この季節は例年、投信(10月)、ヘッジファンド(11月)、年金(12月)など海外投資家の決算の影響で調整するケースが多いのですが、今年は三角持合いを上放れた格好で、一段高への期待が高まっています。
市場のムードを大きく変えたのは、8月に発表された米国の10月の雇用統計でしょう。米国経済は夏以降やや減速感があり、政府機関の一部閉鎖の影響も あって、景気の先行きに対する見方は弱気に傾きがちだったのに対し、10月の非農業部門雇用者数は事前予想(12万人増程度)を大きく上回る20.4万人 増となり、市場のサプライズを呼びました。さらに8月、9月の実績が上方修正されたことで、8~10月の平均値は20.2万人増となりました。米国経済の 回復基調は予想外に強いと評価出来ましょう。
景気の回復は長期金利の上昇につながりますが、従来から米国の長期金利と日本株の連動性が高い点に注目したいと思います。リーマンショック後のFRBの 3回にわたる量的緩和策などにより、このところそうした傾向は薄れているものの、従来から米国の長期金利と日本の株価の連動性は高いのです。
米国の長期金利の上昇は、景気回復の過程で起こることが多く、米国景気の回復はタイムラグを伴って日本の景気回復(輸出増等)をもたらし、自動車など外需型企業の業績改善、株価の上昇につながります。
FRBはいずれ量的緩和規模の縮小に向うとみられますが、これはリーマンショック後の経済・金融危機から米国経済が正常化に向うことを意味しており、日本経済、日本株にとり中長期的な支援材料と考えます。
ところで、日本証券取引所グループと日本経済新聞社が11月6日、共同で開発した新たな指数「JPX日経インデックス400」の算定要綱と採用銘柄を発表しました。
採用銘柄は東証(1部、2部、マザーズ、JASDAQ)に上場する約3400銘柄の中から、自己資本利益率(ROE)などを重視して400銘柄が選定さ れており、指数の算出は14年1月から開始されます。新指数に対する評価はかなり厳しい声も聞かれますが、市場でROEが改めて注目されることは企業経営 の改善を促すものと好意的に考えています。
国内企業の中間決算発表はほぼ一巡しましたが、試しに好業績かつ高ROE銘柄に着目して、銘柄をスクリーニングしてみました。
「時価総額500億円以上、かつROE(実績)15%以上、かつ今期の営業利益予想(会社計画)を増額、かつ今期営業最高益更新見込み」という条件で銘 柄を抽出しますと、カカクコム(2371)、ABCマート(2670)、セリア(2782)などといった銘柄が並びます。
株価もそれなりに高いのですが、100円ショップの「勝ち組」と評価が高いセリアは、新規出店、既存店売上高がともに計画を上回り好調に推移していま す。同業のキャンドゥ(2698)、ワッツ(2735)が新規出店の遅れ、既存店売上高の伸び悩みに直面しているのとは好対照といえます。小売各社は円安 の進行による原価の上昇圧力が今後本格化することに加え、来年4月には消費税率の引き上げを控えています。消費者の低価格志向が根強いなか、100円 ショップはそれなりに健闘するとみられますが、その中でも優勝劣敗はより鮮明になるのではないでしょうか。ROEが重視されることで、今後セクター内での 株価の格差も今後拡大するのかもしれません。
(水島寒月)
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