それは『「折れない心」をつくるたった1つの習慣』や『平常心のコツ』といったベストセラーを世に送り出した心理カウンセラー 植西 聰さんの新書『忘れたいことを忘れる練習』です。イヤな記憶に対して同書では、心理学や禅の教え、哲学などさまざまな角度から90もの「忘れる方法」を紹介してくれます。
私も少女の頃、失恋をした相手から、夢の中でもあらゆるパターンでまた振られるという夢を見たものです。そのころは「夢でさえこうやって何度も振られないといけないくらい、この恋は深かったんだな」なんて浸ったことがありました。でも今思えばただの執着です。
そんな執着も、年齢を重ねるにつれ仕事の失敗や友人とのトラブルなど、夢で見るだけでは終われないくらいに種類も増え、忘れられない記憶となって積み重なっていきます。
ありがとうで、イヤなことを忘れる90通りもあれば、自分に合う方法もあるはず。
たとえば「第8章 受け入れることで、過去から自由になれる」では、「ありがとう」を使ってイヤな気持ちを消す方法を教えてくれています。哲学者ニーチェは、どんな境遇であっても運命を愛せと説きました。でもなかなかそこまで強靭な心になれないと思ったときは、この「ありがとう」が有効かもしれません。
ほかにも、「無我夢中になって、つらい気持ちを吹き飛ばす」や、「許すことで、忘れられないことを忘れる」などといった忘れるためのレクチャーや、また「すぐに忘れると、いいことを引き寄せる」といった、忘れることの利点に焦点をあてていたりも。
難しくとらえがちな禅の教えや哲学もよりわかりやすく書かれているので、身近で取り入れやすくなっています。そして、試してみたくなる。試すためには、どの記憶を忘れたいのか自問自答することになり、忘れたい記憶を自覚することが、忘れる一歩になるのではないでしょうか。
さまざまな忘れる方法を覚えておけば、どんなときでも心が軽やかになれそうな一冊です。
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