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決算説明会報告
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決算説明会報告

2013-06-11 12:33
    5月24日3時半から、アナリスト向けの決算説明会が開催されたアサンテ(6073・東証2部)の報告をしておきます。
     アナリストは有料でこのような報告を致しますが、今回は特別に億の近道の愛読者の皆さんにだけお届け致しますのでご参照賜りましたら幸いです。

     出席者は宗政社長以下飯柴常務(経営企画室長)、池田経営企画室課長及びIR担当の鈴木課長です。

     同社の設立は1973年で業界では老舗です。東京・府中で設立され今年が創立40周年です。本社は新宿区新宿1-33-15。

     事業内容はHA(ハウスアメニティ)事業(木造家屋を対象としたシロアリ防除施工・床下等換気システム施工、基礎補修・家屋補強システム施工、太陽光発電システム施工、各種リフォーム)98%。

     TS(トータルサニテーション)事業(主にオフィスビル、ホテル、食品施設等の法人物件を対象とした害虫・害獣の防除等)2%。

     となっています。従業員数は3月末で916名となっています。

    1.強みについて

    ポイント1
     JAとの広域にわたる提携 広域は当社のみ 代金回収の確実性 5年間の保証制度 アフターメンテナンスの売上が積み上げられ安定した売上を確保
     JA経由売上比率8割

    ポイント2
     お客様第一主義 充実したアフターフォロー 顧客DB作成で管理
     保証期間中 年1回の訪問 施工記録の作成と管理
     クレームDBの作成 研修による誠実な接客

    ポイント3
     徹底したコンプライアンス体制 大手10社の関係協会加入状況
     日本しろあり対策協会 日本訪問販売協会 両方に所属 他社はどちらかに加入かいずれにも加入せず
     宗政社長は日本訪問販売協会の幹事
     独自のアサンテコンプライアンスプログラムを保有
     消費者センター訪問で情報収集 問題あれば役員会で検討

    ポイント4
     蓄積された技術力 実践と応用力、効率化

    ポイント5
     充実した社員教育 総合研修センターを2か所保有

    ポイント6
     健全な財務体質、利益を生むコンプラの徹底とJA活用のビジネスモデル
     回収貸倒れを防ぐ
     アフターメンテナンス(売上50%)によるリピート売上の確保
     実質無借金経営、健全な財務体質

    決算期    自己資本比率 売上高経常利益率 ROE 有利子負債依存度
    2010.3期 46.0%  9.7%  15.3%  27.9%
    2011.3期 54.5% 13.5%  17.9%  22.0%
    2012.3期 55.7% 17.0%  22.5%  16.5%
    2013.3期 65.7% 17.7%  20.2%  12.2%
                 (過去最高水準)

    2.2013.3期決算 ~防災意識の高まりがプラスに~

     地震災害に対する報道、行政の動きは依然活発 内閣府が南海トラフ巨大地震の被害想定発表
     関連情報をマスコミ各社が報道 →家屋保全意識の高まり
     足下では消費者マインドが好転
     耐久消費財の買い時判断等の指標が向上 →4Qで予想以上の売上

    3.取り組み 
    1)人員の増員、育成
    2)認知度向上のための広報活動
    3)CMリニューアル、繁忙期(4-7月)における積極的販促活動
    4)3月に上場し社員の意欲が向上

    2013.3期売上高は120億79百万円(+7.9%)
    経常利益は21億35百万円(+12.4%)
    売上高経常利益率は0.7ポイント改善し17.7%で過去最高水準

    期初予想 売上高118億79百万円 経常利益19億98百万円
    実績      120億79百万円     21億35百万円

    4Qが特に予想以上に好調で計画を上回る結果となった。

    TS事業は小幅減収となったがHA事業が主力のシロアリ防除を中心に前期比8.0%増と堅調な伸び。床下等換気システムは前期比19.1%増収となった。

    HA事業の人員を前期比7.8%増員、人員増強が売上の伸びにつながった。

    月次売上を公表(2012年3月期分から)
    四半期ごとの売上伸び率 全月で前期比プラスを達成

    2013.3期 1Q:8.1% 2Q:8.2%
            3Q:5.5% 4Q:9.7% →想定以上

    3Qは消費者マインドの低下で伸びが鈍化したが4Qは伸びる

    例年通り5月が売上のピーク
    今期は4月が前年同月比13.4%増の10億57百万円を達成
    5月は同7.7%増の14億78百万円となり2か月累計では10.0%増の25億36百万円を達成。

    ここに来て上場によって社員の意識が向上、消費マインドの向上も見られる。
    (足下の株価下落の影響は不明)

    5月は24日まで経過し+8%から+9%のペースで計画を上回る順調な伸びとしていたが、結果は7.7%増となったが、累計10%増は通期計画の+8%を超える。

    昨年の4月は+5.6%、5月は+10.4%、毎年8%の伸びを続けることを目標に掲げる。
    売上原価は増収率を上回る8.2%増となったものの販管費はローコストオペレーションの徹底により6%の増加に留まる。総人件費率は47%で0.4%の小幅アップ。

    ■B/Sについて

    1)現金及び預金の急増
     営業CF1060百万円+財務CF615(うち株式発行995百万円)の寄与で16億2百万円増の35億60百万円に

    2)有利子負債の減少
     1年内長期借入金の減少▲140百万円+長期借入金▲16百万円
     有利子負債:
     2012年3月期14億54百万円→2013年3月期12億98百万円


     印象的には高収益でキャッシュリッチ企業になりつつある。中期的にこのペースが続くと無借金経営になる可能性あり。

    3.向上する経営指標 2013年3月期(2012年3月期)

    流動比率   248.2%(151.4%)
    自己資本比率  65.7%( 55.7%)
    有利子負債依存度12.2%( 16.5%)
    総資産経常利益率 21.9%(23.4%)
    自己資本当期利益率20.2%(22.5%)
    EPS    114.42円(95.72円)
    BPS    584.54円(467.94円)
    配当性向    17.5%(15.7%)

     前期は5円増配の20円配当を実施、配当性向は17.5%にアップ。
    今期は更に22円配当へと増配を予定。配当性向は20%を計画。
    将来は配当性向を30%まで向上させる方針。


    4.今期の業界環境と具体的施策

    業界環境:
     既存家屋の保全への関心度が上昇中、今後もこの傾向は続くと予想
     消費マインドは更に好転、消費税増税前の駆け込み需要も発生

    施策:
     新規営業エリアの開拓、既存営業エリアの深耕
     平成25年4月京都支店開設 京都の農協と提携、関西進出へ
     CM放送、新聞折り込み等の販促活動強化
     営業員、施工員の更なる増員
     営業、施工、アフターメンテナンス全般に亘る品質と効率の向上
     →認知度向上に向けた活動 アフター点検内容のデータベース化
     タブレット端末を営業ツールとして活用

    5.今期の業績予想

     売上高は前期比8.0%増の130億円、経常利益は23億44百万円を見込み、売上高経常利益率は前期比0.3ポイント改善の18.0%を見込む。
    高水準の利益率を維持、向上へ。
     シロアリ防除の伸び率9.4% 床下等換気システムの伸び率6.7%
     基礎補修・家屋補強の伸び率 6.9%
     TS事業もHA事業とコラボして6.7%の増収を目指す

    売上高130億40百万円 +8.0%(中間期72億78百万円)
    営業利益23億48百万円 +7.3%(   17億42百万円)
    経常利益23億44百万円 +9.8%(   17億39百万円)
    当期利益13億41百万円+11.2%(   10億49百万円)
    EPS        110.07円(   86.84円)

    2014年3月期人員計画ではHA事業を中心に69名増の950名体制へ。
    全社の一人当たり売上高は前期並み(1370万円)を維持。

    予想総人件費率は前期比0.2ポイント改善の46.8%を計画
     →人員の増強が事業拡大のポイント

    6.中期経営計画  年8%から10%の売上拡大へ

    2014.3期売上高130.4億円 経常利益23.4億円
    2015.3期   142億円       26億円
    (2002.3期が売上のピークであったが来期はこれを更新する計画)
    2016.3期   157億円       30億円

    7.ソーラーについて

     3年前から参入、京セラと勉強。新規開拓より既存客から受注。
    HA事業部門のその他に入る。今期は1億円の売り上げを計画。

    8.説明会に出席した印象

     シロアリ駆除と言えば、かつて数社が上場していていずれも苦境に陥るなどイメージが良くない。同社もそうしたイメージをもって説明会に臨んだが、宗政社 長は業界のベテランで業界の発展に向けた取り組みを率先して行っているとの好印象をもった。資料に沿った説明も九州人らしい人柄を感じさせた。日本は昔か ら木の文化を大事にしてきた。シロアリの被害は木の文化を破壊してしまう。同社は木の文化を後世につなぐプロフェッショナルとして活動しようとしていま す。

     全国2500万戸の木造住宅ストック(現営業エリアでは約1300万戸)と地震への懸念が成長機会をもたらすとの業界全般のポジションは評価されます。 住生活基本法施行による家屋の長寿命化政策といった政策面の後押しや、特定商取引に関する法律および割賦販売法の一部を改正する法律による悪質業者の排除 による業界の健全化、薬剤有効期間(5年間)経過後の再防除、保証期間(5年)経過後の再契約による成長機会の増加が今後も業績拡大につながると見られま す。
     つまり膨大な潜在需要を背景にした事業拡大が中期的に続くとの見方ができます。

    同社の今後の経営戦略は
    1)営業エリアの拡大(東日本から西日本へ)と深耕
    2)シロアリ防除を中心とした成長 リフォームその他の周辺事業を獲得も
    3)新商品の上市
    4)業界の認知度向上
      セミナー開催、シロアリ防除ロボット開発 シロアリ探知犬・トコジラミ探知犬の導入
      シロアリ注意報発信 神社仏閣プロジェクト

     今後もJAとの提携関係を維持しながら安定的に事業を拡大させていく
    京都(8人体制)に続いて年間3,4か所の拠点づくりを行う。
    関西は和歌山、大阪、奈良、兵庫へと広げていく予定。

    9.株価について(説明会から2週間経過後の分析)

    【評価】
     安定した成長企業としての評価がまだ定まっていないために上場後の株価は乱高下していますが、少なくとも公募価格930円を下回る株価は評価不足と見られます。

     上場初日3月19日の株価は初値1034円で公募価格930円に対して、11.2%上の水準でした。この日の高値は1195円で安値は992円、出来高 は566万4500株で発行済み株式数1196万6000株の47.3%ができました。その後の株価は一度4月2日の782円安値まで調整。高値から 34.6%、公募価格からは15.9%の調整となりました。
     その後、徐々に上向きましたが、900円以下での推移が直近まで続きました。5月の連休明けからようやく公募価格を上回る展開が見られるようになりまし たが直近の株価は乱高下。直近高値としては1079円、その後なおも乱高下が見られ、6月7日には上場後の安値を下回る780円まで急落し週末は839円 に戻って終わりました。
     短期投資家の参画がここでの株価乱高下につながっていると思われます。
     株価下落の局面では長期スタンスで投資する投資家の出動による下支えが期待されます。

     時価(839円)の今期予想PERは7.6倍です。時価総額は100.6億円となっています。2016年3月期の経常利益を30億円と計画しており、順調な業績向上が続けば時価総額の水準は高まると期待されます。

     当期利益は今期13億41百万円、来期は未公表ながら経常利益26億円に対して今期並みの税率を前提に14億80百万円、2016年3月期は17億10 百万円が期待されます。EPSは今期110円から来期122円、2016.3期は140円が期待されます。2016.3期ベースの予想PERは6.0倍で すので時価には割安感があります。
     配当性向30%だと今期一株当たり配当金は33円(公表は22円)、2015年3月期の一株当たり配当金は36円、2016年3月期は42円が想定され、その段階での配当利回りは5.0%となります。

     株価とバリュエーションの関係は以下の通りです。
     (配当金は配当性向30%を前提)【省略】

    全体市場のバリュエーション
          東証1部  東証2部
    PER  14.7倍 13.0倍
    PBR   1.18倍 0.75倍
    配当利回り 1.86% 2.03%

    東証2部並みのPERで評価
     110円×13.0=1430円
    東証1部並みのPERで評価
     110円×14.7=1617円
    東証2部並みのPBRで評価
     584.54円×0.75=438円
    東証1部並みのPBRで評価
     584.54円×1.18=690円
    東証2部並みの配当利回りでは現状の公表ベースで
     22円/0.0203=1083円
    東証1部並みの配当利回りでは現状の公表ベースで
     22円/0.0186=1183円
    東証2部並みの配当利回りで配当性向30%前提ベースで
     33円/0.0203=1626円
    東証1部並みの配当利回りで配当性向30%前提ベースで
    33円/0.0186=1774円

     現状のバリュエーションはPERや配当利回りでは低評価。PBRでは平均を上回る。平均配当性向が低いため内部留保が厚く、自己資本は今後3年間で 300円が積み増される可能性があり、3年後ベースでのBPSは880円となり、現状PBRは0.95倍となり東証1部、2部の平均 (1.18+0.75=1.93/2=0.97)並みとなります。

     当面は安定成長株として東証2部並みのPER評価1430円(6か月)とします。第1四半期(4-6月)に業績の比重が高いため、その結果を見ながら株 価の評価が高まるものと期待されます。既に公表されている4月月次売上が前年同月比13.4%増、5月も同7.7%増となり累計で10%増の25億36百 万円という売上状況のようですので、中間期計画(売上高72億78百万円、営業利益17億42百万円)達成の可能性は高いと見られます。同社の場合、事業 の性質から上期に業績が偏りますので、中間期の達成が通期業績の確率を高めると見られます。
     中長期的には3年後の経常利益30億円を前提にその8倍の時価総額240億円がひとつの目標となります。

    (炎)

    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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