私たち女性の身体は年齢やライフステージによってさまざまな変化が起こります。それは女性の健康には女性ホルモンが深く関わっているから。病院へ行くほどではないけど調子が優れない……そんなときこそ婦人科へ行くチャンスです。

婦人科は何かあったら行く場所ではなく、人生のサポーターと出会える場所」だとフェニックス メディカル クリニックの賀来宗明院長は言います。いつまでもイキイキとした自分でいるためには、どう自身の身体との向き合っていけばいいのか、賀来先生にお話を伺いました。

女性ホルモンと人生ライフサイクルの関係

「女性は、女性ホルモンの影響によって、年齢やライフステージごとに身体や心にさまざまな変化が起こります

初潮を迎えてから20歳頃までは、女性ホルモンの分泌が増え、子宮や卵巣が成熟する時期です。卵巣の機能が完成するまでは月経不順や月経痛などのトラブルが増えます。

性機能が成熟し、女性ホルモンの分泌が盛んになる20〜30代くらいは、妊娠や出産をするのに適した時期です。そして40歳をすぎると、徐々に女性ホルモンの分泌量が減っていき、やがて閉経を迎えます。

女性の身体は、この初潮から閉経までの間に、妊娠のための準備が毎月繰り返されています。妊娠に備えて厚くなった子宮の内膜は、妊娠が成立しないと必要がなくなるため、剥がれ落ちて排出されます。これが月経のしくみです。

月経の回数は、50年前と比べて、約10倍の500回に!

ここ50年ほどで女性を取り巻く環境は大きく変化しました。栄養状態や体格の変化によって初潮年齢は早まり、閉経も50代にと延びました。昔の女性の多くは、初潮を16歳頃に迎え、若くして結婚して子供を何人も産み、40代頃で閉経するというケースがほとんどでした。

一方、現代の女性が初潮を迎えるのは11歳頃、女性の社会進出とともに初婚年齢が上がり、出産の回数も格段に少なくなりました。さらに閉経も10年ほど延び50代で迎える方が多くなっています。

その結果、50年ほど前に比べ、一生涯に経験する月経の回数が飛躍的に増えているのです。その数は50年ほど前の50回程度から、500回程度と約10倍です」

働く女性の約8割は生理痛に悩んでいる

約10倍にも増えた月経回数によって、私たちはさまざまな月経のトラブルに見舞われる回数も増えてきました。生理痛が「かなりひどい」「ひどい」と感じている人は女性全体の約30%、「がまんできる程度」の人をあわせると全体の8割近くもの人が生理痛に悩んでいるというデータもあります。(女性労働協会「働く女性の健康に関する実態調査」

月経回数が増えたことは、生理痛はもちろんのこと、子宮内膜症や子宮筋腫などのリスクも上がります。実際に、生理痛がひどいからと受診をされた患者さんの多くから、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が見つかります。

月経は毎月こなくてもそんなに問題がない!?

さらにこうした病気を抱えると、将来“子供がほしい”と思ったときになかなかできないというケースも少なくありません。“生理は毎月来るもの。毎月来ていれば健康”と思っている方がほとんどだと思いますが、最近の研究で、月経は毎月こなくてもそんなに問題がないことがわかってきました

むしろ毎月の月経によってこうしたさまざまなトラブルが起こったり、不妊を招いてしまうためで、3〜4ヶ月に1度くらいがちょうどよいのではないかと言われるようになってきました。ただしこれは急激なダイエットなど、不健康な形で生理を止めていいというわけではありません。こういうときに頼りにしてほしいのがパーソナルドクターです」

理想は、20代から同じ先生に診てもらうこと

婦人科はハードルが高いからと、本当に何かあったときだけ行くという人も多いと思いますが、賀来先生によると「理想は20代からずっと同じ先生に診てもらうこと」だといいます

「女性は、ホルモンに振り回される人生だといっても過言ではありません。ひとつ何かの悩みが消えてもまた新しい悩みが増えたりと、心も身体も振り回されるのです。辛い症状がある時々で婦人科へ行くのもいいのですが、その人の性格やバックグラウンドなどを知っているドクターのほうが長い目でその人を見ることができると思っています。」

女性の人生はまるで障害物競走のよう?! そんなときの味方は?

女性の人生というのは、常に目隠しをしながら障害物競走をしているような状態だと思っています。自分だけで健康管理をするのはもちろんいいことですが、ときには何か障害物にぶつかることもあります。そんなときにドクターを頼ってほしいと思うのです。婦人科は怖いところ、というイメージを持つ人が多くいますが、ドクターは敵ではなく、一緒に人生を伴走し、あなたの目になってくれる強い味方です。

自分から年を迎えにいく!

特に30代を過ぎてくると、月経のトラブルだけでなく、痩せにくくなったり、骨がもろくなったり、腰痛や肩こり、だるさ、不眠、精神的に不安定になるなど、さまざまな悩みが襲ってくるでしょう。

アンチエイジングという言葉が流行るように誰でも『年を取る』というのは寂しい気持ちになるものです。しかし強い味方を作っておけば、年を自分から迎えにいくように、年齢を重ねていくことができます。今からでも遅くありません。『この人なら自分の身体を任せられる』というドクターを見つけてみてください」

お話を伺ったのは、賀来宗明先生

フェニックス メディカル クリニック理事長・院長。昭和32年生まれ。台湾出身。ハーバード大学、オックスフォード大学への留学を経て、東邦大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院で勤務後、平成6年に独立開業。帝京大学医学部非常勤講師。東京大学医学部非常勤講師。台北医学大学産婦人科准教授。実践大学民生学院教授。東京大学医学部医学博士。10月から不妊治療専門クリニック、フェニックス アートクリニックを開業。

文/大場真代

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