人は情熱を失っていない時間だけが真に生きている時間ではないか。
 仕事もこなすだけの作業ならばそれは時間を切り売りしているだけで生きたことになるのか。

 真に生きるためには情熱を持ち続けて意義あることに果敢に挑戦したい。
 そうやって、私は日々深く反省しているのです。


 生きる上で次に大事なものは覚悟。


 たとえば、ある上場業務スーパーがあるが、彼らは食品工場を自社で多数を有する製販一体型の企業です。インフレ前は冷凍うどん5玉で百円台の価格でしたね。圧倒的な価格と量で消費者から支持を得ているのです。
 通常、小売はメーカーを下に見て、返品も平気でします。ところがそれをしない。売れなければ自分でつくった自分が悪い。自社の損失となります。
 リスクを受け入れ、覚悟を決めているわけですね。

 本当によいものを開発し、圧倒的な商品性を持たせて販売する。リスクを軽減するためには努力に努力を重ねるしかないわけですね。このビジネスモデルは他の小売も真似しようとすればできないことはないのです。しかし、なかなかできない。
 それは小売がそのような覚悟がないからです。要するに作るリスクを取らない。返品できると思えば真剣には販売しない。返品できると思えば本当によいものを開発しようとは思わない。他のスーパーができない理由は、彼らに覚悟がないからです。


 投資家にとって、投資先の情熱と覚悟は心に響くものです。
 ですから情熱と覚悟をもった投資先を応援したいなと思うわけです。


 「誠」という言葉があります。
 「誠を尽くす」といいます。

 これが本当に大変なことなのです。

 この世の中で何かを行うとき、「もうこれで十分だ」という限度がないからなのです。

 「誠」とは、その限度がないことを知りつつ、限度を考えないで全力で仕事を果たせという意味なのです。
 絶えず誠を尽くす人生でなければ私が成し遂げようとしている道は開けないだろう。

 私が成し遂げようとしているのは一種の草の根金融の在り方で、個人の受益者の方々との双方向に情報を共有する、そのような仕組み。


 長年勤めていたヘッジファンドでは、年率1.5%の定率の運用報酬に加えて顧客からは値上がり部分の20%を成功報酬としていただいておりました。
 失敗したらすみません。成功したら「ボーナスありがとう」でした。
 これではいけないと思った。それがダイヤモンド社で定額金融サービスを始めたきっかけだった。
 金融は実業の黒子に徹するべきであり、高給は不要だ。
 駅前の豪勢なタワービルで働く必要もない。
 身一つか雑居ビルで、トイレ掃除でもなんでも金融マンはやるべきだと思ってきました。
 信用取引や回転売買などの投機色の強い日本株市場で、本当の長期投資を模索するのだという高い志を持って優秀で尖った多数のコンペティターらと切磋琢磨していくつもりです。

 いくらそう考え、日々、悪戦苦闘したとしても、誠を尽くさないならば、道は閉ざされてしまうでしょう。

 尖っていない優秀でもないコンペティターも多数いるでしょう。
 証券会社による手数料の高い投資信託の営業は常態化。また、富裕層をターゲットにしたラップ口座は高額手数料の典型であり長期では実績が出にくい。長期投資というものはそういう器の中では育たないのです。


 世の中には当然のごとく既得権があり、金融大手は高い手数料を課している状況があります。市場を支える証券会社は、信用の金利、貸株料などの利益が取れる回転売買を志向し、長期投資家を育成してきませんでした。
 巷にある書籍も投機の打ち方を解説してあるものが多い。


 真っ当な長期投資を志向したい。
 だからといって自動的にわたしたちセゾン投信が伸びるわけではありません。
 他の大手金融と同じやっつけ仕事にならないためには、お客に信頼されるだけのサービスの質を10-20年にわたり全力で継続しなければなりません。信頼されるだけのサービスの質のためには、誠を尽くすという心構えでやる他ないのです。


 アイデアマンは世界中にゴロゴロしています。
 そして何かを紙上で企画できる人もゴロゴロしているでしょう。
 しかし、誠を尽くせる人はそうはいない。

 どんな仕事であっても、一つの挨拶、一つの作業。
 そこに誠を尽くせる人を私は尊敬したい。

 家事一つとっても同じでしょう。
 家事なんて面倒だ。どうして私だけが家事なんかを押し付けられて、他の家族は何もしないのか、おかしいよね、と思って生活する人も多いでしょう。

 でもそうではないのです。どの仕事にも誠がある。
 丁寧に心を込めて家族を思いながら茶碗を洗う。今頃、息子は学校で頑張っているかなと想像しながら洗う。何を作ったら喜ぶだろうか。夕食は何がいいだろうか。家事で家族を全力で応援する。そして、そのことで家族が一つになる。そうだとすれば家事とは何と尊い仕事でしょうか。


 私は思うのです。
 理不尽な世の中です。
 悩むこともあり、嫌なことも多い。
 そうだとしても、ただ、我々は常に眼前の仕事に全力を尽くすべきではないかなと。

 なかなか難しいです。日々反省です。


 さて、そうこうしているうちにもう年度末です。
 みなさまにとってよい日になりますように。


(NPO法人イノベーターズ・フォーラム理事 山本 潤)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)