選挙、台風が駆け抜けた10月も終わり、暦は今日から11月に。

 10月前半の為替市場は、月後半に予定されていた日本の衆院選結果、米国のFRB議長人事、ECB理事会が量的緩和策の出口をどう決めていくのかを見極めたいという様子見ムードが続き、その間、ドル円相場は、111円半ばから113円半ば、ユーロ・ドルは1.17~1.18台の狭いレンジ取引に終始しました。

 22日行われた日本の衆院選では、与党圧勝の結果となり、それを受けてドル円相場は一時約3か月ぶりに114円台をトライしたものの、115円という節目が意識されると売りに押され、以来113円台での行ったり来たりの動きが続きました。ローソク足で見ると、10月のドル円相場は月初始値が112.51、月末終値が113.63の陽線引けでした。

 続いて、26日の欧州中銀(ECB)理事会での政策決定は、事前予想よりもハト派で少々驚きがありました。決定内容は、来年初から量的緩和を現行の半額に減らすものの、今後9か月再延長。さらに、状況次第でさらに緩和を行う可能性も残しました。また、政策金利は維持され、再投資に関してはコミットメントの追加もあり、勇み足でテーパリング期待をしていた市場では拍子抜けした感があります。これまで上昇し高値圏にあった通貨ユーロは対米ドルで1.17台から一時1.15台後半までつけ、これまでの上昇を修正する動きになっています。大きく積みあがっていたユーロ買いの投機的ポジションは当面修正が続きそうです。

 ECBの今後の政策見直しは、9か月後の来年6月辺りの理事会で討議されることになると予想されます。なので、暫くはECBの金融政策への詮索は小休止になるでしょう。その間は、経済指標(特に賃金動向や物価動向)のウオッチに精を出すことになりそうです。

 また、スペイン・カタルーニュ独立やイタリアの選挙などの政治ネタにも注目していきたいところです。


 話題に取り上げられてきた米国FRB議長の人事は候補者が5人から3人に絞られ、10月31日にパウエル理事の指名という報が伝えられました。パウエル理事なら、現在の政策を継続するだろうという見方から、この選択には特別な反応はなさそうです。

 先週には、タカ派のテイラー氏有力の情報が入り、長期金利(米債10年物)は2.46%までジャンプした場面もありましたが、一時的反応にとどまり、利回りは直近2.37%まで低下しています。


 一方、米国FRBといえば、米時間11月1日(日本時間11月2日未明)にFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が発表されます。事前予想は、政策の現状維持がメインになっていますが、金融政策の正常化プロセスとしての12月の利上げの可能性についてヒントが得られるかどうかです。
 FOMCの前回の開催は9月でした。それ以降発表された米国の経済指標は概ね好調なので、声明文に利上げに否定的な文言は盛り込まれないと推測します。市場の見方は『利上げあり』に傾いていて、予想確率は直近で8割強となっています。

 6月のFOMC会合でFRBは保有債券の再投資を減額し、バランスシートを縮小することを決めました。先月10月から、そのバランスシート残高の圧縮が始まり、量の面での、いわゆる、金融正常化のプロセスが静かに進行し始めました。

 これが市場にどのような影響を与えていくのか?
 特に、資産価格への影響は見ていく必要があるでしょう。
 それによって、ドル相場の方向性が左右される可能性があります。これまで歴史的に経験のない大規模な非伝統的金融政策からの正常化へのプロセスは、その影響を考慮して慎重に行われるものと思われます。基本的には、金利の上昇と共にドル相場は底堅い基調で動くものと考えます。


 さて、去年の11月の米国大統領選挙から、早いもので1年が経とうとしています。

 財政拡大、税制改革などのアメリカ・ファーストの政策を打ち出したトランプ政権に対して、直ぐの反応は予想外の結果に対するショック⇒リスクオフでしたが、大胆な政策への期待からドル高、株高、債券安(10年物米国債は一時2.6%台)に変わるのに時間はそれほどかかりませんでした。
 そうして、トランプ・ブル相場になったものの、今年1月の就任式後は政策の実現性が低下しました。

 期待を繋ぐように9月27日発表された税制改革案(英語名⇒American First Tax Relief)に対して上下両院議会が財政協議に臨む方向で動き出したのは大きな一歩であろうと思います。とは言え、総論では進んだものの、項目によっては(例えば、あのメキシコ国境沿いの壁)議会での合意が難しいだろうものもありそうですし、州によって税制が異なるので、必ずしも全ての州がメリットを受けることにはならない制度面での案件もあり、詳細において簡単に合意できるかどうか楽観する向きは少ないようです。

 中間選挙を一年後に控えて、トランプ政権の大きな支持層にアピールできるような税制改革ができるのか、今後のカギを握る米議会の動向を注目していきたいところです。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※11月01日東京時間07:00執筆
 本号の情報は10月31日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
 なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


式町 みどり拝


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)