経済成長の実利を取るか国を思うか。
投資家の持つリスクマネーは運用成果を求めて世界を駆け巡っている。
気軽に海外株への投資ができる時代となり、日本の投資家も米国株を中心にした運用が活発になってきた。それは世界最大の時価総額を誇る米国市場に投資先を持つべき必然性や経済成長への期待、堅調な株価上昇トレンドが続いてきた点にある。
それが日本株が相対的に駄目になり米国株が日本株をアウトパフォームしてきた背景になってきた。
つまり実利を求めて日本の投資家は株価上昇の続く米国株に何らかの格好で投資してきた。それは野村証券が奨める米国株ファンドの形だったりしますが富裕層の個人マネーは過去吸い上げられてきた。
それがここに来て米国株式市場の過熱感や直近では物価の高騰への対応による金利上昇で情勢が変化。
為替は1ドル=130円台までの円安となり、円高に慣れてきた日本に再び円安によるビジネスマインドが戻ってきた。
冷静に眺めると日本株もかなり割安な水準になっていることに気がついた投資家も多いだろう。PERが10倍以下、下手すれば5倍以下となっている銘柄が増えてきた。PBRも1倍以下どころか0.5倍以下に甘んじている銘柄も数多く見られ、配当利回りも5%以上で推移している銘柄も出てきた。
そうした評価は海外投資家からもなされ、世界分散投資を実行する上で日本株も必ずアイテムに加わることになる。モノづくりに企業価値を見出せる日本企業の底力は海外投資家の方がより理解しているのかも知れません。
国家としての成長性は30年もの間GDPが増えず、これと同様に株式市場における時価総額も700兆円とバブル時代と比べさほど大きくは変わっていない。
それでも株式時価総額はGDPに比べると少しずつ増加しつつある。
米国の時価総額はNYSEとNASDAQの2つを合わせると4月末で約44兆6300億ドル、で日本円(1ドル=130円)に換算して5800兆円にも達している。米国だけで世界全体の42%で700兆円余りの東証の時価総額シェア5%と比べてダントツな状況。かつての日本株の勢いはなく、世界と比べローカルな位置づけとなってしまった。
だからと言って日本人が日本企業を見捨てる必要はなく国を思えば投資の矛先を米国に向けず日本に回帰することも必要となる。
問題は日本国の成長を支える企業がどのように見出せるのかになる。
時価総額競争は日本ではトップのトヨタ(時価総額34兆円)と米国のEVメーカー、テスラ(時価総額120兆円)に象徴され、米国のGAFAM(Google、アマゾン、Facebook(メタ)、アップル、Microsoft)の時価総額が東証プライム市場全体の時価総額700兆円を上回る規模になり、ますますビジネスの発展を遂げようとする中で、日本ではトヨタ以上の有力企業が出てこないのが現状である。
投資会社としてのソフトバンクGはかつて10兆円以上の評価がなされたこともあるが、アリババ問題などで紆余曲折があって、なかなか評価が定まらず、かつての1990年代半ばに上場してきたファーストリテイリングとともに日本市場ではリード役にはなっているが、GAFAMやテスラ並みの時価総額を持つ企業はなかなか出てこない。
ただ、予備軍となる企業は潜在的には存在していると推察される。
創業後の社歴が100年を超える海運株のこのところの活躍は注目に値するほか、日本企業の中で世界的な活動を見せてきた総合商社や電機、機械、化学などのテクノロジー系の企業には多くのリード役が存在する。
また、IPO市場においてはベンチャースピリットにあふれた若手経営者の登場に期待したい。
(炎)
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