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材料盛りだくさんの9月も実質月末。株式市場は今日が9月の最終受渡し、為替取引も明日26日が月末受渡し取引日。月末、四半期末、半期末の節目のためか、全体的にエネルギーが停滞している印象です。
為替相場の9月の最大注目点は、米国の金融政策だったことは周知の通りです。また、それにからんで米国の金融政策を決定するFRB(連邦準備理事会)の 議長人事も大きな注目材料でした。金融政策に関しては、18日(日本時間19日)に量的緩和第三弾QE3の縮小の決定はなく、また、議長人事もオバマ大統 領が候補者にあげたサマーズ氏は予想される米上院議会の反対を主な理由に自ら辞退したため、現在の副議長イエレン氏を筆頭に現議長続投論まで含めて、複数 候補があげられており、今後も次期議長人事への思惑が市場に影響を与えていくでしょう。
マーケットが勝手に事前予想したこともあり、量的緩和縮小が実施されなかった影響は、為替相場の対米ドル通貨パフォーマンスに表れています。8月月末比 較の対ドル最大の上昇(主な新興国も含めて)は、ブラジル・レアルの8.3%、ついでニュージーランド・ドル、豪ドルなど新興国や資源国通貨が続きます。 逆に、下落したのは、引き続き売られているインドネシア・ルピー、債務問題が言われているアルゼンチン・ペソ、そして0.6%下げた日本円です。縮小がな かったことで、米国の長期金利が下がり株が上昇し、市場全体がいわゆるリスク・オンのムードが上がったことが背景となりました。
米国の量的緩和縮小は、今年中には開始され、12月の可能性が高いとみられていますが、一部では終了後に記者会見の予定がない10月のFOMCもバーナ ンキ氏が臨時記者会見を実施しないとも限らないと見る向きもあるようです。どちらにしても、縮小実施はバーナンキ議長の「米経済指標次第」に集約されるで しょう。また、次期議長が誰になるかについては、政治がからんで来るわけですが、誰が次期議長になろうと「米経済指標」が決め手となることは確かです。
米FRBが設立理念に掲げているのは、雇用と物価の安定です。米国の失業率は、リーマンショック後に一時10%台に上昇した後、直近では7%台前半に下 落しています。ただ、リーマンショック直前は5%前後、それ以前の5年も5~6%で推移していましたので、改善傾向とはいえ、以前と比較すると本格的な雇 用回復とは言い難いとも言えます。8月の雇用統計では、労働参加率が1978年8月以来の最低水準でしたので、本格的な雇用回復と判断するには時間が必要 かもしれません。
FRBのもう一つの政策目標である物価は、目安である2%を下回り、食品、エネルギーを除く消費者物価指数は直近1.8%。米国の消費者物価は、長いと ころでは50年間平均で3.8%、20年間平均は2.3%で推移してきましたが、リーマンショック以降2%を下回って推移、2010年には一時マイナスに なってこともありました。最近は1.6~1.8%程度の推移ではありますが、著名なデフレ研究者であるバーナンキ議長にとっては、雇用と同様に懸念材料と なっているのではないかと推測されます。
FRBによる量的緩和縮小観測で3%近くまで上昇した米10年金利は直近2.6%台まで下落。しばらくは2.5%~3%レンジでの推移が予想されます。長期金利の急上昇が米住宅市場の動向に与える影響も政策変更を実施しなかった大きな要因とされます。
9月のFOMCの議事録が発表されるのが10月9日。どのような議論で行われたのかを知ることで今後の政策スタンスが分かりやすくなることを期待したところです。
9月のイベントを経ての主要な通貨の推移ですが、ドル・円相場は引き続きレンジ相場での動きです。9月の動きは97.76を下値に100円61銭高値。9月始値が98円32銭でしたので、直近レベルで終了すると、8月に続き小さな陽線の月足になります。
米経済の好調さによるドル高、日本の期待インフレ率の上昇(脱デフレ)、貿易収支の赤字などを材料にした円安でドル・円相場は今年急上昇してきました。 日米の中央銀行によるお金のばらまき度(マネタリーベース)の今後のスケジュールの違いから、ドル・円相場の大きな流れはドル高円安で変わりないと思って います。ただ、材料の新鮮さが薄れてきたことも確かです。このレンジ相場の間に貯めるエネルギーが重要になってくると思いますので、虚心坦懐で環境の変化 に耳を澄ませておきたいと思います。
先日、金融関係者向けのセミナーに出席したときに、今後のドル・円相場のアンケートがありました。75%以上の方々が103円以上を予想。私も多数派の一人ではありますが、予想が偏りすぎていて、やや心配にもなりました。
その他の主要通貨として注目しておきたいのがユーロの動きです。売られそうで上昇してきているユーロ。金融支援体制の整備が進んでいることに加えて、 ユーロ圏の貿易収支の黒字化、緊縮財政が進み経常収支も改善していること、また、コアの消費者物価は直近では1.1%で推移。デフレ化と貿易収支黒字、経 常収支改善は通貨高につながり、ユーロ圏の日本化とも言われます。デフレ下の通貨高は日本も経験してきました。対ドルでは上値1.35が重いとされていま すが、静かなユーロ高傾向は続くのではないかと思います。また、景気が回復しつつある英国も注目しておいた方が良いでしょう。
米国の量的緩和縮小の見送りでオセアニア通貨、豪ドル、ニュージーランド・ドルもリバウンドしました。特に、ニュージーランド・ドルは金融当局者から今後の利上げの可能性についてコメントが出ていることもあり、注目度が上がっていくものと思います。
波乱含みと予想された9月も終了。オリンピック祝い気分も一段(余談ですが、テレビの人気ドラマも終了)。10月からはムード一新かもしれません。引き 続き米国の金融政策が注目材料ではありますが、第4四半期は決算も含めて会計上の要因も影響しますので、注意が必要です。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*9月25日12時執筆。
本号の情報は9月24日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
為替相場の9月の最大注目点は、米国の金融政策だったことは周知の通りです。また、それにからんで米国の金融政策を決定するFRB(連邦準備理事会)の 議長人事も大きな注目材料でした。金融政策に関しては、18日(日本時間19日)に量的緩和第三弾QE3の縮小の決定はなく、また、議長人事もオバマ大統 領が候補者にあげたサマーズ氏は予想される米上院議会の反対を主な理由に自ら辞退したため、現在の副議長イエレン氏を筆頭に現議長続投論まで含めて、複数 候補があげられており、今後も次期議長人事への思惑が市場に影響を与えていくでしょう。
マーケットが勝手に事前予想したこともあり、量的緩和縮小が実施されなかった影響は、為替相場の対米ドル通貨パフォーマンスに表れています。8月月末比 較の対ドル最大の上昇(主な新興国も含めて)は、ブラジル・レアルの8.3%、ついでニュージーランド・ドル、豪ドルなど新興国や資源国通貨が続きます。 逆に、下落したのは、引き続き売られているインドネシア・ルピー、債務問題が言われているアルゼンチン・ペソ、そして0.6%下げた日本円です。縮小がな かったことで、米国の長期金利が下がり株が上昇し、市場全体がいわゆるリスク・オンのムードが上がったことが背景となりました。
米国の量的緩和縮小は、今年中には開始され、12月の可能性が高いとみられていますが、一部では終了後に記者会見の予定がない10月のFOMCもバーナ ンキ氏が臨時記者会見を実施しないとも限らないと見る向きもあるようです。どちらにしても、縮小実施はバーナンキ議長の「米経済指標次第」に集約されるで しょう。また、次期議長が誰になるかについては、政治がからんで来るわけですが、誰が次期議長になろうと「米経済指標」が決め手となることは確かです。
米FRBが設立理念に掲げているのは、雇用と物価の安定です。米国の失業率は、リーマンショック後に一時10%台に上昇した後、直近では7%台前半に下 落しています。ただ、リーマンショック直前は5%前後、それ以前の5年も5~6%で推移していましたので、改善傾向とはいえ、以前と比較すると本格的な雇 用回復とは言い難いとも言えます。8月の雇用統計では、労働参加率が1978年8月以来の最低水準でしたので、本格的な雇用回復と判断するには時間が必要 かもしれません。
FRBのもう一つの政策目標である物価は、目安である2%を下回り、食品、エネルギーを除く消費者物価指数は直近1.8%。米国の消費者物価は、長いと ころでは50年間平均で3.8%、20年間平均は2.3%で推移してきましたが、リーマンショック以降2%を下回って推移、2010年には一時マイナスに なってこともありました。最近は1.6~1.8%程度の推移ではありますが、著名なデフレ研究者であるバーナンキ議長にとっては、雇用と同様に懸念材料と なっているのではないかと推測されます。
FRBによる量的緩和縮小観測で3%近くまで上昇した米10年金利は直近2.6%台まで下落。しばらくは2.5%~3%レンジでの推移が予想されます。長期金利の急上昇が米住宅市場の動向に与える影響も政策変更を実施しなかった大きな要因とされます。
9月のFOMCの議事録が発表されるのが10月9日。どのような議論で行われたのかを知ることで今後の政策スタンスが分かりやすくなることを期待したところです。
9月のイベントを経ての主要な通貨の推移ですが、ドル・円相場は引き続きレンジ相場での動きです。9月の動きは97.76を下値に100円61銭高値。9月始値が98円32銭でしたので、直近レベルで終了すると、8月に続き小さな陽線の月足になります。
米経済の好調さによるドル高、日本の期待インフレ率の上昇(脱デフレ)、貿易収支の赤字などを材料にした円安でドル・円相場は今年急上昇してきました。 日米の中央銀行によるお金のばらまき度(マネタリーベース)の今後のスケジュールの違いから、ドル・円相場の大きな流れはドル高円安で変わりないと思って います。ただ、材料の新鮮さが薄れてきたことも確かです。このレンジ相場の間に貯めるエネルギーが重要になってくると思いますので、虚心坦懐で環境の変化 に耳を澄ませておきたいと思います。
先日、金融関係者向けのセミナーに出席したときに、今後のドル・円相場のアンケートがありました。75%以上の方々が103円以上を予想。私も多数派の一人ではありますが、予想が偏りすぎていて、やや心配にもなりました。
その他の主要通貨として注目しておきたいのがユーロの動きです。売られそうで上昇してきているユーロ。金融支援体制の整備が進んでいることに加えて、 ユーロ圏の貿易収支の黒字化、緊縮財政が進み経常収支も改善していること、また、コアの消費者物価は直近では1.1%で推移。デフレ化と貿易収支黒字、経 常収支改善は通貨高につながり、ユーロ圏の日本化とも言われます。デフレ下の通貨高は日本も経験してきました。対ドルでは上値1.35が重いとされていま すが、静かなユーロ高傾向は続くのではないかと思います。また、景気が回復しつつある英国も注目しておいた方が良いでしょう。
米国の量的緩和縮小の見送りでオセアニア通貨、豪ドル、ニュージーランド・ドルもリバウンドしました。特に、ニュージーランド・ドルは金融当局者から今後の利上げの可能性についてコメントが出ていることもあり、注目度が上がっていくものと思います。
波乱含みと予想された9月も終了。オリンピック祝い気分も一段(余談ですが、テレビの人気ドラマも終了)。10月からはムード一新かもしれません。引き 続き米国の金融政策が注目材料ではありますが、第4四半期は決算も含めて会計上の要因も影響しますので、注意が必要です。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*9月25日12時執筆。
本号の情報は9月24日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)