▼第540号
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                        2023/07/04

  夏野剛メールマガジン 週刊『夏野総研』
            vol.540
【出遅れたEVレース。「トヨタの逆襲」のルートはまだあるか?】
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《目次》
01.時事ネタキュレーション
02.先週の出来事
03.Reading the world
04.Q&A
05.Product Lab
06.Good Food Good Life
07.ビジネスモデル分析のバックナンバーをピックアップしてみた
08.編集後記

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【01.時事ネタキュレーション】
 日々のニュースも見方を変えればいろいろなことが見えてくる。当コーナーは未来を読むためのニュースを、私がキュレーターとなって解説していくものです。
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【国内ニュース】
◆レーザー通信による毎秒1テラビットのデータ転送のテストが成功、海底ケーブルが不要になる可能性
https://bit.ly/3CXGM70
〈要約〉
 チューリッヒ工科大学の研究者がレーザー通信で毎秒1テラビットのデータ転送に成功。衛星を用いたレーザー通信の実用化は海底ケーブルを不要にする可能性。

〈コメント〉
 この技術が実用化されれば、間違いなくネットワークに革命が巻き起きる。
 特にユーザーにとっては大きなメリットがある。例えば、地上のインフラは自然災害などによって脆弱であるが、衛星との通信であればこの影響が大きく軽減される。
 さらに、遠隔地や山岳地帯などでも問題なくカバーできるようになるし、従来の地上インフラでは整備しても採算が取れないようなエリアでも通信ができるようになる。

 気になるのは通信速度だろう。「衛星通信」といえば、飛行機の遅いWi-Fiサービスのイメージもある。だが、レーザー通信であれば通信速度は速いし、しかも干渉やノイズを大幅に減らすことが可能。
 これにより現在の5Gを超える通信速度は期待できる。そして、高画質なストリーミング映像や、データ密度の高い業務用アプリケーションなども可能になってくる。

 向こう数年で実現できるようなものではないが、通信の主戦場が宇宙になる未来は確実にやってくるだろう。
 その時、海底ケーブルや地上のアンテナ基地など、従来の通信インフラはデストラクションされ、過去の遺物と化すのだ。

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◆楽天と資本提携の日本郵政、取得株の大幅下落で800億円規模の損失計上へ
https://bit.ly/3Df7isZ
〈要約〉
 楽天の株価下落に伴い、日本郵政は2023年4-6月期決算にて楽天株について約800億円の損失を計上する見通し。

〈コメント〉
 損失計上というが、これは楽天の株価下落によるもので、投資のリスクの一部とも言える。
 ただし、日本郵政の特異性、つまりその公共性を考慮に入れると、この損失は何らかの形で問題視される可能性もある。なにせ、日本郵政の株主の約34%は日本政府及び地方公共団体だ。
 しかも日本郵政は過去にも海外事業での大規模な損失を計上した経緯があるため、その評価はより厳しくなるかもしれない。

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◆PayPayは「汗をかかずにもうかるシステム」か? コード決済の手数料がTwitterで物議に
https://bit.ly/3PGkuhY
〈要約〉
「PayPay」の手数料に対する批判がTwitterで話題。多くの店舗が2%の手数料が負担であると感じ、一方でPayPayはまだ収益化していない。

〈コメント〉
 飲食店の経営者にしてみれば、手数料を取ってくるPayPayに複雑な感情を持つのだろう。
 ただ、PayPayの決済手段料はクレジットカード会社の決済手数料よりも安い。さらに言えば、両替手数料や従業員による横領など現金をハンドリングする手間やリスクも馬鹿にならない。
 それと比べたらPayPayの2%という手数料も決して高くないと思う。それでも「現金」という決済手段にかかる“手数料”は無視できるということか?