そこで「こんなにがんばっているのに」そう口からこぼれ出そうなときに励みになる、あたたかい言葉がありました。
世界中のお母さん、がんばれ!
それは直木賞受賞作家、西加奈子さんのエッセイ集『まにまに』のなかのこんな文章から。
どうしても「頑張れ」と言いたかった。その言葉が重荷になる人がたくさんいることも、自分にはそれを言う権利がないことも分かっている。でも、今も思うのだ。
世界中のお母さん、頑張れ。
(『まにまに』P118より引用)
赤ちゃんが落としたぬいぐるみを西さんが拾って差し出すと、「ギリギリまでそのままにしとこうと思って」と言ったお母さん。赤ちゃんにおもちゃを拾って渡しても、またすぐに投げられる。それは私もよく経験しました。
余裕があるときはその遊びに楽しくつきあえるけれど、疲れてしまうと「もうすこしだけ落としたままでいよう」と思うことも。そんなお母さんの様子を察し、思わず「がんばってください」と告げた西さんでしたが、その後「もっと他に何か言えたなかったのか」「何かを言いたいと思う気持ち自体がおこがましいのではないか」と自問自答しながらもあえて「世界中のお母さん、がんばれ」とエールを送っているのです。
意外と世間はやさしいもの
子連れで誰かに注意をされたり、お叱りを受けるとつい必要以上にナーバスになって、人と目が合うと「バギーが邪魔なのかな」「泣き声がうるさいのかな」とビクビクしてしまうときもあります。でも逆にお相手は励ましたい気持ちを口にできないだけで、心では「がんばれ」と応援してくれているのかもしれません。
子育て中だけでなく仕事でもプライベートでも、どこか他人に対して疑心暗鬼になってしまったときは、この文章とともに「思うほど世間は敵だらけではない」ことも思い出したいものです。
image via Shutterstock