60歳から空手を再開して、現在は黒帯という運動生理学の権威、森谷敏夫教授。3食しっかり食べて運動することが、パワフルな生活を支えています。

「森谷筋肉塾」夏期集中講座、第4回は「筋肉を維持させるための食事」について学びましょう。

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第4回まとめ

理想の食事比率は、「糖質6:タンパク質2:脂質2」。 一日に必要なタンパク質は、体重1kgに対し1g。毎食20gを目安にとること。 朝と昼はしっかり、夜は軽めを心がける。

「糖質6:タンパク質2:脂質2」を、3食バランスよく

──前回、「炭水化物」を食べなければダメだと教えていただきましたが、どのくらい食べればいいのでしょう。

森谷敏夫教授 :

私の場合、ジョギングと空手を毎日交互にやっているし、トレーニングもしているので、一日のエネルギーの7割近くを炭水化物から摂っています。

炭水化物から食物繊維を抜いたものが糖質ですが、脳と筋肉を守るためには、炭水化物を抜いたり、何かひとつの食材ばかりを食べ続けたりするのは絶対にダメ。「糖質6:タンパク質2:脂質2」の比率でバランスよく食べること。

とくに気をつけてほしいのは、タンパク質の摂取量です。筋肉を維持するために必要なタンパク質は、体重1kgに対して1gが目安。体重60kgの人だと一日最低60gのタンパク質をとらなければなりません。

── 一日60gのタンパク質なら実践できそうです。昨日も、朝は食べなかったし、昼もサンドイッチですませたけど、夜は赤身のステーキを食べましたから。

森谷敏夫教授 :

ぜんぜんダメっ! それだと夜ステーキを食べるまでの間に、筋肉はどんどん分解されてしまいます。

タンパク質は、毎食20gずつ食べること。牛乳180ccに含まれるタンパク質は9gで、卵1個には7g。どれかひとつの食材で摂ろうとせず、組み合わせて20gにすればいいんです。

──3食に分けて食べないといけないんですね。ところで、タンパク質といってもいろいろありますが、どのタンパク質がいいのでしょう。

森谷敏夫教授 :

植物性の大豆タンパクと、牛乳などに含まれるホエイタンパク質(乳清タンパク質)を比較実験したことがありますが、ホエイタンパク質のほうが、筋肉に合成されるスピードが速いという結果が出ました。

も筋肉にいいのではないかと考え、いま研究を進めているところです。でも、植物性タンパク質には食物繊維などが豊富に含まれていますし、どちらもバランスよく摂ればいいと思います。

タンパク質が足りなければ、ヨーグルトなどをプラス

──タンパク質をしっかりとれば、筋肉はキープできるんですね。

森谷敏夫教授 :

いや、それだけじゃ不十分で、やっぱりちゃんと運動しないと年とともに筋肉は落ちていきます

トレーニングをしてから2時間以内が、筋肉のタンパク質合成が進む時間。なので、筋肉量を減らさないために一番効果的なのは、運動直後から30分以内にタンパク質を摂ることです。

「タンパク質が足りないな」と思ったら、牛乳やヨーグルトなどでさっと補う。日頃から意識しておくことが大事ですね。

──ちなみに、塾長はどんな食事をされてますか?

森谷敏夫教授 :

朝は和食が多いかな。納豆に焼き魚、具だくさんの味噌汁にごはん。それに牛乳かヨーグルト、フルーツを食べます。

昼は大学の学食で一品ものではなく、定食をチョイス。タンパク質が足りないなと思ったらヨーグルトを足します。

、外食するときもバランスを考えて注文しますね。お好み焼き屋にはよく行きますが、そこでは野菜やカキなどを鉄板焼きで頼んで、カキ玉お好み焼きにはネギをトッピング。

朝と昼はしっかり、夜は軽めを心がけています。

──やっぱり朝ごはんを食べることって、大事なんですね。

森谷敏夫教授 :

朝ごはんを抜く人は早死にする、というデータもあるくらい、朝ごはんは重要です。

食べたものの消化や吸収はベルトコンベアみたいに流れ作業で進んでいきます。だから朝ごはんを食べないと歯車が狂ってしまうので、食べ物を分解する酵素やホルモンが出にくくなり、せっかく食べたものをしっかり分解できなくなることもある。不規則な生活をしていると、生活習慣病になりやすいのはこのためです。

夜にドカ食いをして、朝ごはんを抜いている人は、すぐに生活スタイルを見直してや!

【今日の宿題】1食20gのタンパク質、摂れてますか?

手軽に食べられる外食ほど、炭水化物や脂肪過多になりがち。タンパク質が足りないなと思ったら、いつでも牛乳やヨーグルト、納豆などをプラスできるよう、常備しておくといいですね。朝・昼・夕、それぞれ20gずつタンパク質を摂って運動をすることが、筋肉維持の第一歩です!

第1回:「動かないから太るんだよ!」京大名誉教授が語る、筋肉が必要なワケ
第2回:誰が見ても「やせた!」とわかる身体を手に入れるダイエット法
第3回:糖質制限ですぐに体重が落ちるのはなぜ? 勘違いポイントを教授が解説

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森谷敏夫(もりたに としお)教授
1950年、兵庫県生まれ。1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授、カロリンスカ医学研究所国際研究員(スウェーデン政府給費留学)、米国モンタナ大学生命科学部客員教授等を経て1992年、京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年から京都大学名誉教授。専門は応用生理学とスポーツ医学で、生活習慣病の温床になる肥満のメカニズムに関する研究や運動ができない人々のための骨格筋電気刺激研究などを精力的に進めている。

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