年初来の為替相場は、米大統領選挙終了後のトランプラリーは一巡。米国の新政権の具体的政策に注目する時期に入っています。
様々なノイズに神経質に反応してはいるものの強い方向性を伴った動きにはなっておらず、ドル円相場は111円~116円レンジの範囲内での動きが続いています。
トランプ大統領が、近々発表するとされる画期的な税制改革案への反応は今後の材料になるでしょう。内容次第で、株式市場、債券市場(特に金利上昇期待への影響)に与えるインパクトは注目されます。
そんな中で、昨日2月14日に行われたイエレンFRB議長の上院での議会証言が注目されました。ハト派(金融緩和派)と言われてきたイエレン氏のタカ派的なトーンが印象的でした。
主旨をまとめると、
・FOMC(連邦公開市場委員会(米国の金融政策決定会合))の年内複数回の利上げ実施の可能性が高いことを示唆。
・将来の利上げのハードルが低いことを示唆。
・様々な逆風が弱まるに伴い自然利子率は時間と共に幾分か上昇する、とFOMCは確信しているとコメント。
・経済の上振れリスクも強調。利上げを待ち過ぎることについて言及。
以上から伝わるのは、FRBは米国の経済を、かなり「いいね!」と見ているようだ、という印象です。
イエレンFRB議長の任期は来年2018年2月。トランプ氏は、彼女を再任しないと明言していますので、あと1年の任期となります。この間に、やるべき政策は実行するという姿勢、イエレン氏の気合いを感じます。
昨日は、アジア時間帯に、米国のフリン大統領補佐官の辞任、東芝決算発表の延期でリスクオフの動きが起きていたので、イエレンFRB議長のタカ派トーンは、金利上昇、ドル高に繋がりました。とは言え、未だレンジを抜ける勢いではありません。
FRBによる利上げ確率は、2月月初とイエレン議長証言後を比較すると、全般的に約3%程度上昇しました。因みに、3月利上げ(→0.75%~1.0%)は直近で34%です。(Bloombergデータによる)
トランプ大統領が出すインパクトが大きいので、米国に注目が行きがちですが、引き続き注目していきたいのが欧州。特にフランスです。
フランス大統領選挙は、4月~5月に予定されています。当初、本命予想されていたフィヨン元首相がスキャンダルで支持を低下させ、このところ、国民戦線(超右派)のルペン候補が世論調査で支持を高めています。
これまで、「さすがに、それはないだろう」のテールリスクと考えられていたルペン大統領誕生を一部の投資家の間では意識し始めたとの情報も伝わっています。フランスの政治リスクを織り込みつつ、ドイツ国債とフランス国債との利回り格差は拡大しつつあり、またオプション市場でも有事のドイツ国債買いを想定した買いオプションの需要が注目されています。
昨年のGREXIT、トランプ政権誕生と事前予想を覆す結果が2事例あるために、心理的にそちらに行きやすいというのはあるかもしれません。
フランス大統領候補は、フィヨン元首相、ルペン国民戦線党首の他、若手の改革派として知られるマクロン前経済相も期待が高まっています。
ルペン大統領誕生=ユーロ離脱は現実的には起こらないだろうとは思いますが、その連想はユーロ相場を動かす材料になる可能性があります。
このところのユーロ・ドル相場は静かな動きながら頭が重い展開です。各国の選挙戦への注目に加えて、前回の拙コメントでも触れましたが、ギリシャ債務のリスクも懸念材料です。欧州情勢は、為替相場への影響のみならず、市場リスクとして、成り行きを見守っていきたいと思います。
事前に懸念もあった先週末の日米首脳会談は、両首脳の親密さを誇張するような情報を見せつけられましたが、実際には裏で副総理と副大統領の副副の経済対話で進められていく印象です。今後は、副副中心に発せられるだろう情報から判断していくということになりそうです。トランプ流やり方でしょうか。
今月は米新政権の予算教書が注目材料なのですが、トランプ政権は要職人事が相当遅れているようで、ムニューチン財務長官の任命も一昨日13日でした。人事が整い、政権が本格的に始動するまで、しばし待たなければならないようです。
来月は日本の年度末。決算に関連して海外からの利益送金などのリパトリエーションがドル円相場では意識されます。当面、上記したレンジ相場が続くのではないかと見ています。
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※2月15日東京時間午前11時執筆
本号の情報は2月14日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)