重症化を防ぐためにまずはワクチンを!
厚労省から、2019年9月の段階で沖縄、九州を中心に東京都などを加えた10都県でインフルエンザの流行入りが発表されました。例年は11月末~12月上旬。今シーズンは約2か月も早い流行入りです。
1月~2月にはピークを迎える可能性があるインフルエンザ。正しい予防対策は意外と誤解が多いものです。ピーク前に厚労省のエビデンスある発表から再確認しました(※)。
今シーズンはA型とB型、どちらが流行しそう?
季節性インフルエンザにはA型とB型があり、A型には「AH1pdm09(2009年に新型インフルエンザとして流行)」と「AH3(いわゆる香港型)」があります。
国立感染症研究所が10月に発表した「都道府県別インフルエンザウイルス分離・検出報告状況」では、今のところ「AH1pdm09」が31例、「AH3」が8例、B型が5例となっています。
しかし、今の時点ではまだ、どの型が流行の主流になるかはわからないとのこと。ここ数年、A型とB型の流行パターンが変則的になっていて、どの型が流行の中心になるのかも予測しづらい状況があると言われています。
しかし、「早めのワクチン接種」は大事。東京、九州、沖縄など住んでいる地域で流行が始まっている場合は、早めのワクチン接種を行いましょう。インフルエンザワクチンは接種後、抗体がつくまで約2週間かかります。
ワクチンは、あくまで重症化を防ぐことが目的です。接種しても感染することはあります。そのため、接種後も日常的な予防が必要です。
早めにワクチン接種すると効果がいつまで持つの?
早めにワクチンを接種すると、流行が続く春先まで効果が持たないのでは? と思う人も。1シーズンに2回接種をしたほうがいいの? と悩む人も。
どんなワクチンでも時間がたてば、徐々に抗体価は低下して、予防効果が薄れていきます。はしかや風疹のように、感染を防ぐことが目的のワクチンで、明確な抗体価の目安があるものは、それを維持するために複数回の接種を行います。
しかし、インフルエンザのワクチンは、そもそも重症化を防ぐことが目的で、抗体価の目安はありません。「2回接種すれば効果が高まる」という根拠はなく、健康な大人の場合は、1シーズンに1回の接種が基本と考えればよいと言われています。
ちなみに、日本の小児科では、生後6か月以上、13歳未満では、2回接種を推奨。WHO(世界保健機関)では、生後6か月から9歳未満で初めて接種する場合は2回で、翌年からは年1回の接種をすすめていて、国際的に共通のルールはありません。
同じ電車にいるだけで感染するの!?
インフルエンザのおもな感染経路は、空気感染ではなく、くしゃみや咳による飛沫感染です。同じ空間にいるだけで、感染してしまうのは、空気感染です。
くしゃみや咳によって口から飛び出たウイルスなどの病原体が、小さな粒となって、空中にフワフワと長く浮遊します。そのため同じ空間の中に長くいるほど、感染の危険は高まります。
しかし、空気感染するのは、結核、はしか、水痘(みずぼうそう)の3つ。インフルエンザは、空気感染の感染症ではありません。
ですから、同じ車両にいるだけで、インフルエンザに感染するわけではありません。
インフルエンザの感染は、距離がポイントと言われています。インフルエンザのウイルスがくしゃみや咳で飛んでいくのは、空気感染と比べて大きくて、水分を含んだ重い粒です。口から飛び出しても、通常は1~2m以内で地上に落ちると言われています。
くしゃみや咳をする人がいたら、少し離れるだけでも、感染の機会を減らせます。インフルエンザのような飛沫感染のウイルスは、いつまでも空中を漂ってはいません。
こまめな手洗いはヒジョーに大事
それよりもウイルスが付着したドアノブ、手すり、つり革などを手や指で触れ、その手指で鼻や口、目を触ることでも感染します。手を介しての感染が多いと言われています。
ですから、こまめな「手洗い」が非常に大事です。とはいっても、完璧に洗うことはむずかしい。アルコール性の手指衛生剤での洗浄も有効です。
マスクは外すときが大事なポイント!
マスクは、感染を防ぐために、ある程度の効果があります。
しかし、小さなウイルスを完全にブロックするわけではありません。実際には、予防のために着けるマスクより、感染した人が着けるマスクのほうが効果的です。
インフルエンザに感染して咳やくしゃみをする人がつけると、飛ぶ瞬間の粒は水分を含んで大きいため、マスクでブロックされやすいのです。マスクは予防より、発症者が装着して感染拡大を防ぐ目的のほうが重要ということです。
ただし、マスクには予防効果がまったくないわけではありません。マスクをつける隠れた効果としては、手指で口や鼻に触れる機会が減り、手からの感染を防げます。
ポイントは外すときです。ウイルスがついているかもしれない手指で、鼻や口に触れないこと。せっかくの予防効果が台無し。マスクを外すときは、耳掛けゴムの部分だけ触り、マスク本体にはできるだけ触れないようにします。そして、マスクを外したあとの手洗いが重要です。
効果が高い手洗いのタイミングは?
手洗いの有効性は明らか、とされていますが、水道があるところや洗えるタイミングも限られています。頻回に手洗いを繰り返すことはできません。
そのため、優先すべき手洗いのタイミングを考えましょう。人の多く集まる場所、周囲の環境に頻回に触れたあと、マスクを取るときなどが、手洗い効果が高いタイミングです。
医療現場や食品衛生で行われているのは、冷たい水で30秒以上かけて手の隅々まで洗うことです。これを日常生活で繰り返すことはとても大変。
ですから最低、口や手に触れる指先、手のひらを中心に洗います。また、水道がないところでは、市販されているアルコール製の手指衛生剤も有効と言われています。
うがいの効果はかなり限られます
うがいの効果は、限定的と言われています。昔は、うがいをすすめられていましたが、今は積極的に推奨されていません。
鼻や口の粘膜についたウイルスは、ごく短時間で感染してしまいます。日常的にできるうがいの回数は限られるため、どうしても効果も限られます。
また、水やお茶を頻回に飲むだけでは、ウイルスの付着部分をすべてカバーすることはむずかしく、やはり限界があります。
加湿は予防になる! そして寝不足、体調不良のときは人ごみを避けて
加湿には、乾燥した環境のほうがウイルスの感染性が高まるので、それを避ける目的で効果があります。もうひとつ、鼻・口腔内・気道の粘膜の乾燥を防ぐ目的もあります。これらの粘膜が乾燥すると、局所的な免疫が低下する可能性があると言われています。
そのため、加湿の予防効果は期待できますが、それを明確に示したエビデンスのある研究や調査がないというのが現状。
また、体の抵抗力を高めるため十分な休養とバランスのとれた栄養が大事ともされています。
そしてインフルエンザが流行してきたら、高齢者や子ども、妊婦さんだけでなく、体調の悪い人、睡眠不足の人は、人ごみや繁華街への外出を控えましょう。
やむを得ず人混みに入るときに欠かせないのは、マスクですね。
インフルエンザ予防策
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増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/
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コメント
コメントを書く必要以上に出かけない。
電車乗るときとかは手袋するってのも手やぞ。