深い眠りが脳の老廃物の除去をうながす?

深い眠りについている状態であるノンレム睡眠中に、脳内の有害物質が洗い流されている可能性が米国の研究で示されました。脳内を循環する脳脊髄液により老廃物の排出が促されることは知られていましたが、具体的なことは明らかにされていませんでした。

今回の研究では、ノンレム睡眠中に脳波が徐波化し、それを受けて血液の振動が起こり、次いで脳脊髄液が律動的に脳内を出入りすることが示されたということです。

脳脊髄液については、代謝で生じた副産物が脳内に蓄積しないよう脳外へ除去する過程で重要な役割を果たしていることが示されています。このプロセスは睡眠中に活発になることも知られていました。しかし、そのメカニズムや理由はよく分かっていませんでした。

そこで今回、13人の健康な成人(23~33歳)を対象に、MRIで睡眠時の脳脊髄液の流れを観察し、脳波で脳内の細胞の電気活動を測定しました。

眠りが深いときに大波が起こり、脳の掃除が進む?

徐波睡眠はノンレム睡眠の中で起こるもので、脳波が大きくゆるやかとなり(徐波)、眠りが深くなる睡眠の段階です。

今回の研究では、徐波が起こるたびに血流の速さや量が変動し、脳脊髄液が大きな振幅の波として脳内の隙間に流れ込んでいることが観察されたということです。

研究チームによれば、人は加齢とともに徐波の出現量が減り、脳内の血液の流れの様子も変化するそうです。そうなると、睡眠中の脳脊髄液の律動的な動きが減少して、有害物質の蓄積と記憶力の低下を招くそうです。これまではこうしたことが別々のものとして研究・評価されがちでしたが、今回これらが密接に関連している可能性が示されたとしています。

脳内の老廃物には認知症患者の脳内に蓄積しているタンパク質として有名なアミロイドβも含まれるということです。ただし、研究リーダーは「この研究で、深い眠りにつくことで認知症などの疾患を予防できることが証明されたわけではありません」と話しています。

また、今回は健康状態のよい若年成人を対象にしていたことから、「今後は健康な高齢者や持病のある人を対象に研究を実施し、深い睡眠時に脳脊髄液の動きに違いがあるかどうか検討してくことが必要」としています。

睡眠の専門家たちによれば、今回の研究は脳の神経細胞を健康に保ち、脳内にある有害物質の除去を促すために睡眠が重要である理由やメカニズムの解明に向けた手がかりとなるものであり、「これまでに明らかにされている脳脊髄液の働きを踏まえると、徐波睡眠は脳内の老廃物の除去を促していると考えるのが妥当」という見解を示しています。

最近報告された別の研究では、健康な成人でもひと晩眠らないだけで脳内にアミロイドβの増加が認められているそうです。

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HealthDay News 2019年10月31日/Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.(参考情報)Abstract/Full TextPress Release/image via shutterstock

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