連載を続けてきた<老子と投資>は、前回の第81章にて終了しました。ご愛読ありがとうございます。

 ところで、私自身が30年にわたって投資ビジネス関わってきた中で、「投資に成功するためにはしっかりとした「哲学」をもち、精神面も常に充実させる必要がある」というのは常々感じてきたことです。

 また、現在私が投資哲学の上で師と仰いでいるのは、老子、孫子、ウォーレン・バフエットです。

 そこで、今回からは<孫子の投資法>と題して全13章の真髄をお話していくことにします。


■投資とは詭道なり その1■

◎ゲリラ戦こそが投資の極意である。ベトナムは、大国アメリカにゲリラ戦で勝った。◎

 詭道とは、簡単に言えばゲリラ戦です。多勢の正規軍によって、相手を正面から攻撃するのではなく、ごく少数の兵力と武器で巨大な敵を打ち負かすのがゲリラ戦の極意です。

 巨大な正規軍を維持するためには莫大なコストがかかりますし、真正面から攻撃したのでは、味方が受ける損害も大きくなります。

 少ないコストと少ない犠牲で多くの結果を得ることができるゲリラ戦は、孫子の理想とする戦い方(ただし、戦わないことはそれ以上の最上の戦略)であり、大概の「成功する投資家」が採用している戦略でもあるのです。

 ウォーレン・バフエットの有名な金言に、「他人が強欲な時は控えめに、大衆がおびえている時には大胆に」というものがあります。この言葉の中にも、「ゲリラ戦」の極意が隠されています。

 「みんながいいと言っているもの」に投資をするのは、正規軍が真正面から攻撃するようなものです。米軍のような強力な武器・軍隊があれば話は別かもしれませんが、米軍でさえも、正面攻撃では大きな犠牲を覚悟をしなければなりません。
 ましてや、敵を市場と想定した場合、規模ではとてもかなわない一般の投資家が「みんながいいと言っているもの」に投資をするのは自殺行為です。

 例えば、最近1万6000円近辺まで急騰した日経平均の調整が起こり、短期間で数千円下落しました。

 メディアが「アベノミクス相場」などと騒ぐのに乗じて高値で勝った投資家は苦杯をなめたかもしれません。しかし、メディアが手のひらを返したように「ア ベノミクスの限界」などと報道することに恐怖を感じ、売ってしまえば損失を確定することになります。つまり「大衆の一人」=負け組になってしまうわけで す。

 「大衆がおびえている時には大胆に」というのが詭道の本質です。大衆がおびえているかぎり、むしろ安全なのがゲリラ戦です。それよりも注意しなければならないのは、大衆が強欲な時です。

 また、投資でも相手の「虚を突く」のが戦略上大事です。逆に市場の急落で、投資家が「虚を突かれている」のでは話になりません。

 正規軍の戦では、個々の兵士があれこれ戦略を練る必要はありません。ただ、命令に従っていればよいのです。ところが、少人数でのゲリラ戦では、個々の兵士が重要な役割を演じるので、高い能力が要求されますし、勉強を怠ることができません。

 「永続的に投資に成功する」ために、勉強をしたり自分自身で考えることが必要不可欠なのは当然といえます。

参考文献:孫子(金谷治 訳・注)岩波文庫を参考資料に使用しています。

 ところで、昨年末以来「アベノミクス」で一気に上昇してきた日経平均株価も、現在調整局面にあります。しかし、ウォーレン・バフエット曰く、「大衆がおびえている時こそ投資のチャンス」です。

 9月に、もし「東京オリンピック」の開催が決まれば、日経平均株価は再び急騰するかもしれません・・・


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(OH)

*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)