せる。完全にタオルを引き寄せたら、反対側も行う。
5つの「歪みパターン」は、フロント&イン、バック&ローリングなど、ひとつではなく複合パターンになることも。フロントとバックが生活習慣によるものとすると、インとアウトは脚をひねる、つまずくなど、あるきっかけで起こることが多いそう。ローリングタイプは足のアーチが失われることで生じると考えられます。
距骨が正常な位置に戻れば、脚のラインはまっすぐになり、負荷が均等にかかることで疲れにくいカラダになるとのこと。自分の「歪みパターン」を知って的確なセルフケアを続ければ、きっと距骨は応えてくれるはずです。
外反母趾にも「距骨調整」マッサージ
多くの女性の悩みの種である外反母趾も、「距骨調整」の得意分野。志水さんは現在、手術をせずに足の機能を改善する「距骨調整」を導入した治療法を提案しています。
意外と知られていないことですが、外反母趾は進行性の病気。足の変形で靴が履けなくなる、肩こりや頭痛が引き起こされるといった二次被害を防ぐためにも、距骨マッサージによるセルフケアが効果的です。
外反母趾を改善するマッサージ
1.まずは爪のマッサージ。手の親指と人差し指で爪を挟み、横に細かく揺らす。5本指すべての爪をもむ。
2.次は指のマッサージ。手の親指と人差し指、中指で足の指をつかみ、横に揺らしながら丁寧にもむ。
3.指のあいだにある水かきをマッサージ。指をしっかり引き離すようにして手の親指と人差し指で挟む。
4.最後に指の付け根を裏側からもむ。片手で指先を押さえ、反対側の親指と人差し指で指の親指から小指の順に付け根をマッサージしていく。
「無意識に指が曲がってしまうのが外反母趾の特徴です。関節ではなく指にアプローチすることで、改善が期待できます」(志水さん)
志水さんによると、距骨調整のセルフケアのベストタイムは入浴後。浴槽につかり、温かく柔らかくなった筋肉にマッサージを行うほうが効果が期待できるといいます。それ以降は立ったり歩いたりしない就寝前に行い、距骨の歪みをリセットした状態でベッドに入るのがおすすめです。
「ケアはこまめに行った方がよく、起床後、帰宅後、入浴後にできれば理想的。でも、1回1分でもOK。毎日続けることに意味があります。ぜひ距骨マッサージを取り入れて、カラダの不調を未然に防いでください」(志水さん)
志水 剛志さん
柔道整復師。整骨院で経験を積み、カサハラ式フットケアでおなじみの笠原接骨院副院長として従事。その後活法の技術を広めるためKPスクールを開校。2009年には自らの整骨院を開業。2010年にゴールデンスパ・ホテルニューオータニ内で整体の施術をスタートさせ、2012年に整体・鍼灸・美容の融合スパ、フォルトゥーナアネックスをオープンさせる。