米国の次期大統領がトランプ氏になったことも事前予想外でしたが、その後起こっている市場の「トランプ現象・トランプ・ラリー」がこれだけ大展開するとは想定外でした。結果のみならず、このポジティブ反応も想定外だったからこそ、これだけの相場に展開なったのでしょう。
11月9日から始まった「ラリー」。ここへきて、米国国民にとっての大きなイベントである感謝祭を経て、ややエネルギーの速度が緩まった感はあります。しばしスピード調整なのか、これで終了なのか分かりません。
ただ、このまま終わると、ドル相場も株式相場も11月は大陽線。それを受けて、年末年始とラリーに繋がるのか?慎重に見て対応していきたいところです。
ドル円相場は、昨年つけたアベノミクス以来の高値125.86と今年6月の英国のEU離脱ショックの安値99.02の半値112.44を優に達成して一時113.90をつけました。
格言では半値戻しは全値戻りと言われますが、終わってみたら中間的な調整に過ぎなかったということも良くあります。ドル円120円説も出ているようですが、まだ見極める時間が必要だと思っています。
大統領就任前から、市場がこれほど反応したことは、過去に殆ど例がないと言われるトランプ相場。1月20日の就任式、その後の一般教書、また2月に予定される予算教書。特に政策の裏付けとなる予算教書を見ていく必要もあろうかと思います。
通常、新しい大統領が就任すると100日は蜜月と言われます。来年の春頃から、トランプ新大統領の現実と向き合っていくことになるのではと思います。
さて、これから注目されるスケジュールは、本日のOPEC総会での減産合意の有無、2日金曜日の米国雇用統計でしょう。ただ、これによって微調整はあるにしろ、大きく相場の流れを変えるものではないと思います。
その後に控えるのは、12月の米国FOMCです。
025%利上げ確率は98%と見込まれ、既に市場に織り込み済です。
今の関心事は、来年の利上げ見通しがどうなるか?です。
来年の6月にはもう一段の利上げが行われる見通しも、50%近くになってきてはいますが、逸るのは早計。新政権の具体的な政策と実現性を見ていく必要があります。
欧州の動きにも注目です。
イタリアの憲法改正の国民投票が12月4日に行われます。結果によっては、政権が変わり現在行われている改革や不良債権で問題ありの金融機関への対策の遅れが心配されます。イタリア国債とドイツ国債とのスプレッドの広がりは、今後のイタリアへの不安が表れています。
欧州の来年の注目は選挙です。
3月にオランダの総選挙。5月にはフランス大統領選、9月はドイツの総選挙があります。自国ファーストのトランプ氏が米国で選ばれたことから、フランスの極右政党ルペン氏が注目されますが、共和党のフィヨン氏(サルコジ前大統領時の首相で経済大改革路線を打ち出している)が現在は有力視されています。移民政策を始めとして、トランプ現象の影響が、欧州の世論にどう影響するのか注目されます。
一方、ドル高が人民元安に拍車をかけています。
先週は、2008年以来の元安水準1ドル=6.92という安値をつけました。元の海外流出を懸念した当局が対外投資を含めた規制強化をするとも報じられています。
これまで、元安というと、中国経済の負の部分の連想からリスクオフ→円高を連想する向きがありましたが、今回はドル高が起因しているという発想から、元安、円安での推移となっています。ただ、トランプ新政権が選挙運動中にも繰り返していたように、就任後の政策で通貨安による米国への貿易増を認めないというメッセージを送ってくる可能性も大です。為替政策でも、トランプノミクスを見極める必要があります。
波乱の11月から年末12月へ。
トランプ相場の行方やFOMC等の注目イベントもありますが、12月の市場は欧米のクリスマスや年末の決算を控えて徐々に薄くなります。方向感なく振れやすくなる時期でもあることも心して、良い年越しに向かいたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※11月30日東京時間午後3時執筆
本号の情報は11月29日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)