最近発表される米国経済指標には、景況感、雇用、消費、住宅関連を中心に予想を下回る数字が多く、どの程度が天候(特に大寒波)に影響されているのか? 原因は天候だけではないのでは?との疑心暗鬼も多く聞かれるようになりました。
注目された1月の米国雇用統計。最も注目される非農業部門雇用者数は予想より少なく、またしても天候の影響かどうか解釈が難しく、今後出てくる数字を待って判断していくしかなさそうです。
雇用に関する数字の中には、これまで配されてきた労働参加率は改善し、失業率も低下傾向なので、雇用は少しずつ改善してきているのではないか、という見方もあります。
年初来、米国経済の改善傾向が数字で確認できにくい状態のためか、米ドルの通貨指数(対貿易相手国のバスケット通貨)は大きく動いていません。年初の 80.00水準から1月末に81.13まで上昇した後、直近80.00水準まで戻ってきました。1月末から2月月初は新興国通貨安でドル高になった時期で したが、ここへ来てドル安に戻りました。金価格や原油価格が反転し始めた背景にはドル安があるかもしれません。
各主要国通貨の対米ドルパフォーマンスを見ると、年初来上昇した通貨のトップが日本円で+2.88%、続いて、豪ドルとニュージーランド・ドルが+1.2%程度、次に利上げも予測される英ポンドが+0.7%の上昇。一方で下落トップはカナダ・ドルの-2.96%です。
日本円が年初来上昇した背景は、新興国や中国経済などへの懸念から生じたリスク回避による円買い行動と言われます。とは言え、日本円の動きは以前のリス ク回避の時に比べると小さくなってきました。2月に入ってからのドル円相場は主に101円~102円台。オーバーシュートして100円台後半をつける場面 もありましたが、長時間ではありませんでした。
日本円は、世界的な金融危機や戦争等の地政学リスクが発生する時にリスクを回避するために買われるとされてきました。その背景の一つに、日本が保有する 対外純資産の大きさ(GDP比約62%、296兆円)があります。何か有事があれば、対外資産を円に換金する行動にでるという連想が重なるからです。ま た、経常収支の黒字、インフレ率の低さ(デフレ傾向)、また戦争放棄は安全な国という点で円を買う行動に繋がりやすいと言われてきました。
世界に誇る対外純資産の大きさは未だ変わりないのですが、ここへ来て他の要因が崩れつつあるようです。
2013年度の日本の経常収支の黒字が1985年以来最少になり、同年度の貿易収支の赤字は過去最悪に。異次元の金融緩和が奏功してか物価上昇率がマイナスからプラスに。そして、やや日本の周辺に緊張度が増す可能性が高い、と外からは見られやすい要素があります。
これらの要因だけが為替相場を決めていくわけでは勿論ありませんが、現状では円を積極的に買う要素が以前と比較して減ってきていると言えます。
一方で、円は昨年度、大きく水準修正され、現在の相場水準(102円水準)は他国との物価比較での水準(購買力平価)周辺にいます。ドル・円相場に関し て言えば、しばらく、101円~104円程度のレンジ内での動きになるだろうと、今のところ思っています。今後の動向を見るには、諸条件がどう変化してい くのかを見極めていく必要がありそうです。
昨日、日銀政策決定会合で成長分野への貸出増を支援する決定がなされました。直後、円安、株高に大きく反応しましたが、フォロースル―は止まった感があ ります。消化するまでに時間がかかりそうです。個人的には、今回の政策は今後ボデイ―ブローのように金融緩和に効いてくる可能性があると思っています。
今週末に予定されているG20も注目されているようですが、米大統領が来日する4月より前の妥結を急ぐ日米TPP交渉も相場に影響するのではないかと注目しています。
昨年大きく動いた後の今年なので、空にロケットが飛んでいくような相場を期待するのは難しいと思います。欲張りすぎず冷静にチャンスを生かしていきたいものです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*2月19日正午執筆。
本号の情報は2月18日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)