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気づきにくい「更年期の冷え」対処法
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気づきにくい「更年期の冷え」対処法

2020-07-17 18:00
    自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「更年期の肥満対策」について、お届けしました。今回は「更年期の冷え、むくみ」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

    上はのぼせて、下は冷える、が特徴

    年齢にかかわらず、冷えは多くの女性が抱える悩みのひとつです。とくに、若いころの冷えとは、ひと味違った冷えになるのが、更年期です。

    入浴してもなかなか温まらず、お風呂で温めてもすぐに冷えてしまい、手足が冷たくなって眠れないという声もよく聞きます。

    また、上半身はのぼせるのに、下半身が冷えてしまうというのも、更年期の冷えの特徴のひとつです。そこで知っていただきたいのが“冷えの対処法”です。

    原因は、自律神経の乱れによる血行不良

    血行が悪いと、冷えが起こります。冷えを起こす血液循環の悪さは、女性ホルモンに大きく関係しています。

    更年期では、卵巣機能が低下して、エストロゲン(卵胞ホルモン)だけでなく、同じく女性ホルモンのひとつ、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌も下がり、自律神経も乱れます。

    すると血液の循環が悪くなり、冷えるのです。自律神経は、とても反応が早い神経で、体の変化にすぐに反応します。更年期の不調を冷えから自覚し始めることが多いのも、そのためです。

    ストレスが強いと、さらに自律神経が乱れやすいため、症状が強く出る傾向にあります。 

    また、若いときから冷え症で悩んでいる人ほど、更年期の冷え症が強くなる傾向もあると言われています。

    「プロゲステロン」の分泌が減少することで

    本来、プロゲステロンには、体温を高める働きがあります。排卵後から生理までがプロゲステロンの分泌が多い時期です。

    プロゲステロンの影響で、この時期はひと月のうちで体温が高くなるときで、高温期と言われています。

    プロゲステロンは、卵子と精子を受精させ、妊娠を維持するために大切なホルモンで、妊娠中はプロゲステロンが多く分泌されています。妊娠中、体温が0.5℃程度高くなるのもそのためです。

    更年期には、このプロゲステロンの低下により、自律神経の失調症状が起こり、その結果、抹消の血管が必要以上に収縮し、血液の循環が悪くなるために、冷えが起こります

    冷えやむくみに隠れた病気をチェック

    つらい冷えでまず注意したいのは、貧血、心臓病、腎臓病、糖尿病、甲状腺機能低下症など、女性に多い隠れた病気があるかもしれないということです。

    病院でのチェックは大切です。検査の結果、隠れた病気がなければ、多くの冷えの原因は、女性ホルモンの分泌のバランスが悪く、卵巣機能が低下しているために起こるものと考えられます。

    女性ホルモンの状態は、血液検査で調べるとわかります。

    冷えとともに「むくみ」も自律神経の乱れで起こります

    加齢とともに血液やリンパ液など、体液の循環が悪くなりますが、更年期からは、自律神経の働きの乱れが加わるため、さらに体液が滞り、体がむくみやすい状態になります。

    顔がむくんだり、脚がむくんだりと、症状はいろいろです。立ち仕事をしたり、睡眠不足や過労気味だったりすると、さらにむくみやすくなります。

    ただし、むくんでも横になれば治る、翌朝には解消される、という場合は、生理的なむくみなので心配する必要はありません

    けれども、むくんだ状態が長く続く、すねの骨の上を指で押すと凹み指の跡が残ってなかなか元に戻らない、尿の出が悪い、尿量が少ないなどの症状をともなう場合は、心臓や腎臓病などの疑いがあります。早めに内科を受診しましょう。

    もしかしたら、その夏バテも?

    また、冷えやむくみがある人は、体力が低下して、夏バテしやすくなります。

    女性ホルモンが低下すると、疲れやすくなって、疲労回復が遅れます。すると意欲まで減退し、やる気も出なくなります。

    とくに、更年期世代は、仕事でも家庭でも役割が多く、人生の中で忙しい年代です。そんななか、今までどおりに仕事や家庭生活がこなせないと、すごく体力が落ちたように感じます。

    でも、疲れや倦怠感も、更年期による女性ホルモンの低下や自律神経の変調が原因のことが多いのです。ホルモンや自律神経の一時的な変調を調整しようとして、体全体が反応して無理をした結果なのです。

    このようなときは、スローペースで過ごす時期と割り切って、焦らず無理をしないようにしましょう。一過性ですから、時期が来れば、体も心もまた元気になります。気長に気楽に構えましょう。

    卵巣機能を回復・維持させるには

    低下してしまっている卵巣機能を回復させるには、どうしたらいいのでしょう? あるいは、これ以上、低下させない手立てはあるのでしょうか? 

    残念ながら20代、30代前半のころのような卵巣機能に戻すことはできませんが、できるだけ卵巣を長持ちさせ、機能を維持する方法はあると言われています。

    閉経前の40代女性には、低用量ピルで女性ホルモンのバランスを整える方法があります。低用量ピルは、使いやすいホルモン剤で、エストロゲン、プロゲステロンがそれぞれ少量ずつ含まれているため、女性ホルモンのバランスを整えることができます。

    また、低用量ピルだけでなく、女性ホルモンを補充するホルモン補充療法(HRT)もあります。これは、閉経後の女性も使用可能です。

    漢方薬にも、冷え対策の薬があります。女性の冷えに処方される代表的な漢方薬は、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「加味逍遥散(かみしょうようさん)」「温経湯(うんけいとう)」「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などです。

    女性ホルモン剤も漢方薬も、婦人科で処方してもらえます。

    運動、入浴、食事、いろいろな対策を試して

    運動も大切です。ウォーキング、ヨガ、半身浴などは、血行をよくし、冷えを改善し、自律神経も整えます。また、入浴はシャワーだけでなく、湯舟につかって温まることもとても大事です。

    食事は、ビタミンE鉄分を多く含む食品を意識して摂りましょう。ビタミンEや鉄分は、不足すると、血行が悪くなることが知られています。ビタミンEは、アーモンドなどのナッツ類、うなぎ、卵黄などに多く含まれています。鉄分は、レバーやほうれん草などです。

    更年期の症状は、ひとつの方法だけで解決しようとしないで、いろいろな対策を試しながら、よい方向へもっていくほうが効果もあり、体のためにもいいのです。

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    増田美加・女性医療ジャーナリスト 予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ

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