株式投資は奥の深い世界だというのは皆さんも十分に理解されているかと思います。投資する以上はリターンを得るのが目標になりますが、未来のことは誰しもわからないので、投資には絶えずリスクが伴います。
それでもリターンを求めての株式投資を続けておられる訳で、このあたりは銀行に預けていても得られないメリットを享受されて当然のことなのです。
日本人の多くは銀行に依存して生活をしています。
株式投資は長い間博打と同様の語られ方をして参りましたが、様々なリスクを分散しながら運用に努めれば比較的、安全な資産形成ができるということに多くの投資家は気が付き始めたようにも思います。
ということで3700もの銘柄が株式市場に上場している中で投資家の皆さんはそれぞれに思いをめぐらし、ご縁もあってその銘柄に投資されていることだと推察されます。
企業評価を考え、企業の未来を考え、成長期待を先読みしながらの投資を行って、時には失敗を重ね、時には大変な成果を収めそれぞれに資産形成をなさっておられる皆さんがたまたこのメルマガに辿りつき、様々なコンテンツと出会いながら運用の参考になさって頂いているものと思います。
さて、本日これから取り上げるのは「フラクタル」というテーマです。
フラクタルって何?という疑問が最初に湧くかと思いますが、ご存知でしょうか。
過去あったことはまた似たような形で起きる・・。簡単に言えば相似形。
学問的には幾何学で語られる言葉ですが、株式市場でもテクニカルなチャートなどで言われる言葉です。
*WIKIPEDIAより
フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念である。
ラテン語fractusから。図形の部分と全体が自己相似になっているものなどをいう。
株価の変動は日常知らない間にフラクタルに形成されていることを知ると、これを運用に活かせないかと思う訳です。
これがテクニカルアナリストという立場の人達の発想の原点と言えるのかも知れません。
どんな株でもIPOしてから様々な株価変動が続きます。投資家心理や企業の業績などファンダメンタルズの変化などでうごめく株価は結果としてチャートとしてプロットされます。多くの投資家が参考にすることになり相場の方向性を占う場合のコメントとなって出て参ります。
最近もまた株価が乱高下し、やれ底割れ相場だ!!日経平均2万円割れだ!!と叫ばれていますので投資家心理は委縮しがちになりますが、それも過去の株価形成になぞらえての見通しになります。
あらゆる相場商品は結果としての価格変動がチャートになって表され、それを眺め分析しながら解説を加えるプロがお見えになります。
高い時に強気をぶつかたもいれば下げた時に弱気を言う方もいます。
経済評論家の上念司氏はこうした方々に逆神という呼び名をつけて多少揶揄した言い方をしたりしています。結果として、その強気、弱気の見通しは短期的には外れることになるのですが、そうした見方が長期では当たったりもします。
客観的な経験則を蓄積されている若い投資家の皆さんにとってはベテランの株式評論家の意見になどかまっている暇はないかと思いますが、こうしたベテランの評論家諸氏がフラクタルな株価形成をベースに将来を語ることが多いのが興味深いところです。
マクロ経済と日経平均株価の相関関係があるのは当然でしょうが、日経平均3万円説も1.8万円説も満更ではない見方ではあります。過去の日経平均の推移にはフラクタルな要素がたくさんあります。
何しろ過去の日経平均は3.8万円もあったし7500円という水準もあった訳で、その間に小さな変動があってその時々の株価形成がなされてきた訳です。
時価2.1万円にはそれなりの意味があるようで、もしかしたら皆さんの資産形成にとっては余り意味がないのかも知れません。
日経平均が3.8万円の時に売って7500円で買い戻せば良いではないか。または7500円で買って2.1万円で売れば良い・・。などと言ってみても仕方がない世界です。
とは言えフラクタルな株価形成があるからこそ、そこに売買の原動力が湧くことになります。
もしかしたらあの時のパターンと一緒だからここは買いなのか・・・。
もしかしたらあの時の天井のパターンと似ているからここは売りなのか・・。
などという経験則から来る投資の判断が下されることで相場が変動することになるのかも知れません。
全体相場よりも個別銘柄には一段とそうした経験が生かされることがあります。
過去の類似を求めて高値から1年以上も下落し続けてきた銘柄をピックアップして打診買いを始めた投資家や長期に動かなかった銘柄に待ち伏せ的に仕込んでこっそり楽しむ投資家もお見えかも知れません。
また、実際にはフラクタルな株価形成をリアルに再現して仕掛けをする投資家だってお見えなのかも知れません。
投資の発想は自己責任の下、原則自由です。美人投票なので市場の潮流を捕まえるのが先決とすべきか、自らが潮流を作り出すのか投資家のパワー次第ですが、過去あったことは一定期間を経て再現されるという考えを基に取り組まれるのも面白いのかも知れません。
フラクタルは心理学でも用いられているようですが、図形に留まらず、一定の業績変動パターンと株価形成においても関連性があって応用が可能だと思われます。
筆者がよく引き合いに出すテノックス(1905)なども滅多に起きない予期せぬ工事の不具合で今期の業績を大幅に下方修正(予想経常利益の半分)した結果、株価は1000円後半から921円まで一気に売られてしまいました。
本来なら経常利益が半分となれば株価も半値に落ち込むか心配されたのですが、そうはならず、結果としては過去のフラクタルなパターンとなって株価形成がなされました。この場合は昨年11月高値1355円からの下げパターンに基づく株価形成が順当になされたと言っても良いかと思います。
一方で920円台で投資した投資家は同社のバリュー価値がベースにはなっているのかも知れませんが、2015年8月の高値913円から2016年2月安値532円、その後の1年9か月に及ぶ上昇パターンを思い描いたのかも知れません。
つまりいずれもがフラクタルな変動をベースに投資家が判断した結果の株価形成となったと言えます。
なお、同社の場合、長期的には1991年の高値8700円形成時に対する株価の位置と収益水準の関係が気になるところです。
こうした事例は随所に見られます。
最近では筆者が年初のセミナーでお話したバーチャレクスHD(6193)が1月に続き3月後半もフラクタルな株価形成となっています。短期的な変動が周期的に起きるパターンであり、ストップ高後の株価上昇といった心理的なフラクタルを醸成した動きになっています。
株価はフラクタルな変動を見せるという認識があれば一定期間ごとに株価の位置と出来高を確認しておけば面白いという認識ができそうです。
上場した後の何気ない株価変動は結果としてフラクタルな形のパターンで中長期の投資判断に活用できそうですのでぜひ皆さんも研究なさってみてはいかがでしょうか。
(炎)
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