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「うちの会社もBS指標を重視するようになりました」
上場企業の方々とお話をすると、このような声をよくきくようになりました。
ROICやROEという言葉が社内のシニアパーソンの共通ワードになってきたという会社は少なくありません。
同時に最近聞くのが
「社員のキャリア形成について支援する体制を整えなければならない」
という言葉です。
終身雇用は崩壊しており、優秀な人材は社内でキャリアビジョンが描けなければ外にどんどん出てしまう時代です。
逆に、「キャリアアップなんてどうでもいい」というぶら下がり社員ばかりになってしまったらやばいというのはいうまでもありません。
キーワードは「資産」です。
企業はBSに記載されている「資産」、人材という「資産」、両方を最大限に活用しなければいけない時代になっているということです。
口でいうのは簡単ですが、これはかなり難しいことです。
たとえば、最近トヨタがデンソーの株を一部売って、そのお金をEV事業への投資に振り向けるというニュースが出ました。
(参考) トヨタ、デンソー株にもメス 持ち合いよりEV投資優先(日本経済新聞社)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD28ANW0Y3A121C2000000/
これは、「持ち合い株より事業への投資だ。」といういかにもBS経営らしいジャッジです。たしかに、株より事業の方がROA、ROIC的に良さそうです。
トヨタは
「これだけ投資すればこれだけのリターンが得られる。株で持つより開発投資の方が儲かる。」
という計算の上で、このような経営判断をしているはずです。
もちろん、時代の変化に対する危機感の方が先行している気もしますが。
さらに重要なのは、お金を投じた分、人も動かさないといけないということです。
仮に、トヨタが開発部門の人員に
「投資した分を取り返すぞー。寝ないで開発せい!海外に負けるなー」
という掛け声を発したとします(現代においてそういう労務条件無視の号令は考えにくいですが)。
しかし、それではいいものは作れないでしょう。
やらされ仕事で世界に勝てるとは思えません。
「経営側の投資の判断はこっちは知らんがな。今までどおりでいいじゃないか。」
という社員がいた日には、目も当てられません。
マネジメントとして大事なのは、
「私たちが世界のトヨタだ。EV時代においても、自動運転の時代においても、当社が世界で一番の会社なんだ。」
というプライドを社員に浸透させ、社員が気持ちを込めて前向きに仕事に励めるようにすることです。
「俺がやらんで誰がやる?」
という意気込みのある社員を増やすことです。
超大企業で、社員1人1人のモチベーションをマネジメントするのは、かなり難しいことです。もし、それができているとしたらトヨタはすごいです。
資産を有価証券から、設備に変えたからといってROAが簡単に上がるわけではありません。人が動いて始めて利益が上がり、ROAが上がるわけです。
会社のお金を動かす際には、人材という人的資本のROAが最大限に上がる工夫も必要だということです。
そしてさらに重要なのは、社員1人1人が自身のスキル、経験、知識といった個人のBSを積み上げる努力をすることです。会社は人に賃金という形で投資をしています。
その投下資本で期待以上のパフォーマンスを上げるためには、個人が自分のスキルのBSを高めていく必要があります。
賃金すなわち投下資本よりもパフォーマンスが高い社員は会社に重宝されます。会社の居心地がよくなります。
投下資本の割にパフォーマンスが高すぎると、社員の個人ROICが噴き上がってしまい、その社員はもっと、自分に投資をしてくれる会社に転職してしまう可能性があります(プロスポーツ選手はそんなことばっかりやってます)。
企業は優秀な人材を繋ぎ止めておく努力をする必要があり、賃金規定を改定する必要があるでしょう。
終身雇用崩壊の時代だからこそ、個人個人の収入に差が生じやすい時代になってきたということです。
今回も一応「子供たちへの金融教育」のお話です。
子供達には
「金融とスキルのBSを築きなさい。それが豊かな人生に繋がります。」
とアドバイスをしたいと思います。
(遠藤)
[遠藤 功二氏 プロフィール]
日本FP協会認定CFP
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
MBA(経営学修士)
大学時代に借金に追われた経験からFPの資格を取得し、金融機関に就職。
証券会社と外資系銀行で延べ1,000人以上の顧客を資産運用アドバイザーとして担当した経験上、日本には金融教育が足りていないことを確信する。
自己責任が求められる社会で、子供たちが自立して生きていけるよう、お金の教育講座を実施している。子育て世代の親たちと子供たちに、金融の知識を届けるため教育特化のFPとして奔走中。
子育て世代のための金融教育サービスFP君
web:https://fpkun.com
メッセージ:koji.endo@fpkun.com
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)