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金融市場は1997年の外国為替法改正、1999年の株式手数料の完全自由化を経て大きく変化しました(日本版ビッグバン)。
それまでの金融機関は(規制により)投資家と市場を繋ぐ仲介機能を独占することで収益をあげていましたが、その既得権が機能しなくなり、今や20年の歳月を経て業界は大きく変わりました。
銀行や郵貯も様々な金融商品を取り扱うとともに、今では個人投資家の株式売買に占めるオンライン取引シェアが90%を超えるまでになっています。
一方、対面取引に依存する旧来型の証券会社では顧客の高齢化が進むことで口座数の減少が止まらず、且つ1990年代に続けて発生した不祥事を引き金に、個人顧客取引における規制やコンプライアンスの指導が厳しくなるなどでも稼ぎ辛くなっています。
2004年4月に施行された金融商品仲介業では、銀行や郵便局での金融商品の取り扱いが開始され、試行錯誤はありましたが、早や17年が経過し、コンプライアンス態勢も徐々に構築されてきました。
そのようなコンプライアンスが強化され続ける中でカンポ生命の大規模な不正勧誘が発覚したのですから、金融関係者は誰もが驚きました。30年以上も昔の営業思想と言いますか、無茶な営業手法がこの時代になっても残っていたのかと。しかも民営化したとは言え株式の過半を国が持つ官営会社です。
以前にも書きましたが、上層部から丸投げされた数値目標を達成するため、ノルマ営業の本質を理解しない(営業の管理経験が無い)中間管理職が暴走した結果と思われます。
にもかかわらず責任を取らされたのは現場職員だけ。もちろん荒稼ぎを目的に入ってきた詐欺的営業のプロも多数居たようですが、組織全体のガバナンスの欠如と言わざるを得ません。
一方で、超低金利が続く中、銀行や証券会社も稼げるアイテム不足に悩んでいます。
結果として無理な不動産融資に傾倒したり、手数料が取り易い金融商品の販売が花盛りとなっています。外貨建て保険や中身が不透明な仕組債などは典型例ですね。
ここ数年増えている仕組債などでは表面的には安全に利回りが取れそうな商品に見えますが、今は株式市場が比較的安定しているから成立する商品であり、下落幅が大きくなれば一気に損失が表面化します。
預金金利がほぼ0%の時代に安易に数%以上の利回りが得られる商品など有り得ず、専門家は皆「よくまあ、こんな子供騙しの金融商品が大量に売れるものだ」と呆れています。
「貯蓄から投資へ」とは言えない、見栄えだけで、それこそ手数料稼ぎに格好の商品が大々的に売られているのに監督当局はまたも見て見ぬフリでしょうか?
ここ数年はIFA(独立系投資アドバイザー)が急増しており、従来型の証券営業とは違うと謳ってはいますが、その実、FA(フィナンシャルアドバイザー)と言われる方達の殆どが歩合(出来高制)の営業をしている方達であり、所属証券会社からのキックバックが収入の大半を占めています。
失礼な言い方をすれば「会社からの商品ノルマの無い」新手の歩合外務員が横文字の組織を作って営業をしているだけのように見えます。
出社して端末を見ながら株式など変動商品(マーケット商品)を売買する従来型の歩合外務員に対し、市場での頻繁な受発注が出来ない(変動商品を扱い辛い)FAは新手の金融商品(利回りが良さそうに、儲かりそうに見える商品)を、さも素晴らしい貯蓄型商品だと訴えて販売しています。
例えば、満期まで6ヵ月未満で、実入りが3%前後になる短期商品を、毎月5、000万円ほど繰り返し売れれば給料が100万円近くにもなるのですから、幾らかでも腕に自信がある営業マンは続々と金融会社を辞めてこの手の組織に転職しています。
この程度の販売実績なら、恐らく元の組織に居たら給料は50万円ほどが限度でしょうし、営業力が低いと評価されるレベルですから辞めたくなる気持ちも分かります。
カンポ生命の例のような無茶な営業は減っていますが、実のところ余り投資効果の無い、投資効率の悪い金融商品が出回っていることに注意しなくてはなりません。
預金金利が0.01以下と言うご時世に、数%以上も取れると勧められる金融商品なら確実にそれ相応の変動リスクがある訳です。ラフな言い方をすれば、1%取れると言うなら預貯金の100倍、5%なら500倍以上のリスクが潜んでいます。
今は強い株式市場がそれらのリスクを見えにくくしていますが、大きく変動すればあっという間にリスクが顕在化します。
それらのリスクをどうコントロールするかが投資の要点であり、それこそ商品の取引コストこそが運用結果に対するとても大きな影響を及ぼします。
次回は良いFA(金融業者)を選ぶコツなど、とても簡単なことですが、幾らかでもご紹介できればと考えています。
(街のコンサルタント)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)