4月12日に原油相場の指標WTI原油先物相場が年初来の高値42ドル台をつけてきたことから、リスクオフが続いた相場もやっと『オン』の動きが見られました。

 一時107円台をつけたドル円相場も108円台の後半まで、日経平均株価も本日の前場終値16,300円台に戻しました。多くの年で株式が高値をつけるとされる定説5月への動きなのか、一時的な調整なのか? 

 新年度に入り、日銀短観が示した景気下振れ、企業業績の悪化懸念、米国の利上げ期待への低下、世界の首脳の一部の税逃避話漏えいのスキャンダルまで出 て、リスク取りに消極的、上値が重い状況が続きました。それでもドル円相場はレンジ内弱含みながら、心理的下限110円を何とか保ってはいました。


 しかし、弱気心理を現実の動きにしたのは、4月5日の安倍首相の米紙インタビュー記事。通貨安政策と恣意的通貨介入を否定する趣旨の発言で一気に107円60銭台まで付けることになりました。あれは、不用意な発言なのか、ある種の戦略あっての発言なのか不明です。
 その後は、政府筋、官房長官や財務相による火消し的な急激な相場への警戒発言が続いていますが、一国の首相の発言を完全否定できるはずもなく、首相発言のインパクトは市場に刻まれてしまった感があります。


 とはいえ、新年度入り1週間で6円以上という急激な円高。スピード調整で戻す動きが出ても不思議ではないということで、上方へのリバウンドが見られても 不思議ではないと思います。投機筋が相当円買いポジションを持っているので、何かのきっかけでショートカバーは十分あり得ることだと思います。
 ただ、昨年一度高値をつけたと思える相場(昨年の125円86銭)は相当の月日を経て弱体化しているため、リバウンドは限られるかもしれません。
 これまでサポートとされていた110円~111円水準が今後は上値を抑える抵抗帯として作用する可能性が強いでしょう。


 今朝発表された3月の国内企業物価指数は前年比マイナス3.8%(予想マイナス3.5%)とデフレ色が蘇ってきて、マイナス金利であろうと実質金利はマイナスではないということであれば、円が買われやすい条件が復活したことになります。
 来月の伊勢志摩サミット前に出すと期待されている経済対策、7月総選挙を意識した政策、必要なときは何でもやるという日銀の追加緩和など、市場期待に働 きかけたいイベントはあると思われますが、下値ストッパーとしての為替介入は期待できず、そして、期待が高まる政策も既に「やることが前提」の織り込み済 みになっているので余程のサプライズがないと上値の110~111円は相当タフになるでしょう。
 当面は、107円~111円での動きになると考えています。


 年初来の主要通貨の対米ドル・パフォーマンスでダントツはブラジル・レアルの13%強の上昇、続いて日本円の10%強の上昇が目立ちます。上昇した通貨 の中で目立つのはカナダドル、ノルウエイクローネ、豪ドルなど資源国通貨です。殆どが対米ドルで上昇した中、目立つのが英国ポンドの下落でした。


 ご存知のように、英国のEU離脱是非を問う国民投票が6月23日に予定されていて、今回は賛成反対が拮抗しており、離脱が現実になるのか?また、その時、相場がどうなるのかが描き切れないこともあり、ポンドに売り圧力が続いてきました。

 残留を呼びかけてきたキャメロン首相の税逃避疑惑も投票結果に影響する可能性があります。もし、離脱となった場合には、為替市場にリスク回避が起こり、その煽りで円高に影響する可能性があります。
 6月の投票が近づくにしたがって、世論動向で思惑で振られやすくなり、その影響が他の通貨にも及ぶ可能性もあります。
 対ドルでは1ポンド1.40がサポートとされてきました。歴史的にこれまで数回だけ割り込んだことがありますが、(今年3月末に一時割り込みが1.38台がありました)ほぼ、この1.40を底値として動いてきました。

 英国には、国際的な大企業、多国籍の企業が多く拠点をおき、金融街も有名です。歴史的な積み重ねがあって出来ている軒先貸しとも言えますが、離脱を決定 した場合、短期的思惑による相場への影響だけでなく、実際の英国離れの影響とその後の経済にも注目しなくてはならないでしょう。今後の英国の決定には要注 目です。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

*4月13日14時執筆
 本号の情報は、4月13日の東京市場前場終値のレートを主に参考引用しています。なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


式町 みどり拝


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)