待ち遠しい天体のビックイベントですが、それは星好きな人に限ったことでしょうか? いえ、もしかしたらそんな人のそばにいる犬や猫たちも、きっとつられて楽しんでいるはず......。
星の名前にもなったアイヌ犬チロ
そう思ったのは、過去に課題図書にもなった感動の物語『星になったチロ』でお馴染み、アイヌ犬チロが登場する『白河天体観測所 日本中に星の美しさを伝えた、藤井旭と星仲間たちの天文台』を読んだから。
星好きさんの間ではあこがれの聖地とも言える白河天体観測所の天文台長をしていたチロ。望遠鏡から手が離せないみんなの代りにお客さんの応対をしたり、イベントでは広告塔としての仕事をこなしたり、隕石捜索団の団長をも兼任しながら、無類の星好きさんに囲まれて生き、亡きあとは新星の名前にもなりました。
ただ星が好き。純粋な気持ちになれる天体ショー
それほどまでに多くの人びとから愛されていたチロ。彼女の飼い主であり著者でもある藤井さんや、チロと一緒に天文台で過ごした人びとについて、作家の三田誠広さんはこう言います。
(彼らは)ただ星が好きなのだ。それは、ただひたすら名誉欲と利害関係だけで成立しているような現実世界からは遠く離れた、夢のような場所だった。しかしその夢は、藤井さんたちの現実の努力によって、一歩一歩築きあげられたものなのだ。
『白河天体観測所 日本中に星の美しさを伝えた、藤井旭と星仲間たちの天文台』P168より引用
三田さんの言うように、ただ星が観たいから自分たちの手で天文台をつくり、維持し、紆余曲折を楽しみながらも、その趣味を突き詰めた人たちです。やりたいことがあっても、つい経済的なことや世間体が気になるとき、この天文台にいた人びとの生き方が眩しく思えます。
そうして星を楽しむ人びとの姿を見つめてきたチロだけでなく、なにげない日常のなかでひそかに流星群を楽しみにしているような、そんな人のそばにいる犬や猫たちもきっと飼い主のワクワクが伝わり、一緒になって流星群を心待ちにしているはず.....。なんて想像が膨らむのも、星の魔法のひとつかもしれません。
[白河天体観測所: 日本中に星の美しさを伝えた、藤井旭と星仲間たちの天文台]
image via Shutterstock