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~ビックカメラを覗いて思ったこと~
アナリストですから、量販店にはよくいきます。
変化を見るためです。
今日いきました。有楽町のビックカメラです。
どの棚がどれだけ広がった。
値段は下がっていないか。
どのメーカーが元気になったか。
セールストークはどう変わったか。
などなど。
売り場を見ても、企業の考えやマーケティングが理解できるということです。
■ブランド戦略■
今回は、もう少し、違う視点で製品を眺めました。
フラットパネル。ちょっと不思議だったのは、松下は、ヴィエラ、ソニーはベガとかいう名前をつけています。
でも、TVのどこを見ても、松下はパナソニック、ソニーはSONYのロゴしかテレビ本体には印字されていません。
(ソニーは、大型の液晶やPDPには、WEGAのロゴがあるが、小型液晶にはロゴがない)
どうして、ベガとか、ヴィエラとかそういう名前で宣伝しているのでしょうか?
ベガやヴィエラという名前は必要なのでしょうか?
ブランド戦略は、企業にとって重要です。
特に、フラットパネルディスプレイなどは、なかなかはっきりとした違いが消費者にわかり難いという部分があります。
例えは悪いのですが、まったく中味が同じでも、ブランドによって価格に差がでてしまいます。ブランド価値が重要になるわけです。
高い値段がつけば、利益率が高くなる。だから、ブランド評価を高めることは大事です。
ブランド戦略は、各社によって違います。
ソニーは、伝統的にサブ・ブランドでソニーイメージをドライブするという戦略をとっていました。
ソニーというブランドは、「ウォークマン」というサブ・ブランドの認知度が上がることによって、ソニー自体の評価が高まります。
または、プレイステイションというサブ・ブランドのヒットによって、ソニーブランドの質を保っている。
ところが、サブ・ブランドがあまりにも多すぎると、ひとつひとつのサブ・ブランドに投入できる費用が小さくなり、何をやっているのかわからない状態になります。
また、いまは、グローバルに製品を同時に投入するということが当たり前になりつつあります。
品種ごと、地域ごとのサブ・ブランドを構築していくのは、効率が悪いのではないでしょうか。
グローバルなひとつのブランドで展開するのが一番効果的です。
たとえば、パイオニアは、パイオニアというブランドでPDPやDVDを販売していますし、サブ・ブランドはありません。
Pure Visionという商標はあるようですけど。
ただ、パイオニアは、キャンペーンを今年張りますが、かなりグローバルに統一されたコンセプトになるようです。
結果が楽しみです。
SAMSUNGも同様です。三星のテレビは三星です。サブブランドは見当たりませんでした。
この数年で、もっとも認知度と価値が向上したブランドは三星ですから、三星のブランド戦略は、やはり見習うべきところは多いはずです。
しかし、改めて、松下は、サブ・ブランドが多い。
海外のナショナルをなくして、整理をしているところですが、悪い方向にはないと思います。
DVDレコーダーに、ディーガ(DIGA)というサブ・ブランドをつけています。
世の中で、果たしてどれだけの人がDIGA(ディーガ)を知っているでしょうか。
松下は海外も日本もDIGAで通しているからまだましな方です。
ソニーのDVDレコーダー。スゴ録。このサブ・ブランドは、日本でしか通用しません。
ブランドを構築しようというとき、グローバルな視点に立って、ブランドイメージを高められるかは、製品の質にもよりますが、効果的なブランド戦略が求められているのではないでしょうか。
たとえば、松下は、昨年、世界同時発売という業界の常識にチャレンジして成功しました。
家電の世界の同時発売という荒業は、グローバル・ブランドの確立に一役買う形になったと思います。
製品投入までのスピードが勝負の今、ローカルなサブ・ブランドを投入するよりも、SAMSUNGやパイオニアのように、自社のブランドをもっと効率的にアピールする方が上手であると感じました。
ローカルなブランドは、いい変えるなら、地域のニーズに合ったものを投入するということでもあり、一方的に批判されるべきものではありません。
ただ、ブランドも投資の一種ですから、投資効率の面からは、単一ブランド戦略の方が、効率がよいのかもしれませんね、というぐらいのことです。
■まとめ■
| 長所 | 短所
グローバルなブランド|宣伝効率的が高い |失敗したときのリスクが大きい
ローカルなブランド |地域のニーズに合う|ローカルなイメージ
■インフォシークの居酒屋でサブブランドを議論しました■
居酒屋での議論です。返信してくださった方々、どうもありがとうございました。
※編集部注 掲示板居酒屋はinfoseek終了に伴い閉鎖しました。
~ama1998さんからのお便り~
商品特性を分かりやすくするためのネーミングとして考えるとソニーのスゴ録というネーミングは、分かりやすいと言えるのではないでしょうか。
コニカの素肌美人、レナウンの通勤快足などのように、消費者向け製品の場合、一目で商品特性がわかるものを考えるのも大事だと思います。
また、サブブランドを立ち上げる場合は、私の印象ではメインのブランドイメージが強すぎるため、それとは異なるブランドで新たなイメージを築くものと考えています。
ここ最近の有名なものでは、花王の場合、花王のブランドは、大衆的なイメージが強すぎて、高級シャンプーには向かないので、ASCIENCEという新しいブランドを立ち上げ成功しました。
HPには、ブランド名が書いてありますが、CMでは、花王の文字は一切出てきていません。
他にも、アルマーニとかは、逆に高級すぎてイメージを潰すので、大衆的に新たなブランドを作るといったように、外国のブランドでも、サブブランドを使っているところは割とあります。』
~hiroyuki21さんからのお便り~
サブブランドの意味は?
全くの個人的な考え方ですけれど
そこには企業の「逃げ」の部分とイメージ戦略の融合があると考えています。
例えば、松下の場合、松下という名前のブランドは存在してないですよね?
家電の「ナショナル」と、AVの「パナソニック」これは二つともメインブランドなのでしょうか? それともサブブランドなのでしょうか?
私の考えは二つとも松下のサブブランドであると思います。
これは大事なイメージ戦略を担っている部分であるからです。
ナショナルブランドのテレビは、あまり買いたくないですし、パナソニックブランドの冷蔵庫も電子レンジも買いたくないです。
では、その次のビエラ、やディーガはどういった役割があるのか?
そこが重要になってきます、確かに、ある意味無くてもいいのかもしれません。しかし、そこにブランド名をつける事により我々が意識する事があります。
「何か新しい変化が起きたのだ」とそれは「進化」ではなく、「変化」が。
言葉を言いかえれば「いろんな意味でのイノベーション」を意識するのではないでしょうか?
そして、あるサブブランドで失敗してもそのブランドを止めてしまえば失敗は取り返しの付かない失敗にはなり得ません。
しかし、サブブランドが無い場合、失敗は即、会社自体のイメージを損なってしまうのです。
これが「逃げ」の部分です。
この、例が分かり易いのがアパレルのブランドではないでしょうか?
松下やソニーのブランド戦略はブランドの分散投資でパイオニアは一つのブランドへの集中投資であるわけです。
どっちがリスクが少ないかは議論の必要が無いのではないかと思います。
~中略~
今回ソニーはDVD&HDレコーダーを3種類投入しています。
当然ブランドは3つです。
PSX、スゴ録、コクーンこれはそれぞれ目的も性能も違うものであると。
さらに、スゴ録は日本国内でのみの発売であるローカル製品だといっておりました。』
議論に参加していただいた方々、ありがとうございました。
■議論して、理解しあう■
このような議論がネットでできるということは、ある意味、10年前は思いもよらないことでした。
あらためて、インターネットのすばらしさを痛感します。
とくに、個人投資家のみなさんは、慢性的なアイデア不足と自信不足に悩まれていると思います。
ネットのコミュニティーの質を、直接的なオフ会などを通して、人間的な温かみのあるコニュニティーへと、どうやって昇華させていくのかが、今日の課題ではないでしょうか。
ソニーの場合は、歴史的に、トリニトロンやウォークマンというサブ・ブランドが世界を席巻した成功体験があります。
そういう歴史も、企業のブランド戦略の一部なのかもしれません。いまでも、ブラウン管テレビにはトリニトロンというロゴを見つけることができます。
■ブランドの差■
ブランドが、株式投資にどういう意味があるのか。
前々号で、デルの液晶テレビの話をしました。
ユーザーからすれば、品質と価格の関係は、狭いものです。
企業からすれば、品質の差を価格の差に大きく反映させたいはずです。
企業:品質を過大評価する傾向
消費者:品質を過小評価する傾向
パイオニアのPDPは、韓国勢よりも高い値段がついています。
シャープの液晶テレビは、他社よりも高い値段がついています。
これは、品質の差が価格に反映されているよい例です。
しかし、品質の蓄積でもあるブランドは、どうでしょうか。
たとえば、同じコスト、同じ品質であっても、ブランドが違うことで、店頭価格が違う場合があります。
ローカルなブランドを投入しても、それが消費者にお得感を与えているならば、価格面で有利な戦いができます。
エプソンの「つよインク」は、日本で特に強いエプソンならではの戦略です。
これはローカルなブランドですが、日本市場がドル箱の同社にとっては、宣伝価値は高いのです。
「つよインク」は、実は、染料タイプも多数あり、じつは、顔料ほど、耐久性が強いというわけではありません。
既存のインクに比べて、多少は強いという程度のものです。
それを「つよインク」で統一するのは、消費者にとってはやや誤解を生みかねない表記です。
しかし、現に、その戦略は短期的には成功したのです。
そして、染料比率を徐々に下げることによって、その誤解は、解けていく。
そういう上手なブランド戦略です。
品質とコストが同一であれば、やはり、ブランドが重要ということになります。
よいものを投入したタイミングで、一気にキャンペーンをかける。そして、シェアを一気に上げる。
こういう戦略は理にかなっていると思います。
そういう意味で、フラットパネルは、非常に、ブランド価値が重要になってくる市場だと思います。
なぜならば、台湾の画像処理ICをつかって、韓国のパネルをつかって、テレビをつくれば、誰でもフラットパネルを供給できるようになります。
でも、ブランドの差によって、価格には差がつくはずです。
ブランドの差が利益の差になり、キャッシュフローの差になり、シェアの差になり、それが何回も循環するうちに、敗者と勝者に分かれていくからです。
今年の注目は、パイオニアだと思います。このブランド戦略やグローバルキャンペーンが功を奏するかどうか。見ものですね。
案外、健闘するのではないでしょうか。2004年が終わったときに、また、評価したいと思います。
シャープのAQUOSもよいグローバルなサブブランドです。注目したいところです。
ソニーのベガやパナソニックのヴィエラというテレビの2強対決も今年の見所です。
山本 潤
SLOW INVESTMENT2004
~ゆっくり考え ゆったり投資~
このコンテンツは、特定の銘柄を推奨するものではありません。アイデアというものは、単なる思い付きの部分も多く、投資判断を導くには未成熟・不十分・不正確なものです。ここで紹介しているようなレベルのアイデアでは、投資の役には立ちません。内容についても、関係者との立ち話が中心なので、わたしの取り間違いや聞き違いも含まれているかもしれません。内容の正確さを保証するものではありません。