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「2億円あればリタイアしてもいい」
FIREを目指す人たちは、このような目標を立てます。
2024年から始まる新NISAは、非課税期間が恒久になります。
株にも投資できる成長投資枠は、1,200万円あります。これを2億円に膨らませることができた際には、売却益に税金はかかりません。配当も非課税なので、高配当銘柄であれば、非課税のキャッシュフローが生涯続くことになります。
1,200万円を2億円にするためには投資対象を16.6倍にする必要があります。
例を挙げます。
P&Gの株は1990年11月に約10ドル、2022年1月時点で約165ドルをつけました。
為替を抜きにすれば、32年で約16倍になっているので、1,200万円分同社株を買っていれば、2億円へのゴールにはかなり近づいたことになります。
P&Gは66年間増配を続けています。1990年時点でも約30年連続増配企業でした。2023年5月7日時点の配当利回りは約2.4%です。もし、2億円の資産があれば約480万円の配当収入があることになります。米国で10%の税金が引かれたとしても432万円が手取りで残ります。NISAであれば国内の配当は非課税です。
投資利回りで考えたら、1,200万円の投資資金で年間に432万円のキャッシュフローが得られていることになるので、年36%の利回りになります。新NISA制度の成長投資枠の利用額は年240万円なので、1,200万円の投資をするのには5年かかります。時間分散をするにはちょうどいいでしょう。
この投資の面白いところは、2億円になるまで成長を待つ我慢の期間にも配当が得られていることです。もし、資産評価1,200万円時点で手取り2%の利回りがあるなら年24万円の現金収入があることになります。
本来なら配当は再投資した方が効率的ですが、P&Gは増配を継続しているので、「増配が続くかぎり株価は底堅く堅調だろう」と考え、配当を全て使ってしまったとしても、同社株は30年で16倍になりました。
柿の木を植えて、実を食べながら木が大きくなるのを待つ、という感じです。人生1回ですから、複利運用を継続しているだけでは楽しくありません。運用には楽しみも必要です。
P&G社は労働者と資本家の関係を学ぶ際にも良い教材になります。
仮に30年前のP&Gの新人の初任給を500万円とします(筆者が任意に 決めた数字のため事実情報とは異なります)。
500万円が16倍になると8000万円ということになりますが、同社内で年収が30年でこれだけ増えた人は、出世競争に買った一握りの人だけでしょう。ほとんどいないはずです。
なぜなら会社は大きくなるに連れて、社員数が増えるからです。売上、利益が10倍、20倍になっても、社員数が比例して増えれば、1人あたりの労働者への分配は増えないからです。
それでも会社の成長に伴い労働者に求められる仕事の量と質は上がっていきます。労働者は多少収入が上がったとしても搾取されていることに違和感を覚えます。世間では、大企業で勤めている人からですら「会社の収益が増えたのに、その間の俺の年収は100万円しか増えてないぞ?搾取されてるよな?」という愚痴をよく聞くものです。
ただ、経営者からすれば、「いや、労働分配率は一定を確保しているから、人件費は会社の成長とともにしっかり増えているんだ。要は人数が増えているから1人あたりの取り分が増えてないだけなんだよ。」という話です。ただ、社員総会などでそんなことをいう経営者はいないはずです。そんなこと言ったら「新入社員なんか採るな。我々の取り分が減るだろ!」という人が出てきて会社の老朽化が進んでしまうからです。人は確実に年を重ねるので、若手を入れないと平均年齢は上がってしまうわけです。
それに、ある程度年収が増えていれば多くの人は「ま、いいか」と考えます。「人件費÷社員数=1人あたりの人件費」の式は、全社員にまでは浸透しない方がいいだろう、と考える経営者はいます。
「会社が大きくなっても収入が比例して増えないんじゃ面白くないや」と考える必要はありません。会社の成長とともに収入を増やす方法があります。
「株を持つ」ということです。
株を持つということは、会社のオーナーになることを意味します。「利益をしっかり稼いで配当をください」という立場になります。つまり搾取する側になるということです。
仮に、就活をしていて、「うわー、この会社の人たちすげー優秀。ここで働きてー」と思ったとしても、そういう会社に入社できるのは一握りです。仮に入れたとしても、競争に勝っていくためには相当な努力が必要です。
そんな時には、その会社の株を買うという選択肢があることは覚えていた方が良いでしょう。株主になれば、優秀な人たちの頑張りで得られた果実が、自分の懐に入ってくるのですから。
ベンチャー企業の中には、上場を目指す会社が少なくありません。私はこのような会社は素晴らしいと思います。上場した際には、持株会を通して自社株を持つ機会を社員に提供できます。社員は、いわば搾取される側と搾取する側の両方の立場になれるということです。
経営者やファンドが全ての株を持っている状態では、社員は搾取される側にしかなれません。ユニコーン企業は早く上場した方がいいと、私は思います。囲いをとっぱらって労働者に選択の自由を与えてほしいです。
世間には、勝ち組を負け組という言葉があります。
エリートコースに進んだ人が勝ち組というわけではありません。
株を持つことで、誰でも勝ち組になれます。
私は株式投資の知識を広く平等に学生さんたちに届けたいと思い活動しています。
(遠藤)
[遠藤 功二氏 プロフィール]
日本FP協会認定CFP
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
MBA(経営学修士)
大学時代に借金に追われた経験からFPの資格を取得し、金融機関に就職。
証券会社と外資系銀行で延べ1,000人以上の顧客を資産運用アドバイザーとして担当した経験上、日本には金融教育が足りていないことを確信する。
自己責任が求められる社会で、子供たちが自立して生きていけるよう、お金の教育講座を実施している。子育て世代の親たちと子供たちに、金融の知識を届けるため教育特化のFPとして奔走中。
子育て世代のための金融教育サービスFP君
web:https://fpkun.com
メッセージ:koji.endo@fpkun.com
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)