岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/03/21
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2019/03/10配信「映画、好きですか?オール・パペット春の総進撃」の内容をご紹介します。
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2019/03/10の内容一覧
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- 『スパイダーマン:スパイダーバース』には敵わない!
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『スパイダーマン:スパイダーバース』には敵わない!
今、映画館でやっている『スパイダーマン:スパイダーバース』を見てきたんですけど。
……皆さん! 岡田斗司夫ゼミを見ている場合じゃありません! 今すぐ見に行け! 明日には見に行け! という作品です。
何よりね、「ルック」が素晴らしいんですよ。
ルックというのは、その映画とか撮影監督独自の構図や見え方だと思ってください。
例えば新海監督のアニメでは「背景がすっごい美しい」。庵野秀明の実写だったら「魚眼レンズや広角レンズとかを多用した独特の見せ方」というのがありますよね? ああいうのをルックと言うんですけども。
『スパイダーバース』のルックっていうのは「コミック」なんですよ。それも、アメコミとか日本の漫画を含めたすべての漫画、コミックのカッコよさというのをルックにしてるんですね。
まず「絵」として面白いし、あとは吹き出しのセリフとかもアニメの中でガンガン使っていく面白さ。他にも、色使いや、日本のスクリーントーンを貼ってるみたいなエフェクトみたいなものもあって、もう、とにかく「マンガのページを開くと、見開きでドンと見える」という、あの見え方みたいな効果的な構図での撮り方をしているんですね。
ワンカットごとに、本当にうまいマンガ家のカラー見開きを見せられているようなものなんです。それが、すべてのカットにあるという、圧倒的にカッコいい作品なんですね。
まだ見てない人がほとんどだと思うので、ストーリーについては詳しく言わないんだけど。正直言って、日本のアニメの今後が不安になるような出来です。これ見せられちゃうと。
『トイストーリー』はね、不安にならなかったんですよ。「ああ、アメリカのアニメってそっちの3Dに行くんですか」って感じで。その後の『ファインディング・ニモ』にしても、『ゴーストインク』にしても、『カーズ』にしても、すごい面白くて僕も好きなんですけど、「日本のアニメとは別方向の進化だ」というふうに思っていたんです。
だけど、この『スパイダーバース』はね、日本のアニメにもモロに影響を与える……というか、影響ではなくて「衝撃」を与えるような出来なんですよ。
ただし、この宣伝ポスターを見ても、どういう作品なのか、なかなかわからないんです。
(パネルを見せる)
このポスターを見ても、それなりにカッコいいとは思うけど、すごい作品だとは思わないんですよね。
アメリカ版のポスターを見てみましょう。これね、アメリカ版の『スパイダーバース』のポスターなんですけども、日本のポスターとはだいぶ違うんですね。
(パネルを見せる)
こっちでは、今回の映画に出てくる色んなスパイダーマンたちが、ズラーッと並んでいる絵です。
『スパイダーバース』の「バース」っていうのは、まあ「世界」という意味だと思ってください。
「ユニバース」というのは、「ユニ(単一の)バース」、つまり「この世界は単一の神が支配している単一の世界である」という意味なんです。だから、誰かが死んだら、もうその人は二度と帰ってこないし、誰かが失われたら代わりになる人もいない。これが、ユニバース(単一の世界)の考え方ですね。
マルチバースっていうのは、それに対して多元宇宙。いわゆる平行世界の考え方なんです。
例えば、僕がトラックにはねられて死んだとしても、隣の重なり合っているマルチバースの世界では、トラックにはねられる寸前に、僕が靴紐がほどけているのに気がついて結び直している間に、トラックがブーンと通り過ぎて、助かっている、というふうに。
ユニバースとマルチバースの違いというのは「他の可能性がない宇宙」と、「他にも無限の可能性がある何でもありの宇宙」というふうな違いだと思ってください。
「スパイダーバース」というのは、そういう多元宇宙の中でも、いろんな種類のスパイダーマンがすべて存在する世界の集合体なんです。
それを、この映画の中では「次元歪め装置」みたいな機械によって、そんな別世界に存在した何人かのスパイダーマンが、主人公マイルズのいる世界に連れて来られてしまって活躍する、という話なんですね。
アメリカ版のポスターで並んでいるのは、すべて平行世界、マルチバースのスパイダーマン達です。
黒いコートを着ているヤツは、1933年を舞台にしたモノクロの世界で私立探偵をしている「スパイダーマン・ノワール」というヤツですね。
こいつは白黒の世界から来たので、最初、ルービック・キューブができないんですよ。「これは何だ?」とか、色がわからないような感じで。
おまけに、なぜかミルクシェイクを飲んでるんですよね。なんで、ミルクシェイクを飲んでるのかと思ったら、どうも彼の世界である1933年は、まだ禁酒法時代なので、私立探偵が酒を飲めないんですね(笑)。なので、ミルクシェイクを飲んでいるっていう設定なんですけど。
彼はモノクロの世界に生きています。
白いヤツは「スパイダーウーマン」ですね。
左の方に小さく映ってるヤツが、動物アニメの世界にいる「スパイダーハム」というヤツです。
左端は、日本の萌えアニメの世界から来た「ペニー・パーカー」という女の子です。
これらのキャラクターそれぞれは、実は自分の世界では唯一のスパイダーマンなんです。それぞれ全員が「放射能実験の蜘蛛に噛まれてスパイダー能力を得て悪と戦っている」という設定なんですが、それが全員、1つの世界へ来てしまった。
なので、彼らが1部屋に集まっているシーンは壮絶です。こういうふうになっているんですけども(笑)。
(パネルを見せる)
これ、さっき話したルックの話になるんですけど、この壁、なんかね、平面の塗りじゃなくて、スクリーントーンみたいなエフェクトになっているんですね。
あと、このマイルズというキャラのおでこも、ちょっとスクリーントーンみたいな感じになっているんです。「スパイダーマンB」というやつのおでこもそうなんですけども。スクリーントーンというか、アメリカの質の悪いカラー印刷のドットみたいになっているんですね。
こういうところからは、これを3Dの写実的なキャラクター、人形的なキャラクターではなく、あくまで「印刷物のコミックの絵」として動かそうとしているのがわかるんですよ。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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