宇宙最大の神秘、ブラックホールが話題になっている。映像でその存在が見えるようになったからだ。ブラックホールの存在は宇宙を語る際に必ず出てくる話だが、余りに途方もない話なので、結論はその向こうには何があるのか?といったことで永遠の謎で片付けられてしまうが、かつてに比べればかなり身近な存在になったと言える。
一方、株式相場にも宇宙の神秘と同様にミステリアスな世界が存在する。
この話をすると私に対し様々な反論が寄せられるのかも知れませんが、まさにミステリーと言って良さそうないくつかの現象を披露しておきたい。
1.日経平均は狂った指標
平均と言うと何やら昔、小学校で習った算数程度の知識で十分に理解できるそれこそ単純に(A+B+C+D)/4と言うような式で計算できるものなのだが、225の銘柄で構成されている日経平均という指数は今さら言うまでもないが、日本を代表する民間最大の経済新聞社である日本経済新聞社が独自の基準で選んだ225の銘柄で構成される日本を代表する株式相場の指数であると言うのは誰もが知っている常識。
ただ、この指数が225銘柄の株価を単純に合計して225で割ったものではないことについては十分に理解されないまま、日常茶飯事で使われている。
その算出方法は225銘柄ごとに50円額面相当に換算したみなし値(皆死ねという不吉な言葉になってしまうが、これは今回は無視しておこう)が計算され、その単純合計を基に時々行われる銘柄入れ替えという作業のたびに変更される除数と呼ばれる値で割って算出される。これ以上を本欄で解説しても致し方ないので、その詳細は俺株などの分かりやすく解説されているサイトをご覧ください。
ここからが本題だが、こんな算出方法で計算される日経平均は先物取引を行う方にとっては関心の高い指数だと言えるが、一般国民にとっては「あっそう。それがどうしたの?」と言われそうなぐらい普段の生活とは関係のない経済指数なのだ。
実に奇妙なのは指数の変動がみなし値の大きな銘柄の株価変動に影響を受けやすい点だ。
225銘柄の中で最大のみなし値はファーストリテイリング(9983)の64350円。この後にソフトバンクグループ(9984・株価の3倍)、ファナック(6954)、東京エレクトロン(8035)、KDDI(9433・株価の6倍)、京セラ(6971・株価の2倍)、ダイキン(6367)、テルモ(4543・株価の4倍)と続く。
225銘柄のみなし値ランキングの終わりの方には、みなし値がわずか38円の双日(2768)やユニチカ(3103)、スカパーJSAT(9412)、日立造船(7004)、東京電力(9501)などの100円以下のみなし値銘柄が存在していて、一応形式的に日経平均に採用されている。
一応と言うのは、これらのみなし値の低い銘柄の株価が上がろうと下がろうとほとんど影響しないからだ。極端なことを言えば、今こうしたみなし値の低い銘柄が倒産したとしても日経平均にさほど大きな変化は与えないということになる。市場では日経平均への寄与度の大きなみなし値の上位銘柄を話題にしても下位の銘柄が話題になることはほとんどないと言って良い。
それにしても柳井氏率いるファーストリテイリングと孫氏率いるソフトバンクグループが日経平均の15%を構成しているという点はまさにミステリーと言うしかない。
逆に言うとこの2社に良きにつけ悪しきにつけ何かあれば大変な混乱を来すことになる。しかもこれらの銘柄の浮動株は自社株買いや日銀によるETF購入などもあって極端に少なくなっている。投機筋にとってはこれらの上位銘柄を基に投機的な売買がしやすいということで、株式市場全体の波乱にもつながる要素を含んでいる。
冒頭に掲げた狂った指標と言うべき日経平均はメディアが伝える株式指標の中核であり、昨年末に見られたような投機的な変動を伴いやすいと言える。
先般、このみなし値最大のファーストリテイリングが上場来高値を更新し2番目のソフトバンクGも戻り高値を更新したという話があった。その結果として日経平均が2万2000円台に乗せ上昇傾向を鮮明にしてきたとされる。
ソフトバンクGの株価は予想EPSに対して、PERが6倍台と割安感はあるので理屈はつくがカリスマ経営者である孫社長流の目利きを背景にした投資銀行的な存在なので実際の評価は投資対象次第で変化してくる。
一方で柳井氏率いるファーストリテイリングの今期予想PERは、40倍近い水準となっている。これらの後に続くファナックや東京エレクトロンも世界的なロボットや半導体製造装置メーカーとして収益力を高めているが株価はこうした状況を背景に形成されているものだと割り切るべきだ。
こうした225採用銘柄のみなし値上位銘柄の株価上昇の反面で多くの銘柄は相変わらず放置され続けている。つまり日経平均の動きが日本株の実体を表しているという錯覚は捨て去る必要があるだろう。
2.赤字銘柄にマネーが吸い取られる
夢を追い続けるのが株式市場とは言ってもこのところの創薬ベンチャーの株価上昇はかなり過熱気味だと言える。創薬ベンチャー以外の赤字企業には厳しい評価をするくせに、創薬ベンチャーには触手が動く。ついこの間まで見向きもされなかった開発先行型の創薬ベンチャーがIRの仕方だけで派手に動いている。
また、IPOしたばかりの事業規模が小さな銘柄も夢が先行して株価が人気化する事例が多い。IPOしたばかりの銘柄は需給が良く短期的な売買で成果が上げやすいのがその背景にある。
これとは裏腹に高収益企業なのに頭をかしげるぐらい評価の低い企業も多い。
昨日説明会のあった企業(敢えて名前は伏せておく。但し筆者の有料メルマガでは明らかにする予定)は今期も3割程度の増益で経常利益100億円を見込むが、PERは5倍にしか過ぎない。配当利回りだって3%はある。
でも評価されない。
株式市場は2極化が顕著で赤字でも人気がある一方で、大幅増益でも不人気だという構図が市場の潮流となっている。これもとても不思議な現象と言える。
3.保有現預金よりも時価総額が小さな企業が存在する
企業評価は過去から現在に至る企業業績と未来の成長性予測が根幹をなすが、財務内容を吟味していると時々、キャッシュリッチな銘柄と出会うことがある。
しかも時価総額がその保有する現預金よりも小さいという銘柄が結構多いように思われる。つまりこれは企業及び企業経営者の無能さへの低評価だとも言える。
こうした銘柄を保有する大人しい投資家は早く何とかしろと言わないとならないのだが、今年も株主総会は何も起こらないで済んでしまうだろう。
リスクを取らずにいればリターンもない代わりにリスクも小さいと考える投資家が多いのだろう。株価が低迷していても文句が出ない大人しい投資家が日本には多いのかも知れない。でもモノ言う株主は水面下で動いているとも言えます。
縁あって経営をされているオーナー以外のプロ経営者の皆さんはバランスシートの中のキャッシュをどう使っていくのか、これからの課題だと言えます。
日本企業にある豊富な眠れるキャッシュをいかに活用していくかで日本経済全体も活性化されてくる。ミステリアスな時価総額が物語る日本企業の実体を知ると投資家は多少でも企業に対して発言する勇気を持てるだろう。
まだまだ謎の多い日本の株式市場。
筆者は謎解きをしながらこれからも日本の株式市場をクールな目で見ていくことにします。
(炎)
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