医学・脳科学・心理学など多様な観点から食欲を分析して編み出された、効率よくダイエットできる食欲マネジメントの方法をご紹介します。
「ピュアな食欲」と「フェイクな食欲」がある
「人生目標から考える医療」をモットーに、脳の病気の予防を中心に診療を行っている菅原先生。
多くのビジネスエリートと接するなかで、「結果を出し続けるハイパフォーマーは、食欲マネジメントに非常に長けている」という気づきを得たといいます。
「食べ過ぎ」は短期的には眠くなり、集中力の欠如を招く。習慣化すれば肥満の原因となり、健康リスクが増大します。
飽食の現代にあっては、食欲をコントロールしなければ脳と体のコンディションを整えることはできないのです。
そもそも人間は、食欲をどうやってコントロールしているのでしょう? 菅原先生によると、カギを握るのは、脳内の視床下部にある「摂食中枢」と「満腹中枢」。
「摂食中枢」は、血糖値の低下や胃壁の収縮に反応して「食べたい」という気持ちを促します。
「満腹中枢」は血中のブドウ糖量の増加や、セロトニン・レプチンなどの満腹物質(ホルモン)に反応し、食欲にブレーキをかけてくれます。
「摂食中枢」と「満腹中枢」が司るのは、いわば生命を維持するための「ピュアな食欲」。厄介なのは、大脳の「感覚中枢」がもたらす「フェイクな食欲」です。
「感覚中枢」とは視覚や嗅覚、聴覚などの五感によって記憶を呼び覚ます働きがあります。そのため、たとえ満腹時であっても、食べ物を見たり、匂いをかいだりすることで、感覚中枢が刺激されて、「フェイクな食欲」が湧いてくることになります。
(『成功の食事法』78~79ページより引用)
「フェイクな食欲」に騙されないためには、本来の「ピュアな食欲」を感じる瞬間を1日1回意識するのがコツと菅原先生。
エネルギー不足からくる「ピュアな食欲」に気付けるようになると、快楽のための「フェイクな食欲」との違いがわかり、「フェイクな食欲」をスルーできるようになるといいます。
「完全な空腹」をつくれば痩せる
「ピュアな食欲」を感じるためにも、菅原先生がすすめるのは「1日2食」。
30~49歳女性の推定エネルギー必要量は、身体活動レベルがふつうの人の場合1750kcal(出典:「日本人の食事摂取基準」(2015年版)より一部抜粋)であり、総摂取カロリーさえ足りていれば3食にこだわる必要はないとのこと。
「基本的に主食は2回、アドオン(追加)としてサラダやナッツや豆腐、野菜スープなどを“おやつ”として2~3度摂ってもよい」。このように食事のスタイルをシフトしてみるのはどうでしょう(“おやつ”といっても決してスイーツではなく、ヘルシーな食材を摂る点がポイントです)。
(『成功の食事法』167ページより引用)
「1日2食」には、食べ過ぎを防いでスリム化できること、「ピュアな食欲」を認識できること以外にも、さまざまなメリットがあるそう。
ダイエット中の女性にとってうれしいのは、完全な空腹時間(1日の最後の食事から翌日の食事までの時間)ができることで、体に蓄積された脂肪が燃焼してくれることでしょう。
菅原先生によると、空腹を感じて低血糖状態がしばらく続くと、内臓脂肪の中性脂肪が分解され、体内に糖が作り出されて血糖値が上昇し始めるとのこと。
お腹がすいたとしても、しばらくガマンしていれば、体は自前で脂肪からエネルギーを作り出してくれるのです。
「1日2食」にすると体に起きる、いいこと4つ
さらに、「1日2食」で胃腸を空っぽにして休ませる時間が増えると、次のような変化が体に起こるといいます。
1. 体内の毒素を効率よくデトックスできるようになる
2. 慢性疲労が改善する
3. 思考が冴える
4. サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化する(『成功の食事法』175ページより引用)
4のサーチュイン遺伝子は、アンチエイジングや寿命延長などの効果が期待されている遺伝子。
体内のサーチュイン遺伝子が活性化すると、エイジングの原因に細胞レベルで働きかけるため、皮膚細胞のターンオーバーが整い、肌トラブルの改善や解消まで期待できるのだとか。
とはいえ、これまで「1日3食」の習慣だった人が「1日2食」に変えるのは、意外と難しいものです。それは、習慣をなかなか変えられないという脳の性質に由来していると菅原先生はいいます。
そこで試してほしいのが、「1日2食に減らそう」というマイナス思考ではなく、「今日は10時間の断食に挑戦してみよう」などとプラス思考で捉えること。
眠る3時間前までに食事をすませるだけでも、かなりの時間稼ぎになり、「完全な空腹」を長くすることにつながります。
「快楽としての食欲」に騙されず、空腹でいる時間を楽しむこと。「現代において『空腹』とは究極の“贅沢”」という菅原先生の言葉を脳内でリピートしつつ、食欲マネジメントに取り組んでみたいと思います。
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脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック院長。1970年生まれ。杏林大学医学部卒業後、国立国際医療研究センターに勤務。2000年より脳神経外科専門の北原国際病院(東京・八王子市)に15年間勤務。毎月1,500人以上の診療をおこなう。2015年に菅原脳神経外科クリニックを開院。著書に『死ぬまで健康でいられる5つの週刊』(講談社)など。
[成功の食事法 脳神経外科医の自分を劇的に変える食欲マネジメント]
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