株式市場は昨年暮れ辺りから6年ぶりの活況に沸いています。
 そんな中で私の勝手な感想ですが、最近の株式投資の特徴を書きたいと思います。何かのお役にたてば…。

 例として2銘柄を題材に。株価等は8月7日の日中の数値を参考にしています。

<三菱商事 8058>

 日本を代表する総合商社ですが、近年は資源開発の成果が実り世界的な資源需要を取り込み成長しました。
 株価;1,893円
 PER;7.8
 PBR;0.74
 配当利回り;3.17%


<JPX(日本取引所グループ) 8697>

 2013年1月に東証と大証が統合し誕生した会社で、取引参加料を収益の柱として、統合により取引量増大を目指している。
 株価;9,510円
 PER;23.7
 PBR;2.95
 配当利回り;1.68%


 上記2銘柄で気づくところは、まず三菱商事ですが、20兆円の売上と4,000億円近い経常利益、また1株当たり200円以上の利益を毎期叩き出してい る会社の株価がPBRで1倍を下回ったままであること。つまり、詳細は省きますが、世界を股にかけて事業を展開している大手企業であり、資源や食糧など日 本にとって必要不可欠な商材を取り扱いつつ毎期黒字を積み上げている会社の株価が、税引き後利益の8年分弱で、且つ会社純資産額を下回ったままの時価総額 で推移していること。しかも年間配当利回りは3%を超えています。
 一方のJPXですが、世界第3位の規模になった取引所とは言え、何が何でも利益を上げれば良いという(極端な物言いで済みません)純民間的な会社では無 く、公的な側面を持ち、国内の資本市場育成を担う為には利益追求ばかりしてはいられない会社です。その会社の評価(時価総額)が年間利益の23年分、会社 解散価値の3倍まで買われ、配当利回りも1.68%と三菱商事の半分ほどしかない価格まで買われていることです。PER23倍と言えば、世界の取引所の中 でもトップクラスの評価を得ていると言うことです。

 この2社の将来性も踏まえて考察するなら、三菱商事ほどの事業価値を持ち、収益増加を期待できる会社が解散価値以下に評価され、それほど大きな利益を生 み出し続けるとも思えない公器でもある取引所の株価が1株当たりの価値で概ね3~4倍も高く評価されているところが株式投資の難しい部分と言えます。

 この株価の違いは何かと言えば、恐らくは、三菱商事の収益の伸びはそれほど大きくない(絶対値は大きいものの身体が大き過ぎて成長率は高くないであろ う。よって株価は簡単には上がらない)と評価され、一方のJPXは取引所統合と言う一大テーマに乗って人気化した可能性がある…と言い換えられます。

 株価は美人投票的な側面が強いですから、JPXはテーマとして取り上げ易い、投資家の注目が高まれば買われ易い、その結果株式の需給が改善して一層上が り易くなった…、と言ったところではないでしょうか。それに比べて商事の方は2008年をピークとした資源バブルの相場で一旦手垢がついてしまった、投資 家の注目度が高まらないため売買は活発化しないであろうとの思惑、資源価格の将来性が不透明…等々の理由により株価が上がりにくい、と解釈されている訳で す。

 本来の株式投資は収益性や将来性、事業・財務の安定性など様々な側面から評価され、将来価値の予測を基に行われるものであり、それらを評価するための尺 度としてPERやPBR、ROEなどの指標が取り入れられている訳ですが、リーマンショック以降の株価動向は、どちらかと言えば動きが良い(上がり易い、 下がり易いなど)か否かという需給や人気度の部分が重要視されているようです。
 これは過剰流動性相場(バブル期)の特徴ですが、この半年間の相場はこれが始まった現れであると考えることが出来ます。

 とても大雑把な感想で、読者の皆様にとっては「釈迦に説法」かも知れませんが、このどの辺りで線引きをして自分なりの投資手法を執るのか?これらのガイドラインを決めておくことは投資行動を実行する際にとても重要なものとなります。
 まだ暫くはボックス相場になりそうなこの時期に、今一度初心に戻って今後の投資方針を見直していただくのも宜しいかと考えています。

(街のコンサルタント)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)