• このエントリーをはてなブックマークに追加
為替市場動向~世界的な債券安、逃避先は日本国債~
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

為替市場動向~世界的な債券安、逃避先は日本国債~

2013-08-29 12:34
    米国の量的緩和第三弾QE3を少しずつ縮小していくtaperingが9月から始まるのではないかという憶測から、米国債市場では長期債を中心に利回りの上昇が続いています。
     また、長期債利回り上昇は、日本を除く殆どの主要国、新興国でおきています。

     米国債10年物は、バーナンキFRB議長が量的緩和縮小を示唆した5月からの3カ月間で2%から最高2.89%まで上昇、節目の3%を伺う勢いです。 リーマンショック以降、徹底した金融緩和政策で、2012年7月には一時1.38%という歴史的な低水準に達した事もありました。ただ、50年間という長 期スパンでは平均利回りは6.5%、リーマン以降の5年間平均で2.7%ですが、2009年から2011年でみれば3%台を中心に推移していました。

     短期金融市場でお金の量を増やせば、将来にインフレ懸念が生じ長期金利が上昇、景気に悪影響を及ぼすという理由で、米国は短期債売り長期債買いというツイストオペレーションをして、長期金利が低位安定する政策もとってきました。

     QE3縮小実施が9月かどうかは未だ分かりませんが、今年中に縮小することは先週開示された7月の政策委員会の議事からも読み取れます。また、来年早々 に任期満了のバーナンキFRB議長の後任候補が緩和ハト派のイエレン氏から、タカ派のサマーズ氏予想が有力になってきたのは「夏」限定というわけではない でしょうが、金利上昇スピードを高めているようです。

     少額ずつの減額、利上げはずっと先のこととしても、量的緩和終了の始まり。この3年間続いた債券バブル終焉を連想させ、節目とされる3%水準が保てるか どうかが注目されます。3%水準では投資家から値ごろ感による買いも入るだろうという見方もありますが、金利は上がりだすと早いというのが経験則です。超 低金利に慣れてしまった感がありますが、長期債の2%台は歴史的に見て非常に低いのです。置いていかれまいとする保有者が売りに走るのも理解できます。 「価格下落スピードは早い」は、どの市場も同じです。

     長期金利上昇は、米債だけでなく、ドイツ国債も同様です。ユーロ圏、特にドイツの景気指標改善を理由に利回りは上昇。直近の10年利回りは1.9%前後 ですが、この3カ月で0.4%以上も利回りは上昇しました。英国債はインフレについて言及した政策委員会の議事録が開示されてから、一時は2%割れだった 利回りが直近では2.6%台に。3カ月前に比べて0.70%以上の利回り上昇です。

     また、新興国の国債市場では、資金流出に伴う長期債売りでの利回り上昇です。特に目立つのがインドネシア。10年債は直近3カ月間に2.75%も利回りが上昇、5%台から8%台に上昇が続いています。

     一方で、流出の受け皿となっていると言われているのが、我が日本国債です。日銀の適切なオペレーションの効果もあるでしょうが、質への逃避と見られる海外投資家からの買いによるものなのか、利回りが低下。5年債は3カ月前の0.4%台から直近0.28%台での推移です。

     一般的には、金利差は為替相場に影響する要素の一つで、ドル円相場では日米金利差拡大は円安要因であることが多いのですが、現在の状況は、金利差への着 目というよりも、相場の不安定さによるリスク回避姿勢と、米国長期金利の先高観による債券売りが続いていることです。97円~98円台を中心にした上下限 られたレンジ内での取引。どちらにも動きにくい膠着状態が続いており、大変分かりにくい相場です。

     財務省の対外証券投資統計によると、先月初めから日本の投資家は外債投資で買い越しでしたが、8月16日週には売り越し。債券価格下落と円安期待のお休 み状態により、日本の投資家は積極的に外債購入に動いていないように見えます。何を買っているのでしょう?やはり、日本国債?1.8%の30年物国債も需 給は良いようです。日本の投資家の国内債傾斜はまだ続くのかもしれません。

     8月に入ってからの対米ドル為替相場では、上昇通貨トップが英ポンド2%、スイスフラン、日本円、ユーロは上昇しましたが0.5%以下でした。一方で、 対ドル下落通貨は9.5%のインドネシアルピー、8%のインドルピーを始めとして新興国通貨が連なっています。市場は、後始末に追われていて、新たなトレ ンドが現れるまで時間がかかりそうです。

     9月は政治の季節の始まりでもあります。米国FOMCなど注目イベントも目白押しですが、日本では消費増税(法人税減税もセット?)の首相決断、米国で は財政をめぐり民主党と共和党の対立がクローズアップされて来るでしょう。夏休みが終わり、増税問題や景気刺激策はどうなる?の日本、財政問題の米国、そ して選挙のドイツと各国とも政治が相場に影響を与えそうです。

     このところ、難しい相場が続いています。「やられたら、やり返す。倍返しだ!」は某人気ドラマの決め台詞ですが、このところの神経質な相場では通用しま せん。秋の気配が天候には少し感じられるようになりましたが、相場の夏休み、今しばらく続きそうな気配です。秋に相場ロケット打ち上げがあるか見極める為 の時期なのでしょう。

     最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

    *8月27日20時執筆。本号の情報は8月27日の欧州市場の始値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。

    式町 みどり拝

    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。