ニオイ研究の第一人者である、体臭と多汗の専門医・五味常明先生にうかがう「まちがったニオイ対策」。

主に汗や皮脂に関するポイントをうかがった前編に続き、後編のテーマは「口臭と食材」。口臭と体臭のどちらにも効く、身近な「消臭食材」についてもご紹介します。

口臭対策のポイントは「唾液と食べ物」

五味先生によると、口臭の主な発生原因はふたつあります。ひとつは口内環境の悪化により口の中の細菌が増えること。もうひとつは、内臓の状態が悪くなり、そのニオイが口から出てくることです。

五味先生 :

まずは口の中の細菌の増殖を抑えることと、内臓を正常な状態に整えることが大切。

そのために重要なのが、唾液のパワーを使いこなすことと、食生活です。

「口臭が気になるからしゃべらない」は逆効果

人間の口のなかには、1日0.5~1.8リットルもの唾液が流れています。ところが年齢を重ねると、どうしても唾液量は減ってきてしまうと五味先生。

さらに最近では、仕事や環境変化のストレス、日常的に薬を飲むことで、唾液量の減りがさらにひどくなる人が少なくありません。

五味先生 :

唾液には殺菌作用があり、口臭の元凶である口腔内の細菌と、その温床である舌苔(ぜったい)を洗い流してくれます。

いわば唾液は、口のニオイを消す最強の洗浄剤であり、消臭剤なのです。

よくやりがちな「まちがった口臭対策」も、唾液のパワーを無駄にしているケースが多いとのこと。

五味先生 :

「口臭が気になって無口になってしまう」という方がいますが、それは逆効果。口臭を予防する「唾液」が出にくくなってしまうからです。

口臭を気にして口を閉じていればいるほど、唾液の分泌が低下し、口腔内に雑菌が繁殖しやすくなります。

ウイルス対策でマスクをするのがマナーとなり、おしゃべりをしにくい今は要注意。

適度に口の体操を行い、口や舌をよく動かすようにすると、唾液の分泌が促進され、口臭予防につながります。

「無臭食品」には要注意

このところニオイ対策として、無臭納豆や無臭ニンニクなど、無臭食品の人気が高まっています。しかし、その効果は一時的なものだと五味先生。

五味先生 :

無臭納豆や無臭ニンニクは、そのときの口臭は抑えられますが、体臭とは関係がありません。

そもそも納豆やネギ類のニオイは翌日には代謝されるので、体臭としては残らないのです。

いっぽうニンニクは、無臭ニンニクだとしてもニオイ物質がずっと残ります。むしろ火を通すなどして、ニオイ物質であるアリシンの産生を防ぐほうが効果的。

安易に無臭食品に頼ると、自信満々でニオイを放ってしまう、ということになりかねません。

消臭に効く「食材」10選

口臭も体臭も、人間のニオイの大部分は食材からきています。食材は大きくわけて炭水化物、脂質、タンパク質の3つにわけられますが、もっともニオイの元になるのはタンパク質

肉類が分解されるとインドール、スカトール、硫化水素、アンモニアといったニオイ物質ができ、ニオイを発生させるのです。

とはいえ、タンパク質は健康維持に欠かせない食材。餃子やニンニクもおいしいし、口臭を気にせず好きなものを食べたいというのが本音です。

五味先生 :

お肉の食べすぎはよくありませんが、食事では消臭になる食材を一緒に食べることで、ニオイ対策が可能です。

消臭食材といえるのは、抗酸化食材、食物繊維、アルカリ食品など。具体的にご紹介しましょう。

1.牛乳

ニンニクのニオイは、牛乳である程度の封じ込めが可能。牛乳が胃に入るとヨーグルトのような脂肪膜になり、ニンニクを包み込んだ状態をつくってくれます。この状態で消化活動が行われるので、ニンニク臭が口もとまで上がってこなくなります。

2.昆布

ニンニクのニオイ対策としては、ダシ昆布を口の中に含むこともおすすめ。驚くほど唾液が分泌され、口臭が軽減されます。

3.梅干し

抗菌作用が強く、口の中で繁殖して口臭の原因になる雑菌を抑えてくれます。酸っぱさによって唾液が分泌され、胃散の働きも助けてくれるうえに、クエン酸が体臭や汗のニオイを予防する効果もあり。非常に優秀な消臭食材です。

4.メカブ

体臭が発生する原因のひとつは、血液中にアンモニア、脂肪酸、乳酸、尿素などのニオイ物質が多くなり、血液そのものがクサくなってしまうこと。

メカブに含まれるフコイダンという物質は、アンモニアや硫化水素といったニオイ成分を取り込み、その多くを便として体外に排出してくれます。毎日100gのメカブを1週間ほど食べ続けると、血液内のニオイが正常レベルに戻るという実験結果も出ています。

5.納豆

食物繊維が便をやわらかくし、納豆菌が腸内環境を整える働きをしてくれます。メカブと納豆を一緒に食べると、最強の消臭食品に。

6.オリゴ糖

腸内の善玉菌を元気に育てる栄養素。大豆、ゴボウ、アスパラガス、玉ねぎ、はちみつなどの食品に多く含まれます。

7.食物繊維

食物繊維をしっかり摂ることで、腸内の悪玉菌が出した毒素や有害物質、悪臭物質を体外に排出することができます。こんにゃく、モロヘイヤ、エシャロット、ゴボウ、キクラゲ、昆布、わかめ、大豆(煮豆や納豆)などがおすすめ。

8.緑茶

緑茶に多く含まれるカテキンは、体内でニオイ物質がつくられるのを止める働きがあるうえ、抗菌作用も強く、口の中の雑菌を殺してくれます。また、緑茶に含まれるフラボノイドにも消臭効果があります。

口臭対策をしたいなら、食後はコーヒーよりも緑茶がおすすめ。お茶をいれた後の茶殻をガムのように噛むと、口腔内を清潔に保ち、舌苔を除去する効果があります。

9.わさび、しょうが、ごま、ねぎ、大根おろし、ゆずなどの薬味

薬味は食べた後、一時的にはその香りが残ります。しかしそれぞれの食品が胃液の分泌を高め、血液を浄化してくれるので、結果的にはニオイケアにつながります。

10.キウイフルーツ

キウイフルーツの皮をむいて輪切りにし、舌の上に乗せて30秒ほど転がしてから食べましょう。キウイにはアクチニジンという酵素が豊富に含まれており、舌苔を分解・除去してくれます。

また、ミカンの2倍ものビタミンCやポリフェノールが含まれており、食物繊維も豊富。消臭食材の特徴をたくさん備えたフルーツです。

「ニオイのケアをすることは、健康な体を取り戻し、生き生きとした暮らしにもつながる」と五味先生。身近な消臭食材を取り入れて、ニオイを上手にコントロールしていきましょう。

前編記事はこちら

あなたは大丈夫? 実は逆効果になっている「ニオイ対策」6つ

五味常明(ごみ・つねあき)先生
五味クリニック院長。体臭・多汗研究所所長。1949年長野県生まれ。一ツ橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科、多摩病院精神科などを経て、「心療外科」という新しい医学分野を提唱。体臭・多汗治療の現場で実践。テレビや雑誌でも活躍中。著書・監修本も多数。

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