●ビーアールホールディングス(1926)


 もともとは砂利や枕木を鉄道向けに納入していた国鉄関連企業であったが、枕木がRCであったことからPC橋梁分野に進出し、現在は広島発のメジャープレーヤーとして業界5番手に位置する。
 しかしコンクリート製品は重いため、陸送には限界がある。
 シールド掘削トンネルではトンネル内の内側を覆う覆工・構造製品をセグメントと呼び、金属製、RC、合成の3つに分かれ、リニア中央新幹線ではRCタイプが用いられている。
 名古屋側のセグメント供給は複数の企業が競い合い、有利と思われていたのは三重県鈴鹿市に工場を有する某企業で、競合は和歌山県であった。大型のセグメントは分割して生産・納入されるが大きく重く、大型トラックに2ピースまたは3ピースしか積載出来ず、出荷工場から現場までの距離がコストを左右する。

 ビーアール社が展開する橋梁も同様で、重いものになると30トンにも及び商圏は限られてくる。東京―大阪間では原価がアップしてしまい、東京―名古屋間程度が限界の様だ。
 だが地元広島から東は仙台、静岡、西は九州まで買収により子会社工場を有しており、北海道を除く全国で事業活動が可能となっている。


 PC橋梁業界は平成11年をピークとして右肩下がりの市場であり、特に新設橋梁は漸減傾向を続けており、今後も縮小すると言われている。
 だが日本には橋長2メーター以上の橋梁が73万本掛けられていると言われ、そのうち2023年3月時点で建築後50年を経過するものが39%を占め、10年後には60%に達すると国土交通省ではいう。これとは別に約23万本の橋梁は設備年齢不明とされているから怖い。

 そこで橋梁の点検・メンテナンスが急がれており、PC橋梁市場は平成29年に底を付け、補修中心に市場が拡大しているのだ。

 国土交通省道路局の資料によると72万橋の道路別内訳は、市町村道が51.3万橋で71%を占め、都道府県の16%、直轄国道6%、補助国道5%、高速道が2.1万橋で3%の比率。
 その高速道だが補修のための費用捻出から有料期間を15年延長し2065年となることが2014年に閣議決定され、NEXCO3社は15年の整備期間と3兆円の費用を投じて高速道路の大規模更新・修繕を始めている。
 特に大きい工事は200キロ強に渡る床板交換で1.6兆円の予算が見積もられており、同社の得意とするところだ。

 15年の工事期間は5年毎の3つに区切られており、当初の5年が終了し昨年から2期目の5年工事がスタート。しかし投資配分は最初の5年が2割、2期目及び3期目が各々4割と歪である。
 単純な計算だが、2期は1期より倍増が見込まれることになる。だが実際の発注は徐々に増加して行くイメージの様である。

 そのためPC橋梁トップ企業のピーエス三菱の受注も好調。橋梁の属する土木部門の今中間期受注高は前年中間期より29.6%増加の376億円に上っている。
 三菱と競う三井住友建設の両社とも短期的にはシェア変動が大きいが、最近では三井住友がダウンし2番手から4番手までが団子状態。同社は直近で5位だが、3位の時もあるなど団子状態の一員。


 その同社の中間期受注高は264億円で前年比66%もの増加を示しており、橋梁の属する建設事業では75%増の240億円に達している。
 1Q(4~6月)では103億円と過去最高の受注額だが4Qの期ズレ案件による押し上げも。だが2Q(7~9月)は更に上を行く161億円にまで拡大し、受注残も過去最高水準にある。
 受注高を押し上げたのは長野・中国・東名・新東名の高速道路と中央新幹線の天竜川橋梁等で、NEXCOによる投資の恩恵を享受している。

 だが受注の出方は3か月ごとに変動幅が大きく、2020年3期では1Q~3Qでそれぞれ33億円、126億円、77億円であり、2Qから3Qでは半減に近い水準まで減少しており、今期も同様の展開となる可能性もあろう。
 また前年3Qでは竣工に関わる一時的な要因による収益押し上げ効果が出ており、売上高121億円、営業利益は9.3億円と高いレベルで、今期3Q(10~12月)では減収・減益が予想される。


 低金利による金余り、ヘッジファンドの台頭、年金基金でも短期パフォーマンスを追う傾向から空売りも横行し、四半期業績の鈍化は餌食となる。
 堅調に推移し9月に820円で高値を更新した後、軟調なのは前年3Qの高い業績の反動を意識してのことだろうか。

 最近ではAIが活躍しており、3Q実績の発表では軟調な業績を見て売りの指示を出すかもしれない。しかし今後は国・自治体による補修の期待もある。また子会社が鉄道に強く、地震による新幹線の逸脱防止対策(2本のレール内に更に2本のレールを設置する)が継続し、北海道・北陸・九州新幹線でより平坦な軌道スラブも受注済みで、JR東海のリニアでも側面PC壁体をピーエス三菱とJVを組み既に出荷を開始しているが、今後も増加傾向となりそうだ。


 たった3か月の短い期間を見て売り買いする投機人が3Q決算発表で売ってくるかもしれない。しかし今後の成長を期待する投資家にとっては絶好の買い場と映るだろう。

 NEXCOグループ案件の落札率は上昇傾向だがまだ90%程度だ。安く敬遠された過去もあり工事単価は上昇傾向にある。

 PC橋梁業界の人的稼働率はほぼ100%で選別受注にも動いている業界なのだ。


(億近産業調査部)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)