自己免疫疾患とは、免疫システムが、自分自身の健康な細胞に対しても攻撃を加えてしまうことで起きる病気です。誰でもかかる可能性のある病気ですが、患者全体の80パーセント近くが女性なのです。

どうして女性のほうがこの病気にかかりやすいのかということは、まだ正確には分かっていません。でも、最近の研究によると、女性が持っている特定の遺伝子の発現の違いと関係する可能性があることが明らかに。原因はともかく、非常に悪いことに、自己免疫疾患の患者数は増える一方です。

「過去50年間、全米で自己免疫疾患の発生率は3倍になりました」と医師で『The Autoimmune Solution』の著者であるエイミー・マイヤーさん。自己免疫疾患には少なくとも80の病気があります。それぞれ症状は違いますが、疲れ、めまい、微熱、炎症(発赤、熱、痛み、腫れ)といった共通した症状が多く存在しています。

「治療は病気によって異なるものの、多くの場合は、抗炎症薬、免疫抑制薬、そして生物学的薬剤という薬の投与になる」と、クリーブランドクリニックのループス科の局長でリウマチ専門医であるハワード・スミスさん(生物学的薬剤とは、新しい薬で、生体が合成する物質のようにはたらく、あるいは免疫システムの一部をブロックするもの)。

自然な方法、例えば糖や飽和脂肪酸といった炎症を起こしやすい食べ物を減らす、ストレスを減らす、毒素の摂取を減らす、消化管を治す、なども効果的。マイヤー博士が記した通り、免疫システムのうち80パーセントは消化管にあるそう。

自己免疫疾患は、早いうちに気付いて治療するのが、病気の進行を防ぐために一番よいのですが、まずはどのような点に気を付けたらよいのか、知っておく必要があります。次から、よく見られる7つの病気の兆候とその症状をご紹介します。

リウマチ性関節炎

学術誌、『アースリティス・アンド・リューマティズム』誌に報告された研究によると、女性のうち4パーセント近くの人が、リウマチ性関節炎になるとのこと。この病気にかかると、手、指、ひじ、ひざ、腰を含む、体じゅうの関節に炎症が起こります。

リウマチ性関節炎は、関節の摩耗によって起こる変形性関節症とはいろいろな点で異なります。リウマチ性関節炎にかかると、疲労感、発熱、体重減少、食欲減退といった症状が見られます。それらの症状は時間をかけて悪化するのではなく、数週間のうちに悪くなるなど、比較的早く進行する場合が多くなります。また、リウマチ性関節炎は体の左右対称の部位に症状が起きることも特徴です。

リウマチ性関節炎の治療としては、非ステロイド性抗炎症薬(アスピリンやイブプロフェンなど)によって腫れや痛みを減らす、免疫抑制薬の使用、作業療法を行って体を動かしやすくする、などがあげられます。運動、体重管理、健康的な生活習慣を身に付けるといった、ライフスタイルの改善も重要です。

全身性エリテマトーデス

2015年に女優で歌手のセレーナ・ゴメスが、慢性的な自己免疫疾患で闘病していることを発表すると、全身性エリテマトーデスという病気が話題となりました。

全身性エリテマトーデスの患者数は推計150万人で、そのうち9割は女性。この病気にかかると、関節、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、そして全身のさまざまな部分にダメージが及びます。いろいろな臓器に様々な症状が起こるため、診断が難しい病気です。

症状としては、極度の疲労感、頭痛、関節の痛みや腫れ、発熱、貧血、足・手・目の周りの腫れ、深呼吸するときの胸の痛み、頬や鼻の蝶型紅斑(蝶のような形をした赤い発疹)、日光過敏症、脱毛、血液凝固の異常、寒いと指が白または青くなる、口や鼻の潰瘍などがあります。

治療には、多くの場合、副腎皮質ホルモンや炎症を減らす薬、免疫システムを抑制する薬、臓器への損傷を最小限に抑えるための薬が使われます。

橋本病

甲状腺はチョウチョのような形をした組織で、首の真ん中にあります。橋本病は、免疫システムが甲状腺を攻撃して起こる病気で、通常、甲状腺ホルモンを減少させます(甲状腺機能低下)。橋本病の患者数は全米で1400万人。甲状腺の障害としては、最も一般的な病気です。

喉の前部分が腫れることも(甲状腺腫といいます)。他の症状としては、疲労感、体重増加、ホルモンバランスの崩れ、筋肉や関節の痛み、手足の冷え、皮膚や爪の乾燥、異常な量の脱毛、便秘、うつ、もの忘れ、声かれがみられます。これらの症状は一般的に、合成された甲状腺ホルモンを補充することで、改善されます。

乾癬(かんせん)

乾癬(かんせん)とは、皮膚の細胞が異常に早く作られるために起こる、慢性的な皮膚の病気です。自己免疫疾患のなかでは唯一、男性と女性で同じくらい見られます。全米で750万人の患者がいると推計されています。もっとも一般的なタイプは尋常性乾癬で、皮膚が盛りあがり、銀白色の死んだ皮膚細胞が重なった赤い斑点が皮膚を覆います。これらの紅斑はかゆみや痛みを伴うことが多く、ひび割れたり、出血したりすることもあります。できやすい部位は、頭皮、膝、ひじ、腰背部です。

かゆくて痛む発疹は乾癬のサイン?

他の皮膚疾患と区別が難しい乾癬。そして年齢や性別に関係なく、いつでも発症する可能性があります。乾癬の色々なタイプをご紹介。 https://www.mylohas.net/2018/07/171682psoriasis.html

ごく軽症の場合は、特別な保湿剤やシャンプーを使ってよくなることもありますが、深刻な症状のときは、局所的な治療、光線療法、内服療法(生物学的製剤を含む)を組み合わせるのが一般的です。

乾癬(かんせん)性関節炎

乾癬になったら、必ず乾癬性関節炎になるというわけではありませんが、乾癬にかかると最大で40パーセントの人に乾癬性関節炎の症状が現れます。このタイプの関節炎は通常、大きな関節に症状が見られます。症状がひどくなると、痛み、こわばり、腫れ、関節とその周辺部の破壊が起こります。

炎症と腫れを抑える内服薬や生物学的薬剤などによって、初期のうちに治療を行えば、病状が進むにつれて悪化していく関節の破壊を避けられる可能性があります。

シェーグレン症候群

シェーグレン症候群は、涙腺と唾液腺を標的とする自己免疫疾患です。涙と唾液の分泌が量・質ともに低下し、ドライアイや、膣の乾燥、口の乾燥といった症状がみられます。また、関節の痛みや疲労感が引き起こされることも(テニス選手のヴィーナス・ウィリアムズが慢性的な疲労感などの症状に悩んでいたことは有名ですが、シェーグレン症候群だと診断されたそうです)。

その目の乾き、本当にドライアイ? もしかしたら「シェーグレン症候群」かもしれません

なんとなく感じている目の乾燥。シェーグレン症候群なのかも。ご紹介する症状とサインを検討して、気になったら医師に相談を。 https://www.mylohas.net/2018/07/171796sjogren.html

シェーグレン症候群の患者数は400万人ほどで、発症年齢の平均は40代後半。科学者によると、この病気は、遺伝子的な要因とウイルスや細菌への曝露の両方が組み合わさって起こると考えられていますが、内分泌系や神経系システムが関係する可能性についても研究されています。

症状が起きている部位によって、治療は異なります。例えば、ドライアイだったら、市販あるいは処方された点眼薬や軟膏、または涙の排出口である涙点を小さなプラグで閉じる治療(目の中にもっとたくさんの涙がたまるように)、抗炎症薬で対処しますが、症状が深刻な場合は、手術が行われます。口の乾燥に対しては、ガムを噛むか飴をなめること(口の中が乾燥すると、虫歯にとてもなりやすくなるので、どちらも糖分ゼロのもので)、水分をよくとること、リップクリームを使うことでよくなる場合も。ほかにも、人工唾液で唾液を補充したり、唾液腺を刺激したりする薬による治療などがあります。

強皮症

コラーゲン(皮膚と血管の中に含まれる結合組織)の異常な増殖を特徴とする強皮症は、10万人あたり24人の発症率で起こります。イエール大学医学大学院の准教授で皮膚科の専門医であるモナ・ゴハラさんによると、「皮膚が分厚く、固くなって、動かすのも難しくなります」。硬くなった組織は腎臓、肺、心臓、胃腸にまで広がることも。薬物治療によって症状を和らげます。例えば、血圧の薬によって肺や腎臓の問題を防いだり、また、プロトンポンプ阻害剤によって胸焼けの原因となる胃酸を減らしたりすることができます。理学療法や作業療法によって痛みに対処し、体の強さや動きやすさを改善することも可能です。

Karyn Repinski/7 Autoimmune Diseases Every Woman Should Know About

訳/STELLA MEDIX Ltd.

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