そんな中で、先週に伝えられたFRBの地区連銀総裁3人(アトランタ、サンフランシスコ、シカゴ)による追加利上げの可能性を意識させる発言により、4月にも追加利上げ観測が浮上。それがドル買いに繋がり、ドル円相場も113円台後半まで上昇しました。
ところが、昨日のイエレンFRB議長の講演は「利上げへの慎重姿勢」表明になり、ドルは反落し、結局のところ、ドル円の111円~114円のレンジを大きく外れることなく動いている格好です。
地区の経済を注視している地区連銀総裁の立場と、世界経済との関わりも同時に重視するようになった連銀総裁との立場の違いもありそうですが、どちらにし ても今後の相場の鍵を握り続ける米国の金融政策であり、それも第一に米国の経済指標次第、加えて世界経済の状況も横目で見ての決断になっていくことになる という理解には変わりなさそうです。
米国の政策金利であるFed Fundレートの市場予想は、昨日のイエレン議長発言前の一週間は4月の利上げも6%の確率ありとされましたが、発言後は0%に戻りました。
一方、6月の利上げ予想もやや減少し、年後半から来年にかけての利上げ予想が多くなっています。今年の年末までに1回、多くて2回が一番多いのが現状です。
新年度の4月は今週金曜日からですが、この日、米国も日本も注目の経済指標の発表が盛りだくさんです。米国では、3月雇用統計とISM製造業指数、日本では、日銀短観の発表があります。
米国の雇用統計予想は失業率4.9%、非農業部門雇用者数予想中心は20万人程度で、15万人程度の予想を出しているところもあり、注目される賃金は横 ばい予想が主です。月初めに発表される米国雇用統計は、最も早く発表されるという速報性と金融政策当局FRBの設立理念にある政策目標が「完全雇用と物価 の安定」にあることからも注目されてきました。ただ、速報であるためにブレも多いのも確かです。
一方、同日に発表されるISM製造業指数が今回注目されています。2014年後半あたりから、低下傾向を示してきたこの指標が、今回は反転を示すとの予想です。米国の製造業の景況感が底打ちしたのかが注目されています。
現在まだら模様が続き、決め手に欠く米国経済指標ですが、このあたりの重要指標に好転が見られ、しかも継続性が見えてくることが追加利上げの話がテーブ ルの上に乗るためには必要でしょうから、単月の数字の好転が即早期の利上げ予想に火がつくとも思えませんが、逆に予想以下の数字となると、ドル売りの格好 の材料になる可能性があります。
日本サイドでは、経済見通しの下方修正が続き、5月のG7サミット、7月の(多分)衆参総選挙を前に、安倍政権(アベノミクス)アピールのため、財政出 動、来年の消費税2%再増税の延期または見送り、そして、さらなる金融政策追加策等も行われる可能性があります。海外から招いた世界的に著名な学者さんた ちの助言もその後方支援に使っているのでしょう。政策が出たところで市場にどの程度の効果が出て、また継続的な動きに繋がるのかという点には予想しがたい ですが、このままではマズイということは確かでしょう。
もう一度、ドル円相場に戻ると、当面は111円~114円でレンジで、上値硬く下値柔らか状態での動きかと思っています。ドル円相場を取り巻く環境は変 化しつつあり、原油価格が低下したことにより原発事故以後に激増した原油輸入代金による大幅な貿易赤字も改善したことも要因になって経常収支は黒字回復。 黒字国の通貨は高くなる、は理論にかなったことではあります。
また、米国経済一人勝ち状態が薄まり、ドルの突出した独歩高状態ではない状態もドル円の頭を重くしています。また、通貨安を牽制する世界からのプレッシャーもあります。
ただ、一方でやはり金融政策、特に日本の金融政策が半端でなく異常であること、また、それが長引くだろうと予想すれば、長い目で見て円の価値の低下が起こり、円安方向へ足を引っ張ることになる恐れがあると思います。
秋には、アメリカの大統領選もあり、某共和党有力候補が当選した時のリスク(ドル安)もありますし、誰が当選しても米国の経済政策も見えにくそうです。 また、英国のEU離れの可能性も含めて、EU内部のひび割れ等々のリスクも含めて、申年の今年は何かと騒ぎが多いかもしれませんので、大きくポジションを 傾けずに慎重に様子を見て判断しながら、チャンスを探るべき時かと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*3月30日15時執筆
本号の情報は、3月16日の東京市場終値水準のレートを主に参考引用しています。なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)