産業新潮
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12月号連載記事
■その8 バフェットは握手だけで数千億円の取引をする
●定量的分析と定性的分析
私が企業への投資をはじめたときには、「定量的分析」に頼っていた。
「定量的分析」とは、決算書などに記載された数字そのものを分析することである。確かに、企業の事業やビジネスの本質を十分理解していない段階では、「数字」というものは極めて便利である。素人でも容易に扱え、一定の公式を当てはめれば小学生でも百戦錬磨の投資家でも同じ結果を得ることができる。
投資の神様・バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムは、定量的分析を中心に行っていた。1929年のNY株価暴落で、彼も大損をし、その反省から、自分の欲目で企業を過大評価したり逆に恐怖心から過小評価しないようにするため、「客観的数字」を重視したのである。
その手法は大成功し、バフェットも若かりし頃は、師匠のグレアムの教えを忠実に守って「定量的分析」を行った。
しかし、この「定量的分析」がうまくいったのは、他の一般投資家が決算書を読みこんだ「定量的分析」を行わずに、直感・憶測(カンピューター)に頼った取引を行っていたのが主たる要因である。グレアムの時代の株式市場には、現在の機関投資家のようのものはほとんど存在せす、株式市場の大部分をいわゆる個人投資家が占めていた。
ところが、現在の株式市場ではその関係が逆転し、機関投資家が市場の主要なプレイヤーである。彼らは、個人投資家と違って、アナリストを雇ってレポートを書かせたり、アナリストレポートを購読したりするが、その主たる内容は定量分析である。
数字の解釈は、誰が行っても一定であるべきだし、実際そのような場合が多い。だから、組織的に定量分析を行う機関投資家に対して、一般投資家は不利である。
バフェットは、半世紀以上前からそのことに気がつき、「投資先が見つからない」という理由で、自らのファンドを解散し、出資金を投資家に返還している。
グレアムの時代には、それこそどこにでも転がっていた割安な投資先が、多くの人々が定量分析を行うようになって、見つからなくなってしまったのである。
そこでバフェットがシフトしたのが「定性的分析」である。
「定性的分析」とは、決算などの数字に頼らず、社風などの文化も含めた企業の潜在力(性質)をベースに判断することである。
●将来を分析するには定性的分析が重要
アナリスとなどによる一般的な定量分析は、当該年度と前年度の2年程度、あるいはせいぜい3年程度のことが多い。つまり、分析の対象は基本的に「現在」である。
それに対して、グレアムは最低10年間のデータを分析する。なぜならば、将来を予想するためには過去を知ることが重要だが、2~3年程度の「現在」では役に立たないからである。10年程度さかのぼって長期的なトレンドを見つけなければ将来予想はできない。
グレアムの手法は一般的な定量分析に比べて優れてはいるが、それでもバフェットは、定性分析を重要視するようになった。
現在のバフェットの成功は、定量分析から定性分析に見事に切り替えたおかげだと言っても良いだろう。
<続く>
続きは「産業新潮」
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12月号をご参照ください。
(大原 浩)
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)