自民党の総裁選では各総裁候補者から政策提言が打ち出されており、国民各位や自民党員からの評価がなされることになる。
総裁選後の衆院選挙での自民党優位の観測から株式市場はこれをひとまず好感した格好だが、実際には225採用の海運3銘柄に一極集中の様相。
さすがにPER3倍だとひとまずは株価はこれらに集中せざるを得ない。
割安感ではPER3倍に敵うセクターは見当たらないのでいくところまでいくしかない。この後は海運市況次第ということになるが、一極集中相場では面白くない。もう少しひねりを入れてほしいと願う投資家も多いに違いないが、これも相場だから仕方がない。
政局に話を戻すと今後は実際に誰が総裁選で勝利するのか、新総裁の政策内容を吟味しながら個別の関連銘柄を物色する展開で盛り上がりそうだ。
細かい政策の中身はネット上やメディアであふれかえってきた。吟味もなかなか大変だ。
筆者としても株式市場の問題点を考えながらこのような施策があればと思い以下に掲げてみた。
「日銀の株買いが終焉する時を見据えての提言」
日銀が国民に代わって株式市場での大きな買いの主体となって久しい。
ただ、ここに来て市場内ではテーパリングについての議論が巻き起こりつつあり、コロナ禍の下で官製相場を担った日銀の株売りがどのタイミングで見られるのかに関心が寄せられている。
ですから株高ではあってもあまり有頂天になり過ぎてはいけません。
これまで日銀は市場で日経平均型やTOPIX型でETF(上場投信)を活用して株式を吸い上げてきた。2020年3月のコロナショック時も日銀が下支えしてくれた。緊急時対応という意味では日銀の役割は大きかったが、平時から相場の過熱期においては逆の行動が必要となる可能性もありそうだ。
いくらでもお金を刷れる日銀が上場企業の株をETFの形で買い続けてきたことで日銀(政府)には見かけ上の含み益ができてきた。但し、今後の市場変動によってはその含み益は縮小する可能性もあるし、売りのアナウンスメントによっては日本株の急落につながる自分で自分の首を締めることにもなりかねないジレンマも残っている。
幸いなことにコロナ禍の中にあっても企業は自助努力などで業績を上げており、極端な割高感がある状況ではないため相場の大幅下落には至っていないが、米中間の軋轢やコロナ禍の拡大や企業の競争力低下、更には何らかの理由による世界経済の停滞が生じた場合は日銀にも相場の下落による影響を受ける可能性はある。
株価は業績の変動に伴って生じる価格変動によるリスクがあり、それを現在、日銀という日本政府の連結子会社で抱えている状態だということになる。
既に日銀の保有株は50兆円を超えたとされるが、今後の株高によっては一段とその評価額は増加が予想される。年金基金と合わせて日本の株式市場全体の10%以上を占めると推察される公的資金の比率を更に高めるのは無理がある。
そこで提案したいのは都銀や地銀など民間銀行の活用だ。
市場には銀行株も含めて見向きもされていない低PBR銘柄が数多く存在しているがこれは銀行株のような低PBRセクター株が邪魔をしていると言っても過言ではない。
約100行ほどの上場銀行株は個人の預金を低金利で預かってそれを上回る金利で回して利ザヤを稼ぐビジネスを行っているが、低金利下で貸出し先がない中で国債で微々たる利ザヤを稼ぐことに終始してきた。
持合いで保有してきた株の大半は持ち合い解消で手放し、手元には行き場のないお金がただうごめいていて有効な活用はなされていない。
ある地銀の東京支店では支店の周辺にある企業に貸し出しなど一切しないという話で銀行とは名ばかりで融資業務などやらないとのこと。
どうやって稼いでいるかと言えば、既存のお客だけで十分回っているとの話。
この話は全国のほとんどの銀行に当てはまることだろう。
ただ、日銀が日本を代表する企業で構成されるTOPIX型ETFで株式運用するのと同様に一歩踏み込んで地銀には地方発企業を応援する使命があっても良い。しかもそうした地方の有力上場企業の株価が低迷している時こそ積極的な買い主体として行動するべきだろう。
やり方はいろいろあるが、放置することはない。自ら投資ファンドを構築して一定の指標以下では投資するスタンスを表明しておけば良い。
個人投資家は下値不安のある流動性のない地方銘柄など買わないしなかなか見向きもしない。下値で買う主体が必ずあるとなれば下値不安も薄らぐことになり、相場は右肩上がりに展開するものと期待される。
本来なら一般市民など個人投資家が上場企業の価値を評価して売り買いするのが自然な流れだが、かねてより投資教育が浸透しないままきた日本では株式投資をリスクあるもの、怖いものとして長期にわたり忌避されてきたという歴史がある。
そうした金融教育のお粗末さが日本の株式市場が世界から取り残され、市場参加者が外国人によって席巻されてきたとの経緯がある。
米国ではウォーレンバフェットなどの有名カリスマ投資家の下に個人のリスクマネーが集まる独特の流れが市場の潮流として存在する。昔の遊びかも知れませんが、「この指止まれ」の専門的な運用者、投資家にお金が向かう風潮があり結果としてその恩恵を受けてきた投資家も多いのだろう。
日本ではそれに匹敵する投資家はソフトバンクGの孫社長ぐらいだろうと見られる。全体市場の時価総額がいまだに700兆円にしか過ぎない中で成長意欲旺盛な新たな企業がどんどん出てくるような株式市場にはなっていない。
世界のAI企業に投資しようというソフトバンクGが日本にはそうした活力あるアイデアたっぷりのAI企業がないとして投資しないのも頷ける。米国市場に比べて、とても閉塞的な日本の中でかつてのソフトバンクやファーストリテイリングのIPOの時のような興奮をもたらす新たな輝く企業は登場してこないとの印象がある。
ただ実際にはいくつかの企業にそうした可能性を秘める企業もある。
もう一方の視点では日本を代表する企業もそうでない知名度のない企業でも指標面では理屈抜きに割安となっている状況が見られる。
市場での売買は理屈抜きの面もあり需給関係で決まる面もあって割安な銘柄も放置されたままで来ている。
例えば市場には600社近いPBR0.5倍銘柄が存在するし、370社ほどのPER8倍以下銘柄が存在する。更には770社の配当利回り3%以上銘柄も存在している。
ややイレギュラーなほどの市況高で莫大な利益がもたらされた海運3銘柄は株価の急上昇の中ですら現状PER3倍前後に甘んじていて割安銘柄のレッテルが貼られている。長期スタンスで海運株をお持ちだった投資家にとってはわが世の春の到来と言えるが、ビジネスは好循環する可能性がある。
市況高が中長期に続くと油断して建造コストの安い今のうちに新造船を行おうとすれば、いずれ市況が下がった時にまた泣く目に遭うとして積極的な投資はしないでおこうという気運が続く可能性もある。
王様のような時代はいつまで続くのか?ついこの間までの大赤字が嘘のような業績を謳歌する海運各社に対して海外渡航制限下が続く航空各社や旅行会社、飲食業の明暗はコロナ禍にあってなおも長期化しつつある。
とは言え、拡大再生産数の1以下への低下からコロナ感染が大きく減少してきたことやパラリンピックの終了、総裁選後の秋の国政選挙を前にした政策の打ち出しで株式相場は盛り上がる局面に入った。
こうして株高は忘れた頃にやってくる。同様に株安も忘れた頃にやってくる。
リスクマネーが豊富にない日本の株式市場では理屈から外れたような上場企業があふれているが、今のうちからこれまで日銀に遠慮してきた地銀や大手都銀を絡めたテーパリングの方策を模索していくべきだろう。
(炎)
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