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 いささか旧聞には属しますが、平成28年の9月15日に発表された金融庁の「金融レポート」について、目を通しましたので、現場で日々感じていることも含めてお伝えします。

http://www.fsa.go.jp/news/28/20160915-4/01.pdf

 まず、最近の流れを追うと2015年7月7日に金融庁長官が森信親さんに代わってから、金融庁は大きな変化をしています。


 森長官の就任後の発言をみても

・「国のために」と初志に戻って考えれば、今までやってきた金融庁の姿勢が間違っていると思うことがある。それはためらわずに変えていきます。

・トップが自分では「お客様のためにやっている」と思っていても、現場は違うかもしれない。現場のファクトを積み上げることが何より重要。

・コンプライアンスは重要ですが、あまり行き過ぎると、かえって金融機関が金融庁の方ばかり向いて創意工夫がなくなる。


 これまでの金融庁の行政の在り方を、根本から見直す必要性についてかなりの機会で言及しています。

 そして、特にユーザー(金融機関利用者)目線に立って、正しいことをやるという姿勢を明確に打ち出しています。

 その意味でも、今回の「金融レポート」は森長官がイニシアティブを取って発表した金融庁のレポートということで、私も含めて業界関係者は期待をしていました。


 金融レポートは、

1.我が国の金融システムの現状
 1)世界経済・金融市場動向
 2)我が国の金融システムの評価とその健全性に影響を及ぼしうるリスク

2.金融行政の重点施策に関する進捗・評価
 1)金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保
 2)活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の確保

3.顧客の信頼・安心感の確保

4.IT技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応

5.国際的な課題への対応

6.その他の重点施策

7.金融庁の改革
 1)金融庁のガバナンス
 2)金融行政のあり方

という章立てになっています。


 全部紹介していくと長くなりますので、今回は億近に密接な、
2-2)活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の確保

について見ていきます。


 最初に、日本の金融資産の状況を世界各国と比較していく中で、日本は金融資産が預金偏重で、運用リターンによって金融資産が増えている状況でないことが指摘されています。

 一方で、金融資産を保有する高齢者が退職金や相続で一気に資産が増加しているが、その資金を投資経験や知識が乏しい中で、どう運用するかがカギだと指摘しています。

 次に、長期、積立、分散投資によってリターンが安定的に産み出されることを指摘しています。


 極めて普通の話ですが、レポートで再度書かなければ、投資家にも金融機関にも認識されないであろうということを意識しての記述だと思います。

 その後に、日本人の金融資産ポートをリオをどのように変化させていくかについて

「家計の金融リテラシー向上」
「金融機関の顧客本位の業務運営」

の2つの視点で語られています。

 「家計の金融リテラシー」は低いのが現状なので、今後もNISAや確定拠出年金といった制度をきっかけとして、継続的に辛抱強くリテラシーを上げていく作業が必要です。

 もう一つの「金融機関の顧客本位の業務運営」については、様々な検証がされている上で、

「金融機関においては、短期的な利益を優先させるあまり、顧客の安定的な資産形成に資する業務運営が行われているとは必ずしも言えない状況にある。」

と結論付けています。


 これには、私のような独立系のアドバイザーからすると拍手喝采で、日々いろいろなご相談を受けている中で、金融機関利用者が幾度となく感じてきたことを、金融庁がはっきりとした問題意識の中で明記してくれたということになります。


 今後は、こうした問題意識を現実社会の中でどのように金融行政の中で具現化していくのかということが問われるようになります。

 その辺りは、次回のメルマガで見ていきたいと思います。


株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一


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