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私が長年ウォッチしている企業の一つにサイネックス(2376)がある。本メルマガでも折に触れ、書いている企業だが、この会社の株価が先週出来高を伴って動意づいた。
もともとは広告入り電話帳を手掛けてきた企業で、地方に行くと多くの家でそうした媒体を見ることができる。実にその数1000万部もあるというから驚き だ。しかしながら、携帯、スマホ、インターネットの時代になって電話帳などは必要がなくなっているのは明白。ニーズが減少する広告媒体である電話帳など誰 がどう見ても縮小しているというのはわかるし、それだけではこの会社に未来はないだろうと思われる。
その結果、投資家の評価は落ち、上場(2003年11月)してからの株価低迷も長期にわたり続いてきた。ところが、それに代わり、ここ数年で大きく伸び てきたのが、地方自治体が発行する通称、「暮らしの便利帳」という生活ガイドブックだ。5年ほど前にスタートしたこの事業は順調に拡大し、既に全国 1700余りの市区町村のうち400もの自治体で発行し、今後も着実に増加していく見通しにある。
電話帳の減少をカバーして同社の業績向上を支える事業に育ってきた点がここに来ての最大のポイントであろうが、私はその進化が水面下で起きている点に注 目している。暮らしの便利帳のことを同社は「わが街辞典」として商標登録しているが、そこには様々なジャンル(子育て、福祉、健康、税務、環境など)の市 民生活には不可欠な情報が掲載されている。
その情報の一つが防災情報である。東日本大震災以来、市民の防災への関心は高まっていると見られる中で防災情報誌を自治体が発行し、市民へ訴求するニー ズは高まっている。このところの全国的な地震発生、大雨、台風、竜巻といった自然災害の脅威への対応を迫られている自治体にとって市民への情報伝達は欠か せない。
高齢化が進む地方にとって紙媒体の情報誌は依然として情報伝達手段として有力な媒体であろう。このため、既存の暮らしの便利帳の発行自治体で、新たな広 告入り情報媒体の発行ニーズが高まっているだろうというのは私の想像するところに過ぎないものの、既に同社はそうしたことを昨年の決算説明会の席上で明ら かにしている。
2013年3月期の決算発表は5月13日に予定しているが、そうした点が明確になるかと思われる。
更に、同社はこのわが街辞典を電子書籍化し、現在はどこの街に住んでいようと自分の故郷の情報や今後移り住む街の情報をネット上で知ることのできる電子 媒体を構築しつつある。ヤフーとは既に数年前にこのネット化の展開で提携。(ヤフーが同社を利用しているように思えるが…)同社はヤフーにストックオプ ションまで付与し、協業体制を強固にしようとしているが、同社との力の差は歴然としていて本当にうまく進捗しているかは疑問が残る。最近は同社が代理店に なっているヤフーロコの話題をさほど聞かなくなってしまった。
それに代わって期待されるのは自治体のニーズを取り込む形で展開しつつある「わが街特産ネット」や「City Do!」といった同社独自のEコマースサイトの事業である。
これについては農業の6次産業化ニーズにも応えられる仕組みにもなるので私はひそかに注目している。地域に根ざした農産加工品をいかに既存勢力の息のかからない流通体制に乗せていくかのソリューションになると思うからだ。
同社はこつこつと時間をかけて全国の自治体と連携してわが街辞典を発行しながら、一方でネット化への対応を怠らず、次の発展を図ろうとしている。ロング テイル戦略を推進し、毎期着実に業績を伸ばすという同社の事業モデルを私以外の多くの投資家も評価し始めたのであろうか。先週2日間は私も知ってる有名株 式評論家の先生のご推奨もあっての株価上昇と言われるが、長年追いかけてきた私にとっては感慨深いものがある。
それでも道半ば。上場した頃に比べてまだ、相当に株価水準は低い。時価総額は34億円足らずで、自己株93万株を除いた時価総額は29億円にしか過ぎない。これは同社が保有する第3四半期末の現預金(定期預金や有価証券を含む)31.4億円に比べてもまだ低い。
一方の負債は12.3億円の前受金と形式上の短期借入金3.5億円を合わせても15.8億円で、財務上の問題は見られない。
先週末の終値は524円。2014年3月期の予想EPSは最新四季報ベースで68.7円。PERは7.6倍にしか過ぎず、実績PBRも0.68倍。2つ の株価指標面では株価が上昇したと言っても割安感は残る。もう一つの株価指標である配当利回りが年5円の配当では1%以下で市場平均より見劣りするが、こ れは経営者のさじ加減ひとつ。設立60周年、上場10周年の節目に配当金を増やさないでいることはないだろう。ましてや現預金を時価総額程度に積み上げて きた経営陣は使い道のない資金を株主に還元しないまま放置はできない。
ここでは増配か、増配に準じた株式分割が施策として打ち出されることを期待したい。増配は2013年3月期から実施されるべきで、業績見通しにもよるが 配当性向20%でも10円から14円配当は可能。もし私がこの会社の社長なら普通配を10円に増やし、記念配10円を実施して合わせて20円配当ぐらいは 実施したいと思うが、そうなれば配当利回り面でも割安感が出てくるが、果たして受け入れてもらえるものか…。
ここでのポイントは実際に2014年3月期の業績がどうなるか。
紙媒体とITの両輪がうまく組み合わさっての成長モデルが現実になるかどうかが試される期待の高い決算期となること。同社がいつも言う中期売上高200 億円、経常利益20億円に向けてのスタートになる決算期なので大いに注目したい。また、いつまでもJASDAQ上場ということでもない。時価総額40億円 以上が継続し株主の増加が実現すると東証上場も視野に入ってくる。上場後の高値1730円はともかく上場時の公募価格700円は既に射程圏に入ってきた。 長年にわたり同社の株主になってもらっている投資家の期待も高まっている。
そう言えばヤフーに付与した新株予約権(81万2100株、行使価格255円)の行使期限(本年6月25日)が近づいているが、どうなるだろうか。行使 すればヤフーが同社を持ち分法子会社にできる。ヤフーグループ入りが良いのかどうかは意見が分かれるものの、実現すれば同社のイメージと立ち位置が変わる と見ている。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
もともとは広告入り電話帳を手掛けてきた企業で、地方に行くと多くの家でそうした媒体を見ることができる。実にその数1000万部もあるというから驚き だ。しかしながら、携帯、スマホ、インターネットの時代になって電話帳などは必要がなくなっているのは明白。ニーズが減少する広告媒体である電話帳など誰 がどう見ても縮小しているというのはわかるし、それだけではこの会社に未来はないだろうと思われる。
その結果、投資家の評価は落ち、上場(2003年11月)してからの株価低迷も長期にわたり続いてきた。ところが、それに代わり、ここ数年で大きく伸び てきたのが、地方自治体が発行する通称、「暮らしの便利帳」という生活ガイドブックだ。5年ほど前にスタートしたこの事業は順調に拡大し、既に全国 1700余りの市区町村のうち400もの自治体で発行し、今後も着実に増加していく見通しにある。
電話帳の減少をカバーして同社の業績向上を支える事業に育ってきた点がここに来ての最大のポイントであろうが、私はその進化が水面下で起きている点に注 目している。暮らしの便利帳のことを同社は「わが街辞典」として商標登録しているが、そこには様々なジャンル(子育て、福祉、健康、税務、環境など)の市 民生活には不可欠な情報が掲載されている。
その情報の一つが防災情報である。東日本大震災以来、市民の防災への関心は高まっていると見られる中で防災情報誌を自治体が発行し、市民へ訴求するニー ズは高まっている。このところの全国的な地震発生、大雨、台風、竜巻といった自然災害の脅威への対応を迫られている自治体にとって市民への情報伝達は欠か せない。
高齢化が進む地方にとって紙媒体の情報誌は依然として情報伝達手段として有力な媒体であろう。このため、既存の暮らしの便利帳の発行自治体で、新たな広 告入り情報媒体の発行ニーズが高まっているだろうというのは私の想像するところに過ぎないものの、既に同社はそうしたことを昨年の決算説明会の席上で明ら かにしている。
2013年3月期の決算発表は5月13日に予定しているが、そうした点が明確になるかと思われる。
更に、同社はこのわが街辞典を電子書籍化し、現在はどこの街に住んでいようと自分の故郷の情報や今後移り住む街の情報をネット上で知ることのできる電子 媒体を構築しつつある。ヤフーとは既に数年前にこのネット化の展開で提携。(ヤフーが同社を利用しているように思えるが…)同社はヤフーにストックオプ ションまで付与し、協業体制を強固にしようとしているが、同社との力の差は歴然としていて本当にうまく進捗しているかは疑問が残る。最近は同社が代理店に なっているヤフーロコの話題をさほど聞かなくなってしまった。
それに代わって期待されるのは自治体のニーズを取り込む形で展開しつつある「わが街特産ネット」や「City Do!」といった同社独自のEコマースサイトの事業である。
これについては農業の6次産業化ニーズにも応えられる仕組みにもなるので私はひそかに注目している。地域に根ざした農産加工品をいかに既存勢力の息のかからない流通体制に乗せていくかのソリューションになると思うからだ。
同社はこつこつと時間をかけて全国の自治体と連携してわが街辞典を発行しながら、一方でネット化への対応を怠らず、次の発展を図ろうとしている。ロング テイル戦略を推進し、毎期着実に業績を伸ばすという同社の事業モデルを私以外の多くの投資家も評価し始めたのであろうか。先週2日間は私も知ってる有名株 式評論家の先生のご推奨もあっての株価上昇と言われるが、長年追いかけてきた私にとっては感慨深いものがある。
それでも道半ば。上場した頃に比べてまだ、相当に株価水準は低い。時価総額は34億円足らずで、自己株93万株を除いた時価総額は29億円にしか過ぎない。これは同社が保有する第3四半期末の現預金(定期預金や有価証券を含む)31.4億円に比べてもまだ低い。
一方の負債は12.3億円の前受金と形式上の短期借入金3.5億円を合わせても15.8億円で、財務上の問題は見られない。
先週末の終値は524円。2014年3月期の予想EPSは最新四季報ベースで68.7円。PERは7.6倍にしか過ぎず、実績PBRも0.68倍。2つ の株価指標面では株価が上昇したと言っても割安感は残る。もう一つの株価指標である配当利回りが年5円の配当では1%以下で市場平均より見劣りするが、こ れは経営者のさじ加減ひとつ。設立60周年、上場10周年の節目に配当金を増やさないでいることはないだろう。ましてや現預金を時価総額程度に積み上げて きた経営陣は使い道のない資金を株主に還元しないまま放置はできない。
ここでは増配か、増配に準じた株式分割が施策として打ち出されることを期待したい。増配は2013年3月期から実施されるべきで、業績見通しにもよるが 配当性向20%でも10円から14円配当は可能。もし私がこの会社の社長なら普通配を10円に増やし、記念配10円を実施して合わせて20円配当ぐらいは 実施したいと思うが、そうなれば配当利回り面でも割安感が出てくるが、果たして受け入れてもらえるものか…。
ここでのポイントは実際に2014年3月期の業績がどうなるか。
紙媒体とITの両輪がうまく組み合わさっての成長モデルが現実になるかどうかが試される期待の高い決算期となること。同社がいつも言う中期売上高200 億円、経常利益20億円に向けてのスタートになる決算期なので大いに注目したい。また、いつまでもJASDAQ上場ということでもない。時価総額40億円 以上が継続し株主の増加が実現すると東証上場も視野に入ってくる。上場後の高値1730円はともかく上場時の公募価格700円は既に射程圏に入ってきた。 長年にわたり同社の株主になってもらっている投資家の期待も高まっている。
そう言えばヤフーに付与した新株予約権(81万2100株、行使価格255円)の行使期限(本年6月25日)が近づいているが、どうなるだろうか。行使 すればヤフーが同社を持ち分法子会社にできる。ヤフーグループ入りが良いのかどうかは意見が分かれるものの、実現すれば同社のイメージと立ち位置が変わる と見ている。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)