前編では、地球環境を守る活動への思いや、「DEPT THIRD-HAND PROJECT」など、具体的な活動について聞きました。後編ではeriさんも実践している、スマートかつ今すぐできるサスティナブルなTIPSを教えてもらいます。
掃除も洗濯もすべて、ホタテパウダーで
地球環境のことを考えて何か始めてみたいけど、何から始めればいいかわからない……。筆者も含めそんな読者の皆さんへeriさんがすすめてくれたのは、家の洗剤を丸ごと代替えできる、ある商品でした。
「ホタテの殻を焼成してパウダーにした、ホタテパウダーです。使い方は重曹と似ていて、パウダーを水で溶かした液を洗剤として使います。重曹と同様に、油汚れがよく落ちて、消臭効果もありますが、殺菌効果があるのがホタテパウダーの特徴。家の掃除用洗剤としてはもちろん、私は衣類もこのパウダーで洗っています。わりとふんわり仕上がるので、柔軟剤は使わなくても大丈夫なほど。愛用しているのは、企業として環境問題にきちんと配慮している『618ホタテパウダー』です」
ホタテパウダーは、水に溶いたもの(左)を掃除用に、粉のままのもの(右)を洗濯用に常備eriさん特製の「ホタテパウダー水」のレシピは、水道水に少しのホタテパウダーと好きな精油を入れるだけ。液はスプレーボトルに入れると使い勝手がいいそうです。床拭き、蛇口の水垢掃除、お風呂掃除、トイレ掃除など家中の掃除がこれだけでOK。「ぴっかぴかになるから、楽しくて!」と笑顔で話すeriさん。
「ホタテパウダーを使うようになって、台所用洗剤や洗濯用洗剤、お風呂掃除用洗剤などのストックを買い続けるのが、実はストレスだったと気がついて……。しかも、市販の洗剤の香りも好きじゃないけど妥協していたことに気づきました。ホタテパウダーは長持ちするので、頻繁に買い足す必要がないし、好きな香りを加えられるので、今は気持ちよく掃除が楽しめています」
ゼロ・ウェイストに近づく、ペーパーレス生活
さらに、eriさんの生活を激変させたのは、ティッシュ&キッチンペーパーの“ペーパーレス化”でした。
「会社でもゼロ・ウェイストに取り組んでいますが、家庭用のゴミについて考えみたら、ティッシュやキッチンペーパーを何気なく使っていたことに気がついたんです。紙はプラスチックの代替品にならないと言われていますし、無意識に紙を使うことが森林の伐採にもつながっています。それで、古い布をざっくり切って縁をかがったものを“布ティッシュ”“布キッチンペーパー”として使いはじめました。家庭ゴミの量がかなり減りましたし、ティッシュやキッチンペーパーを補充するストレスからも解放されました! ぜひ、おすすめしたいです」
古くなったリネン類を切って赤い糸でかがった布ティッシュ。「面倒な人はかがらずに切りっぱなしで十分です」(eriさん)環境保護への意思表示が大きな力に
個人でできるプラスチック削減やゼロ・ウェイスト活動に加え、eriさんが強く参加を訴えるのは、署名とエネルギーシフトです。
「前編でご紹介した『あと4年、未来を守るのはいま』の署名活動と、再生可能エネルギーへのシフトにぜひトライしてほしいです。署名とエネルギーシフトの一番の意義は、国の政策に疑問を持っているぞ、私たちは再生可能エネルギーを選んでいるぞ、という意思表示になること。国民一人ひとりの声と選択を伝えることが、日本の環境保全の取り組みを大きく前進させるので、ぜひ、賛同してもらえるとうれしいです」
手をこまねいていても仕方ない
2021年はサスティナビリティをテーマにした自身で手掛けるメディアをスタート予定。また「DEPT」からは「ゼロ・ウェイストのために欲しかったけど日本では手に入らないアイテム」などを企画中(詳細はお楽しみに!)と、ますます精力的に活動するeriさん。しかしそんな彼女でも、SNSで「未来のことを考えると、暗澹とした気持ちになる」と不安を漏らしていたことがありました。
「今、前向きでいられるのは、“暗澹とした気持ちを原動力に変えるしかない”と思えたからです。ポッドキャストチャンネル『もしもし世界』のパートナー、佐久間裕美子さんともよく話していますが、悲観的なまま手をこまねいているのではなく、問題だとわかったことを喜ぼう、と。今は、解決のために全力で取り組むしかないと思っています」
環境問題を意識して、生活を「革命」するのは楽しい
eriさんが愛用する折り畳めるシリコンカップ「stojo」今回、eriさんのインタビューで印象的だったのは、ゼロ・ウェイストを目指した暮らしを本当に楽しそうに紹介してくれたこと。
「単純に楽しいんですよ(笑)。『環境に負担をかけなくて、かつおしゃれな掃除道具』を探したり、ゴミを出さないように包装紙の再利用の方法を考えたり。『これだ!』というものが見つかったり、アイデアが浮かんだりすると本当に嬉しい。パズルのピースを埋めるように、1つずつ自分が納得いくものに変えていくと、家の中がサンクチュアリになっていきますよ」
そして、「直接的に地球の環境問題を解決するまでの道のりは遠いけれど、どんなマイクロアクションでも絶対に意味がある」とeriさん。
「小さなことを見逃さず、生活を“革命”していくことは楽しいと思うんです。そこでの暮らしは気持ちがいいし、楽に生きられる。そう、思っています」
eriさんの“気持ちよく生きるメソッド”
「なければ作る」
プラスチックを家に持ち込まないというeriさんは、シャンプーとコンディショナーは固形バーを使用。「断然“持ち”がいいし、プラスチックボトルがないバスルームはすごくかわいいんです」。ですが、動物性の原料を使用していないこと、国産の原料を使用していること、天然の香料が選べることなど、eriさんが求める100点満点の商品はなかなか見つからないとのこと。そこで、DEPTオリジナルのシャンプー&コンディショナーバーを開発中だそう。 2021年にリリース目標とのことなので、楽しみに待ちましょう。
現在愛用しているシャンプー&コンディショナーバーeri(えり)
1983年NY生まれ、東京育ち。幼少期から両親の影響で古着を中心としたファッションに親しみ、現在は自身のブランド「mother」「TOWA CERAMICS」「VTOPIA」のデザイナーとして活動している。2015年には自身の父が1980年に立ち上げたヴィンテージショップ「DEPT」をオーナー兼バイヤーとして再スタートさせた。2020年には環境に負荷をかけない取り組みを行うDEPT THIRD-HAND PROJECTを始動。ビューティー、ヘルスケア、環境問題にも高い関心を持ち、精力的に活動の場を広げている。
写真提供/eri
前編はこちら
地球との共存を意識したら、自分の生き方が明瞭になった/DEPTオーナー・eri[前編]