岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/08/15
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2016/08/07配信「『シン・ゴジラ』のテーマを掘り下げる~ネタバレ御免の一問一答SP」の内容をご紹介します。
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2016/08/07の内容一覧
- 日本映画の長所は「役者の顔が面白い」ところ
- テロップが情報のポトラッチに
- アップが作る役者の緊張感
- 四つの層でできた『シン・ゴジラ』
- ゴジラ映画は子供向け? 大人向け?
- リセットされたゴジラ映画
- 謎のピー音はなに?
- エラから出た血が意味するもの
- 庵野音楽の詰まった庵野映画
- 「ゴジラが東京に上陸する」本当の理由とは
- 庵野秀明の「責任の取り方」
- 二世政治家のカップルと放射能の意味
- ゴジラのしっぽから生まれてエヴァンゲリヲンへと繋がっていく
- 映画にはもう“内面の闇”はいらない
- “実相寺アングル”と役者の「演技力」
- リアルな背景と抽象的なセリフの“ズレ”で痛くなる
- アニメや映画に出てくる核兵器
- 原爆を落とすべきだったのか、ダウンフォール作戦をとるべきだったのか
- 『シン・ゴジラ』のなかでの核兵器の意味
- 広島と沖縄、『シン・ゴジラ』で語られる思想
- まとめとコメント質疑
原爆を落とすべきだったのか、ダウンフォール作戦をとるべきだったのか
1945年の8月6日、広島に世界初の原子爆弾リトルボーイが落とされました。
なんでアメリカは日本に原爆を落としたのか。これが『ゴジラ』につながってきます。
僕らは8月6日が近づけば、そのたびごとに哀悼の意を捧げて、こんなことを二度と起こさないと誓って、誰が悪いのかというのを考える。
よく言われるのは、アメリカは戦争に勝ってるのに、原爆を落とした。これは東洋人に対する蔑視があるからだ、という人もいますし、戦争を終わらせたって人もいます。
たしかにアメリカに行くと、原子爆弾に反対するっていうのはちょっと変わり者なんですね。
なんでかっていうと、第二次大戦っていうのは、そのあとのベトナム戦争とか湾岸戦争とかに比べたら、圧倒的に正義の戦争だったっていうのが一般的なアメリカ人の解釈です。
ファシズム政権ですね。世界をファシストから救った良い戦争だった。っていうのがアメリカ人の考え方。なんでそんなことになるのかっていうと、もともとダウンフォール作戦ってのがあったんです。
ダウンフォール作戦っていうのは何かっていうと、日本の本土侵略作戦。アメリカは1943年のカイロ会議ってとこ、その時から覚悟してたんです。これは広島、長崎についで日本本土に、何発も何発も原爆を落として、サリンなどの化学兵器を大量に無条件にばら撒いた上で東京に侵攻しようっていうのがダウンフォール作戦。
第一段階のオリンピック作戦と、第二段階のコロネット作戦でダウンフォール作戦はできてます。
第一段階のコロネット作戦<--"第一段階のコロネット作戦"→"第一段階のオリンピック作戦"の間違いでは?-->っていうのは、ほんとうは1945年の11月1日に行われるはずだった南九州への上陸作戦、宮崎と薩摩半島の沖に上陸して、大規模にサリンを撒きながら、日本に上陸する、ということで、アメリカの軍部は25万人のアメリカの死傷者を覚悟しました。
つまり第二次世界大戦の中でも最大級アメリカの兵隊の被害が多いだろうと予想してたんですね。
次のコロネット作戦というのはですね、翌1946年3月1日にいよいよ東京の本土侵攻を考えていた。なんで最初にオリンピック作戦で九州を侵略するのかっていうと、九州を巨大な滑走路にしたかった。九州を巨大な滑走路にしてそこに1万機のB29をおいて、そっから本土に、大阪東京などを含めた日本全土に対して爆撃しようと考えていた。
なんでそんなことを考えなきゃいけなかったのか。硫黄島とかフィリピンのあたりで、日本軍の抵抗がほんとに厳しくて、これは日本人の粘り強さともいえるんですけど、逆にいえば欧米人、とくにアメリカ人を徹底的に恐怖させたんです。
なので、どれくらいしないと戦争に勝てないのか。どれくらいすると国際的に非難を浴びるのか。ってことで、日本軍は中国の戦線で化学兵器を使った。ならば我々も化学兵器までは使ってもいいだろうということで、サリンをまくことまで決められたそうです。
で、東京の上陸作戦、湘南海岸から、相模原町田ルート、今回のゴジラ第四形態のルートと同じです。っていう上陸ルートと、九十九里浜からわたってくる千葉ルートとか二方向で東京までを十日間で侵略するルートが考えられました。これはですね、100万人を超える兵隊が参加してですね、27万人、その四分の一以上が死ぬであろうという、計画が立てられました。で、ここまではアメリカの軍部の計画なんです。
ところが日本の軍部はそれを探知してたんです。オリンピック作戦のことも、コロネット作戦のことも。つまり、この全般となってるダウンフォール作戦のことを察知してたので、日本は日本で計画を練ってました。どんな計画をねってたのかというと、一億玉砕というプロジェクト。これ言葉として聞くんですけど、ほんとに計画としてあったんですね。それは男子は15歳から60歳。女の子は17歳から40歳。までの国民全員、その時の国民2600万人をすでに陸・海・空軍にいる500万人と合体して、3100万人の軍隊を作ろうとした。こいつらがひとり残らず死ぬまで戦えば、おそらく東京の、いわゆる軍の中心部だけは守れるだろうというのが一億玉砕作戦。アメリカの将兵、いわゆるオリンピック作戦の25万人と、コロネット作戦の27万人、合計52万人の死傷者予想に対して、日本は3100万人くらい、死ぬ覚悟があれば戦えるだろうということで、計画してたんですね。
ピューリッツァー賞をのちに受賞するデビッド・ハルバースタムは、その著書の中で、その時のトルーマン大統領の側近の政治家たちの、25万とか27万っていう損害をまったく信じてなかったそうなんです。おそらく500万くらいのアメリカ人の兵隊が死ぬだろう。500万人のアメリカ人を犠牲にして、1000万人以上の日本人を殺して、戦争をして、そのあと和平だ、降伏だ、といってなんの意味があるのか。ということで、原子爆弾の使用というのが選択肢にあがってきた。
1000万人以上の日本人を殺して、戦争をして、その後和平だ、降伏だと言って、何の意味があるのか、ということで、原子爆弾の使用というのが選択肢に上がってきたと。
で、どうやって日本を降伏させるのかっていうので、アメリカは三つのプランっていうのを常に用意した。
ひとつ目は何かって言うと、原子爆弾で、日本人の気持ちをくじく、です。
ふたつ目はダウンフォール作戦です。今言った、50万人かもしれないし、500万人かもしれないアメリカ人の兵隊を殺して、日本の本土侵略っていうのをやる作戦。
もうひとつはですね、ソ連に対して外交交渉させてですね、ドイツが降伏をしたら3ヶ月後に間髪入れず、日ソ不可侵条約を破って、日本に参戦してくれって言ってたんですね。
よく日本人はですね、第二次大戦が終わって、原爆落ちたらすぐソ連が攻めて来たからあれはソ連の裏切りだって考えてるんですけど。
それはまあ半分本当なんですけども、もう半分はトルーマン大統領、その前のですね、ルーズベルト大統領から延々と言われてたですね、とりあえずソ連は国際条約を破ることになっても日本に侵略をかけてくれっていうような依頼だったんですよ。
ところが、原子爆弾の成功ですね。つまり、原子爆弾の元になったトリニティ実験っていうのが1947年の7月16日にあったんですけども、このトリニティ実験でアメリカのロスアラモス研究所がですね、ネバタ砂漠で人類初の核反応に成功しました。
このニュースを聞いた瞬間にトルーマンは手のひらを返したように、ソ連に対して「いや別にソ連は日本に無理やり攻めこまなくてもいいよ」というふうに言ったんですね。つまり核兵器を手にして、これは日本は降伏するなと思ったので、ダウンフォール作戦必要ないし、ソ連の参戦も必要ないだろうというふうに思って、核兵器の使用に踏み切った。
ところが、核兵器の使用に踏み切ったら、その翌々日ぐらいにソ連が急に攻めて来ちゃったので、戦後日本っていうのはですね、ちょっと微妙な歴史の闇に挟まれるようになっちゃったんですね。
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