米国の金利上昇が続いています。
10年国債は2011年7月以来の約7年ぶりに終値ベースで3.07%をつけました。
株式市場は、金利上昇への嫌気もあり、反落。
為替市場は、金利の動きに相関してドル高反応を強めました。
昨日5月15日に発表された米国の小売売上高が2か月連続プラスであったこと、加えて3月の数字の上方修正への反応で金利上昇の動きが加速しましたが、アジア時間帯から米債利回りの上昇の動きが出ていました。弾みがついている印象です。
4月27日に発表された米国の第1四半期のGDP速報値は、前期比年率+2.3%で市場予想よりも良かったものの、昨年の第4四半期の+2.9%からは鈍化を見せました。
一方で、インフレ率は、原油高の影響もあって高止まり傾向です。
この状況から、金融政策正常化プロセスである政策金利上げは今後も予定通り行われ可能性が高いと思われます。
これで、さらに賃金の上昇率が伸びてくると、景気にもプラス材料となり、金利上昇に拍車がかかるのではないかと思います。引き続き賃金上昇率には要注目です。
加えて、財政政策のファイナンスとしての国債発行(主に短期債)も需給面では見逃せない点と言えます。
米国の金利上昇が主な背景となって、為替市場ではドル高の動きとなっています。
年初からの主要通貨の対米ドルパフォーマンスもほぼドル全面高の動きです。(年初112円スタートのドル円は未だ円高ではあります)
ドル高の動きになった背景は金利高の他、欧州景気の回復が調整段階になったことにも起因しているでしょう。昨日発表されたドイツの第1四半期GDP値は前年比+0.3%で予想の+0.4より低い数字でした。内需は良かったものの、ユーロ高の影響のせいか、輸出が落ちました。
昨年後半から欧州中銀の金融政策正常化プロセス期待によるユーロ高の調整によるドル高ユーロ安傾向に、米金利高に相関したドル高が加わったものと思います。
ユーロの場合、イタリアの政治リスク(ユーロ離脱を主張する五つの星運動が選挙で優勢となったこと)、所謂ポピュリズム政権誕生によるリスクを懸念する向きもあります。
欧州中銀による金融政策の正常化は今後もプロセスを踏んで行われていくものと思いますが、過度な期待でユーロが上昇した調整が、ドル金利高の影響も伴い、もう少し続くのではないかと思います。
さて、ドル円相場は昨日、重い壁と思われていた110円乗せとなりました。円の場合は、ドル金利への相関と共に日本企業の海外企業M&Aの需給面の影響を気にする向きもあるのか、ドルの下値が固くなりつつあります。
米国のイラン核合意破棄等の中東情勢への懸念にもリスクオフ・円高に反応する度合いが低下しています。
為替相場は様々な要因と相関するわけで、金利差だけで動くものではありませんが、超金融緩和政策からの出口への距離が遠い日本と、利上げとバランスシート縮小という政策正常化から次のステップへ行こうとする米国という図に変化が起きない限り、基本的にドル円相場が大きく崩れる可能性は低いものと考えます。
一方で、ドル高による負の影響が出るとすれば、新興国ではないかと思います。
新興国通貨安のうち、地政学や政治要因等の複合的要因で最安値更新を続けるトルコ・リラ、通貨大幅安で緊急利上げや通貨防衛策を強化しIMFと借入交渉をしているアルゼンチンのペソは、それぞれの国の要因で売られているとも言えます。
ただ、新興国全般を通してドル高が過度に進むとその国の経済への影響は大きく、世界的にもリスク要因になってきたのは、歴史に例を見るところです。
ドル金利の上昇は、新興国のドル借入の負担を増加させます。金利負担やドル不足による企業倒産リスクにも繋がりますので、この点についても注意してみていく必要がありそうです。
6月は、12日の米朝首脳会談が最も注目されますが、欧米では中間決算期でもあります。調整が入りやすいことも考えて対応していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※5月16日東京時間14時執筆
本号の情報は5月15日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)