岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/07/25
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/07/08配信「【恐竜大特集】『ジュラシック・パーク』など恐竜映画から、実際の恐竜誕生や滅亡、発見や研究まで、すべて語ります!」の内容をご紹介します。
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2018/07/08の内容一覧
- 今夜は恐竜と映画
- 『ジュラシック・パーク』の本当と嘘
- 最大の嘘は、ティラノサウルス
- 恐竜と映画、その歴史
- 誰が恐竜を殺したのか?
- 巨大隕石の落下
- 隕石以外の諸説を紹介
- 恐竜は毒殺された?
- ブラキオサウルスは、頭の上にゾウのように自在に動く鼻があった?
- 美しい花が恐竜を殺した?
- 鳥が恐竜を滅ぼした?
- アイドル化する恐竜
- 万博で行われた、世界初、実物大の恐竜展示
- 恐竜は本当に絶滅したのか?
最大の嘘は、ティラノサウルス
でも、なんといっても『ジュラシック・パーク』シリーズにおける最大の嘘というのは「ティラノサウルス」なんですよ。
まあ、嘘が入っているという意味では、今、売られているようなフィギュアも全部そうなんですよ。ティラノサウルスの復元図とか、映像とかでも、全部、同じ嘘をついてるんですけども。
「歯が剥き出し」なんですよね。
歯が剥き出しになっている復元図は、だいたい嘘だと思ってください。これね、カッコいいからこうしちゃうんですよ。
ところが、人間って、歯が剥き出しになってないじゃないですか。ちゃんと「唇」というのがありますよね? この唇というのは何のために付いているのかというと、「唾液がダラダラと外へ溢れないため」に付いてるんですよ。
「唇がなかったら、人間というのは1日当りだいたい1.5Lの水分を失う」と言われています。人間が1日生きるのに必要な水分量が1.5Lですから、もし唇がなかったら、人間というのは摂取した水分を延々と垂れ流していくことになり、生き残れなくなってしまいます。
ティラノサウルスに関してもそれは同じはずなのに、ところが、ほとんどの復元図では、こう、牙を剥き出しにしちゃうんです。なぜかというと、ワニが牙を剥き出しにしているからです。
でも、ワニというのは基本的に水中にいる動物だから、牙を剥き出しにしててもいいんですよ。いつでも水分を補給できるから。ところが、地上にいる爬虫類というのは歯を剥き出しにしていてはいけない。そんなことはみんな知っているんですけど、この方がカッコいいから剥き出しにしちゃうんです。
もちろん、博物館によっては、置いてある復元図にちゃんと唇がついていて、牙が隠れてるんですけども。やっぱり、そういう絵は人気がないので、みんな、ついついこの歯のある方を出してしまうんです。
あとは、『ジュラシック・パーク』シリーズに出てくるティラノサウルスは、いつも全力疾走で走ってますけど、本物は走れません。そんなスピードは出せないんです。
ティラノサウルスというのは、最大でも、だいたい時速12~15kmくらいの速度しか出せなかったと言われています。つまり、人間が全力疾走するよりも、ちょっと遅いくらいの速度です。
正直言うと、この時代にティラノサウルスが食べていたであろう、トリケラトプスみたいな草食恐竜って、軒並みティラノサウルスよりもメチャクチャ速いんですよ。なので、走って追いかけたとしても、絶対に追いつけないんですね。
じゃあ、どうやって捕食してたのかというと、実はティラノサウルスって「頭脳戦」が得意だったと言われているんですよ。
(フィギュアを見せる)
これを見てもわかる通り、正面から見ても、両目共、見えてますよね。つまり、物を立体視することが出来るんです。そして、このフィギュアでは強そうに見せるために鼻梁の幅を広く作っているんですけど、実際はこの幅がもっと狭くて、脳がわりと巨大なんです。
脳が巨大で立体視も出来るということで、「かなり頭が良かったのではないのか?」というのが、現代のティラノサウルス像なんです。
なので、「草食恐竜がいるところにギリギリまで隠れてて、油断しているところにひょっこり出てきて、ガブッと食べる」というのが、ティラノサウルスの狩りのやり方であって、どちらかというとですね、オオカミとかそういう生物に近かったのではないかと言われてます。頭脳戦ですね、本当に。
もう1つ、『ジュラシック・パーク』シリーズで描かれないこととしては、ティラノサウルスというのは、育児をするどころか、こいつらは「共食い」が大好きです。
「草食恐竜が見つからなかったら、お互いを食う」という悪魔のような生物なんですよね(笑)。
(中略)
あと『ジュラシック・パーク』での嘘というと、「ティラノサウルスは吠えない」というのがありますね。
なぜかというと、ティラノには声帯がないんですよ。
まあ、まったく音を出さなかったかというと「ブオォー」みたいな音は出したかもわからないんですけど。少なくとも「ギャオォー!」なんて吠えることは、声帯自体がないのでありません。
他にもティラノサウルスというと、この小さい前足が何のために付いていたのか、いまだによくわかってないんですね。
あまりにも役に立ちそうもないから、昔は「この前足は、交尾をする時にメスが逃げないように捕まえるためなんじゃないか?」なんて言われてたんですよ。
でも、研究が進むに連れて、この前足についている爪が、かなり頑丈であることがわかってきた。なので、今度は「これは、獲物の腹をナイフのように引き裂くためにあるんだ」と言われるようになりました。
ところが、獲物の腹を引き裂くにしては短すぎるんですよね。これじゃあ、獲物には届かないだろう、と。
ということで、最近の学説ではどうなのかというと。ティラノサウルスって夜、寝る時に腹ばいで寝るんですけども。「その姿勢から体を起こす時に、よっこらしょっと、体を支えるためだけに使ったらしい」というのがわかってきています。
その根拠としては、これまで発掘されたティラノサウルスの成体の化石って、鎖骨部分の骨折がやたら多いんですよ。つまり、よっこらしょと起き上がる時に、体重が前足の部分に掛かる。この時にタイミングを間違えたから、鎖骨がボキボキ折れてしまった、ということです。
まあ、鎖骨に限らず、ティラノサウルスの化石というのは、だいたい、どこかを骨折しているんですよ。こういう所からも、もう生物としては限界のサイズだったというのがわかりますね。
今、話したように、「歯は剥き出しではない」とか、「本当は歩くことしかできなかった」というのが散々わかっているにも関わらず、なぜ間違った復元図が残り続けているのかというと。
やっぱり、恐竜学者の人って「趣味人」が多いからなんですよ。ここが、恐竜学というのが他の学問と一番違うところだと思うんですけども。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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