工場の入口の壁になにげなくかかっていた杓子や調理ベラの見本。
プラスチックやステンレスの調理道具を、木の素材に一新しました。北欧雑貨の店で見かけた木べらを使いはじめたところ、軽くて持ちやすく、使うほど道具そのものが味わいのある色に変わるのが気に入って。
洗練されたもの作り日本の手仕事道具を集めた市で「宮島工芸製作所」に出会ったのはそんな折。それまで日本の杓文字や料理道具のデザインを悲観的にとらえていたのですが、宮島工芸製作所のブースには、すっきり洗練されたデザインで、使いやすい機能美も備えた木の調理道具が並んでいました。
日本の手仕事のよさを伝えるのに北欧的と表現するのはふさわしくないのかもしれませんが、外国の家庭で使われているような親しみのある形と使い心地で、たちまち宮島工芸製作所のファンになりました。
宮島工芸製作所が所在するのは、杓子(しゃくし)でおなじみの広島は宮島。江戸時代、誓真さんという僧が、弁財天が持つ琵琶の形にヒントを得て平たい杓子を考案し、この杓子でご飯を食べれば福運が訪れると広く伝わるように。また、「飯をとる」と「敵を召しとる」をかけて必勝祈願のおみやげとしても人気を博していきました。
オリジナルの杓子と調理ベラを作ろうこの1年、監修を担当しているフェリシモ「チケッティ×甲斐みのり 日本のふるさと工芸マルクト」 でオリジナルの杓子と調理ベラを作ろうということになり、宮島まで工場見学に出かけてきました。
ケヤキ、クワ、ミズメなどいろいろな素材がある中から、使い込むほど味わいのある色に変わる桜の木を選び、大小の杓子、フライ返し、バターナイフの4本をセットに。どれも使いやすい長さで、持ちやすく、もちろん丈夫。広島・宮島銘菓といえばもみじ饅頭なので、私が描いたもみじマークの焼印を押してもらって完成です。
この板をやすりにかけたら......広島らしい調理ベラ、
お好み焼きを裏返すのに便利なフライ返しが完成します。
左:工場の壁の道具たち。無口な職人さんのような様相。
右:木を調理ベラの形に切り出したあと、ひとつずつ手作業でやすりにかけて仕上げます。
フェリシモ「チケッティ×甲斐みのり 日本のふるさと工芸マルクト」の
オリジナル品として完成した調理ベラセット。
工場見学のあとは嚴島神社に参拝しました。
広島市内の「八昌」というお店で食べたお好み焼き。
よく焼けた麺が入っていて、ひと口ごとため息がこぼれる美味しさでした。
宮島の杓子は、木の目に添うようにナタで縦に割ってカンナで何度も削り、ごはん粒がくっつきにくく、熱い蒸気がたちこめる炊きたてのごはんをすくっても曲がりにくく頑丈。使用後はしっかり洗って水気を拭き取れば、しっかり長持ちします。
[フェリシモ「チケッティ×甲斐みのり 日本のふるさと工芸マルクト」]
(甲斐みのり)