「今年こそは大人の女性としての嗜み、品格ある所作を身に付けたい」年始にそんな目標をたてた方も多いはず。

「対面に及ぶには、御けわい候てあるべく候、これ第一、女子の嗜みたるべし」。
「人と接する際に、特に女性はそれなりに装う必要がある」という意味の小笠原流礼法の伝書にある一説です。

今回は、女性の嗜みの一つとして、ビジネス、プライベートですぐに実践できイメージアップにつながる小笠原流礼法の所作をご紹介します!

●そもそも「小笠原流礼法」って何?

「小笠原流礼法」とは、室町時代から伝わる、戦いを生業とする武士の中から、生まれた現代日本の作法の基準ともいわれる作法です。「作法」と聞くと、堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、小笠原礼法は、人との信頼関係を築く上で必要な「日本の伝統的なコミュニケーションのあり方」

お辞儀や贈答の所作一つをとっても、ただルールに捕われるのでなく、相手を気遣う思いやりの心が全ての背景にあります。

●「礼三息」がお辞儀の極意

小笠原流礼法には、「礼三息」という言葉があります。息を吸いながら上体を傾け、止まったところで息を吐き、息を吸いながら上体を元に戻します。

「吸って、吐いて、また吸って」の3つの息づかいを用いて礼を整えることから「礼三息」といいます。息を吸うことで、正しい姿勢を保って動作することにつながり、息を吐くことで、「間」が生まれ、お辞儀にゆとりが生まれます。

意識しないと、お辞儀と挨拶の言葉をつい同時に行ってしまいがちですが、お辞儀をし、元の姿勢に戻ってからきちんと相手の目を見て挨拶の言葉を伝えるのが、正しい作法です。

挨拶が終わっても数秒、「間」をとるよう心がけること、心を最後まで残す「残心」を意識することが重要です。

●「時計回り」が名刺交換の極意

名刺・書籍など、文字の書いてあるものを渡す時には気を使うべきポイントがあります。まず、名刺の正面を自分に向け、名刺入れからとりだし、それが確かに渡すべき名刺だということを確認します。

そして、相手に名刺の正面が向くように、相手から見てきちんと文字が読める向きに時計回りに回してから渡すという方法です。これは、名刺に限らず、贈答品を渡すときなどにも応用できます。ものの取り回しの基本は「時計回り」と覚えておくとスムーズです!

確認の必要がないとしても、まずは自分の方に向け「間違いがないように確認しています」という誠意をみせるという所作に「相手を思いやる心」が現れています。

名刺は自分の分身であり、相手の分身であるという意識で、大事な物と心得て扱う必要があります。渡す際には両手で。受け取る際には、まずは右手を出し、それから左手を出す方が、相手に落ち着いた丁寧な印象、安心感を与えることができます。


お辞儀・名刺交換と、「何をいまさら...」と思うような基本的な所作ほど、少しの心がけで相手に与える印象ががらりと変わってきます!

小笠原流礼法の基本は、「真行草」にあります。「真」の正しい作法はもちろん、「行」は相手や状況にあった行動、「草」は時にはカジュアルな装いや行動も大切だとしています。

「作法」はあくまでもマニュアルとして、それを知った上で、TPOに応じ、時、所、対人関係における自分の位置をわきまえて、どのように振る舞うことが適切なのかを瞬時に判断し、自然な言葉・行動・装いができるよう心がけましょう。

どんな場面でも、常に相手に思いやりの心を持って、失礼のないように振る舞うことを心がければ、立ち居振る舞いは、自然と美しくなるものです!

昨年は、小笠原流礼法常任理事 総師範の鈴木万亀子先生をお招きし、礼法のお稽古を開催しました。ご好評いただき、今年も開催予定ですので、ご興味のある方、一緒に学びましょう!

photo by Thinkstock/Getty Images

text by 神森 真理子(かみもり・まりこ)

パリ大学で映像・アートビジネスの勉強をし、松竹(株)に入社。ベルギー・フランス生活を通じ、「日本文化の活性化」という生涯の目標を見出し、現在は日本文化の伝道師として、日本文化・食・アートの魅力を発信するイベント企画・プロデュース・執筆・講演などを多数手掛ける。日本を学ぶ大人の学校「和塾」世話人。+ART CLUB/「食とアートの会」主宰。「銀座なでしこ会」幹事。ワインコミュニティ「OWL」主宰。フードアナリスト1級・ワインエキスパート・利酒師。【ブログ】神森真理子の『食を!アートを!日本文化を!楽しもう』。【連載】日本酒を楽しむスマホマガジン「酒ゼミ」にて日本酒コラム執筆中!【監修】現代ビジネス:安倍昭恵「対談『日本の食』を考える


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