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長期投資の入門 第8回 長期の技術のトレンドの筋
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長期投資の入門 第8回 長期の技術のトレンドの筋

2022-09-21 22:52
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    =長期の技術のトレンドの筋=


     長期投資の筋として、製品の付加価値の上昇と付加価値当たりの費用の下落とが共存するイノベーショントレンドがあることをお話しました。


    ☆よい長期の技術のパターンその1:表面積が付加価値

     表面積が付加価値になっている場合は、触媒や半導体など、界面が作用するケースで、どんどん薄化するとか、小型化するとかすることで、付加価値あたりの費用という相対的な指数(いわゆる比率)を改善することができたのでした。
     これは中身が詰まった金属の塊を想定してください。
     たとえば銅の塊を極薄に引き延ばすことで箔にすると、どんどん表面積を大きくすることができますね。立方体でその中身は詰まっているイメージ。


    ☆よい長期の技術のパターンその2:体積が付加価値

     逆に体積が付加価値で表面積が費用の場合、主に空間、中身が空気であるものが多いのですが、段ボール箱のようなものを想定してください。段ボール箱は中身が空気ですが、縦横高さを倍増すれば表面積は4倍になりますが、体積は8倍になりますね。立方体でその中身はからっぽのイメージ。


     この2つのパターンが長期の技術トレンドです。
     どちらのトレンドも、単位付加価値あたりの費用は長期的に劇的に低減していきます。

     もちろん、この長期投資入門では、繰り返し述べていますが、長期投資には、これさえやれば成功するという魔法は存在しません。

     投資とは、it is not that easy!!
     それほど簡単ではないよ!

     と言いたい。

     あれもこれも、調べて、Aじゃないかもしれないとわかる。
     裁判官の仕事はひとつの犯罪について、被告が黒か黒ではないかを悶々と考える。1か月も同じ案件をずっと考える。それでわかることは1つの案件が黒なのか、黒ではないのかということ。いや、それでも本当のところは(被告人以外には)わからないのです。

     まして、投資家は「命題Aは真なのか?」という一つのことを考えることで論理を組み立てる。Aは真ではないかもしれない。いや、Aは真なのだろう。ひとつの命題がわかっただけでは投資にならない。命題BもCもDもその他の命題も真のとき、投資のハードルを越えることができる。膨大な作業になります。

     投資の初心者向けの入門書は簡単チェックでよいでしょうが、投資のプロフェッショナルは膨大な時間の自己犠牲を伴いながら真実に少しでも迫ろうとするのです。ともかく教養がなければスタートラインにさえ立てない。アナリストを育てるには20年はかかると思います。

     そうはいっても、脅してばかりでは仕方ないので、冒頭に書いたように長期投資によい筋をもたらすための2つの基本的な考えは、それはそれで役には立つ。上記の2つのよい技術トレンドもなにかの投資の参考にしてもらいたいという思いで書いています。


     投資案件はそれほど簡単によいかわるいか判断できるものではありません。

     たとえば、上記の2つの長期の技術パターンは世界において必ず吹いている偏西風のようなもので時代の風ともいえるものですが、その変化のスピードは遅いのです。
     たとえばビルディングが時代とともに大きくなるといっても、長い月日が必要です。東京タワーがスカイツリーに置き換わるのに何年かかりましたか。

     同様にシリコンウェハーの単結晶の純度を9N(99.9999999%)から10Nに上げるといっても、とても長い月日が必要になります。
     これから述べるパワー半導体のゲート酸化膜の薄さについても、じわりじわりと薄くなるのであって、数年かけてわずかに薄くなるのです。

     短期の投資家はこのようなじれったいトレンドを考えません。
     It is not that easy!なのです。


     しかし確実に生じている「じわじわ」トレンドを味方にするのが長期投資の利点なのです。

     増収が確実にじわりと限界利益率を改善するのも、じわじわ系長期のトレンドです。年間の利益率の改善ペースはコンマ1-2%の小さな改善で気が付かないペースなのです。しかし、10年20年でみれば数%の利益率の向上をもたらすのです。

     日本の技術力は低迷していると揶揄されることがありますが、決してそのようなことはありません。特に、長期のじわじわトレンドであるアナログ技術は日本のお家芸です。アナログ技術とは、品質や特性やコスト競争力を向上させるための技術のことです。
     現場の地道な改善提案で現場がトライアンドエラーを繰り返すことができる。
     これが日本の強みです。
     それがさらなる微細化、ナノ化、純度の向上、精製の精度の向上、工法の改善、その他もろもろが、じわじわ系トレンドに結びついているのです。
     今回のパワー半導体も「アナログ半導体」と呼ばれていて、日本企業が世界的に強い分野です。


     難しいからやる意味がある。何事もそうありたいものです。


    (次回に続きます)


    山本 潤 セゾン投信共創日本ファンド ポートフォリオマネージャー


    【お知らせ 9月23日14時開催 セゾン共創日本ファンド運用報告会 in 札幌】

     セゾン投信会長の中野と国内株式運用部ポートフォリオマネジャーの山本とシニア・アナリスト根岸が札幌にてリアルにて運用報告会を開催いたします。
    (オンラインなし)
    https://www.saison-am.co.jp/seminar/detail/20220712105153.html


    【お知らせ 9月24日14時開催 セゾン共創日本ファンド運用報告会 in 名古屋】

     セゾン投信会長の中野と国内株式運用部ポートフォリオマネジャーの山本とシニア・アナリスト根岸が名古屋にてリアルにて運用報告会を開催いたします。
    (オンラインなし)
    https://www.saison-am.co.jp/seminar/detail/20220712105436.html


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