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地方創生のテーマを掲げる企業の評価 その1
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地方創生のテーマを掲げる企業の評価 その1

2018-12-19 01:18


     株価の長期低迷が多くの銘柄で見られます。

     株価が低迷する中で上場企業から発信される情報の乏しさが投資家にリスクオフの行動を取らせてしまいがちになるのは過去も現在も同じこと。同時進行的に様々な上場株が下落歩調を辿ることで多くの投資家は手に負えない状態になってしまいます。

     株式で保有していれば資産がいつの間にか目減りしてしまう。上がらないなら株を売っておこうとする投資家が日々登場し、売りを繰り返してしまう。


     本日久々に取り上げるサイネックス(2376)株もその典型的な銘柄の例です。

     サイネックス(2376)という企業は地味ながらどこか面白そうな事業を展開しています。だから株価が低迷している時期にこそ皆さんにもその評価を考えて頂きたいと考えます。


    [サイネックス株の行方]

     時価703円で直近安値700円を明日以降切りそうな位置にある低迷状態の株価。2015年に地方自治体が展開する、ふるさと納税受付代行サービスに参入し話題を集めたことで高値2619円をつけましたが、その後は調整の一途。2017年にもその前の安値680円から1298円まで上昇したことがありますが、その後は2年近い株価低迷の中にあります。

     ここまで下げれば鬼に金棒。もうボトムだろうと思ってもまあ、よく次から次に売りが出る。時価総額は既に保有現預金(40億円)並みの水準。
     さほどの利益成長もしていないのに配当性向は20%以下の年12.5円の配当金を実施。株価が低迷していても配当利回りが2%以下だから株価が低迷しているという見方もあるが、儲けたお金を内部留保以外、何に振り向けてきたかが問われる。

     投資ストーリーはユニーク。同社のように地方創生をど真ん中のテーマに掲げる企業はなかなか見出せない。とても息長く自治体とのおつきあいの中でサービスが展開できる点は地味な成長しか目先はないとしても投資家にとってはじっくりと評価していける投資対象となる。

     全国には1700余りの地方自治体があり、東京への一極集中、少子高齢化の中でどうやって存続、維持していくかを真面目に模索していることが時代背景にあります。

     上場したのは2003年11月。今から15年前の今頃です。
     筆者が取材を開始したのが上場して間もない頃から。現在とほぼ同じ株価水準の公開価格700円でIPO(公募40万株・調達額2.8億円)した後、2004年4月に1730円の高値をつけたがその後は株価低迷。上場して5年後の2008年10月にはリーマンショックで株価は201円と言う安値をつけました。すべてが厳しい時代でした。
     700円で投資した投資家が売らずに放置したとして、15年間経過して得たのは年5円(2013年3月まで)から12.5円の配当金のみ。上場後、合計で100円分の配当金は得られたと考えられます。
     15年間で合計で16%程度の配当金が得られたことになるが、これでは1年当たりは1%の配当金にしか過ぎない。これでは寂しい限りですね。

     でも今から10年前の株価が200円台の時代に投資した投資家は75円分の配当金と500円近いキャピタルゲインが得られたことになります。ですから株価の位置でリターンが変わってくるということになります。

     また、株価が安い時期に投資して高値水準2000円から2600円で売却できたなら大きな累計55円程度の配当金に加え10倍以上のキャピタルゲインを得るチャンスがあったと考えられます。
     但し、これは今だから言えること。実際にはそんなにうまくはいかない。


     直近の投資家は株価の変動に敏感だ。
     株価が下落トレンド続きでは関心が向かない。
     700円の株価は上場時の株価と同水準。

     上場時(2004.3期)の業績は売上高88億円、経常利益4.9億円だったことを勘案すれば今期の売上高137億円、経常利益6.4億円がすこぶる成長したとは言えない。
     売上は伸びているが利益成長が見えないことがネガティブに映る。


     同社の村田社長は上場後の説明会で売上高200億円、経常利益20億円を目標として掲げていたが、今は口にしなくなった。
     それでも先日、面談した際は年商について長期で1000億円企業を目指すという。にわかには信じ難い目標だが、現在の若手社員の目標になる象徴的な数字となりそう。

     従業員数は連結ベースで864名。
     株価の低迷時こそインセンティブ制度を実施し業績目標とともにストックオプションなどの付与が欠かせない施策となるが、そこまでのアイデアを実践するには至っていない。

     発行済み株式数は647万株でこのうち浮動株は19%、123万株となる。
     金額ベースでは8.6億円にしか過ぎない。大口投資家が数人集まれば浮動株はすぐに吸い上げられてしまいそうだ。

     ただそうした行動を取るに足るだけの魅力があるのか、オーナー依存型の経営が続く限りは魅力に欠けるのが現状だ。

     かつてはIT担当の専務が強烈な個性の持ち主でヤフー社との事業提携をリードしていた時代があったがその専務が病気で退職されたからは完全に元の紙媒体中心の経営に戻ってしまった感がある。


     現在の株価低迷を考える時、出てくるのが保有していた自己株を1200円近い高値で一般投資家に売却したこと。その後の株価は下落の一途。IRに注力する訳でもなくただ株価下落に任せるまま時間が経過してしまった。

     これでは一般投資家も怒るでしょう。
     高値圏で売り出した罪を会社側が負っている。このことを払拭するには業績の一段向上が不可欠。しかしながら現在の事業モデルで実現できるのか心許ない。業績向上への確信が持てないのです。


     最近になって同社は保有する現預金を使って不動産投資を活発化しています。

     かつて60億円近くあったキャッシュは細かく、M&A(熊本のサンマーク、エルネット、パズグラフなど)に投じたり京都の賃貸マンションなどに投資しています。

     その結果、保有不動産が増加、現預金は純粋な本業への投資ではなく未来の収益が不確実なM&Aや不動産に向かっています。銀行からの紹介などがあってのこうした投資ではありますが、過去もそうであったように失敗に終わる可能性、リスクも感じてしまいます。

     経営陣からは余計なお世話と言われそうですが、過去の投資がいつの間にか失敗に終わり、あやふやなまま反省もなく過ぎてしまったことが記憶として蘇ってきます。
     熊本のサンマーク社の地方誌「ナッセ」の苦戦がさりげなく伝えられていますが、その詳しい状況と対応策は聞こえてきません。

     また、最近の不動産投資でのリターンは投資額の割には小粒です。リスクの割にリターンが限られているのであれば即刻、物件を手放すべきです。

     現預金はもっと本業の成長のために使うべきだと筆者は考えますが、これまでのところ明確な投資が語られたことはありません。
     本社の移転を含めて本社近くの土地(三ツ星本社)を購入して再開発するという話が昨年来起きていますが、いまだにリリースされていません。
     四季報に出ている話がなぜ会社側から正式に出てこないのか、とても疑問に感じています。


     そうした疑問点はまだたくさんありますが、それは次回にまたお示ししたいと思います。
     24日のクリスマスイブ、オクチカ座談会ではこうした株価低迷気味の銘柄の投資ストーリーを考えてみたいと思います。
    (申込19日まで。https://goo.gl/3Z7Eqw


    本日の株価703円。時価総額43億円。


    (炎)


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)




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